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ダイブ
【序章】
目が覚めると、そこは見慣れない学園の昇降口だった。
辺りを見回してみるが、自分以外の人の気配を感じない。
ただ木組みの校舎が広がっているだけだ。
一抹の不安を覚えながらも、しかし冷静に状況を飲み込もうと頭を回す。
何故自分がここに居るのだろうか。
この学園は中学校?いや、高校か?
どうして誰も居ないの?
そもそも自分の名前って何だったっけ。
浮かんだ疑問が何一つ解決しないまま、いつのまにか体育館前まで足を運んでいた。
『何故だろう、中に誰かが居る予感がする‥』
私はゆっくりとその扉を開いた‥‥
『オハヨウ!!アサダヨ!!オキテ!!』
『!!』
覚醒を促す快活なボイスに目を覚ますと、そこには見慣れた自室が広がっていた。
通学用バッグ、講義用PC、先日のデートで購入したちょびっと高級なクッキー。
あぁ、さっきのは夢だったのか。
そこでようやく自分が大学生だった事を思い出した。
とにかく急がなくては、一限目の講義に遅れてしまう。
私は勢いよく自宅を飛び出した。