生徒会2
ルドルフ殿下が少し戸惑いながら聞いてきた。
「辞退って……何か理由があるのかな?」
「やりたい事があるんです。学園の勉強も簡単ではないでしょうし、生徒会の役員は片手間にできるものではないでしょう? 生徒会に参加すると、何もかも中途半端になりかねないかなと」
僕の最優先事項は、古語の習得だ。
それに、いるんならヒロインを見つけないとな。
なんとしても《クリスタル・ローズ》を調べて、魔王討伐サイドの誰かに、その魔法を手にいてれもらわないとならない。
「君が真面目で責任感が強いのは分かる。ただ、君の能力は生徒会に是非とも欲しいんだ。答えを急ぐ必要はない。それに、生徒会の仕事は毎日ってわけじゃない。きっと、君の良い経験になると思うんだけど」
ルドルフ殿下が僕を説得にかかると、すぐにミザリア嬢が辞退を表明した。
「申し訳ありませんが、私も御辞退申し上げます」
「え? 君もかミザリア」
「はい。お誘いは光栄ですが、私は器用な人間ではありません。クライド様の仰ることが、よく分かります」
王太子の困惑は、僕の時より大きいようだ。まぁな、ミザリア嬢は彼の許嫁だ。未来の王太子妃として、彼の側で生徒会運営に関わるってのは、重要な事なのかもしれない。
マルグランダ殿下が小さく笑った。
「仕方ないよね、兄さん。特例が先にあるんだから、クライドくんや、ミザリア嬢にも適用すべきだ」
——特例?
彼のその言葉に、ルドルフ殿下が小さく嘆息した。
「……。そうだな。分かった。君たちが生徒会に参加しないと決めるなら、無理強いはできない。ただ、役員の選出は決して安易ではないんだ。なので、準役員として活動を補助して欲しい。実は、書記のベーダが、そういう立ち位置だ」
そのまま、マルグランダ殿下が補足するように教えてくれる。
「特別なイベントなんかの時は、人手が足りなくなるからね。手伝ってって意味だよ。仕事の流れを覚えるまでは、まめに生徒会にも参加してほしいけどね」
アルゲントさんが白い歯を見せて笑った。
「ああ、それがいいな。特例でいいから生徒会には参加しとけよ。お前ら、イベントとかダンパとか出たいか?」
「え? いえ、出たくないです」
——なんだ、ダンパって。
いや、乙女ゲームなら、それくらいあるか。
「生徒会役員なら、裏方仕事があるからって免除されるぜ?」
「!! やります!」
即答したら、ルドルフ殿下がホッとした顔になった。
まあ、そういうもんか?
勧誘された三人中の二人が辞退しちゃ、王子の求心力を問われかねないか。
「ミザリア嬢も、準役員。それでいいかい?」
彼女が真顔のまま頷くと、王太子が気を取り直すように話し出す。
「では、生徒会の活動を進めていきたいと思う。一年生の二人は、二年メンバーの補佐について欲しい。そうやって仕事を覚えて欲しいんだ」
マルグランダ殿下が、天使のような笑みを浮かべた。
「会長。まず、一年生には会計の仕事を覚えてもらおうよ。会計は生徒会の要だしね。それを覚えれば書記もこなせるでしょ」
「……そうだな。金銭の流れを追えば、活動の内容も分かるようになるだろう」
ふっと、ルドルフ王太子が僕に視線を寄越す。
なんだろうな、意味深な目つきだけど。
「では、まずグランについて、仕事を教わってくれたまえ」
彼は小さく息をつくと、王子スマイルを浮かべた。
「そうだな、期間は三ヶ月。その後で、僕やアルの仕事も覚えてもらおうかな。始めは週に三日くらいでいい。休日以外は一日置きに生徒会へ顔を出してくれたまえ。今日は顔合わせだけだ。では、明後日。待ってるからね」
生徒会参加を避けることはできなかったけど、日常業務が減らせるだけで万歳だ。古語の習得にどのくらいの時間がかかるか分からないし。
今は春。王太子の卒業直前に魔王が復活するとして、次の春まで丸一年か——。
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二話あげますー!