6話 巨大なオオカミ
地底都市の大地は赤く、湯気とか煙といった白いモクモクが出ていて灼熱の大地という印象を受ける。
建物は全て黒いレンガでできており、噴水からは水の代わりにマグマが出ている。
さっきの緑豊かな自然とはまるで別の世界である。
「ぜえ……ぜえ……スー(こ、このお屋敷です……)」
「スーさん大丈夫?」
「……はー、スーさんお疲れー」
「スー(セイカ様も、ヨウキ様も、体力……ありますね)」
一際大きな黒レンガ造りの建物の前でスーさんがバテていた。ヨウキも走り終わった直後は息が切れていたのだが、すぐに整った。セイカはあまり呼吸が乱れなかった。体力の化身だ。
金属の格子の門を開いて中に入れてもらうと、屋敷の大きな両開きの扉を一生懸命体で押さえつけている人(?)が二人いる。スーさんのように炎を纏っている背の高い人だ。
扉には大きく曲がってしまっている留め具がある。まだ壊れていないが、あれでは開けたくても開かないのではないだろうか。
「トー(あ……おかえりなさい)」
「スー(勇者様を連れてき「ルー(遅いです! こっちはもう限界です!)」
「スー(ご、ごめんなさい)」
ゴオオオオオオオォォォォン
トーさん(暫定)とルーさん(暫定)の押さえている分厚そうな金属の扉が激しく揺れ、鈍い衝突音が鳴った。
中で何が起きているのだろう。
「スー(セイカ様! 解決策とやらをお願いします!)」
「オッケー、スーさん任せて! まずはみんな扉から離れてね」
「トー(わかりました……)」
「ルー(すぐにグウロ様が出てくるですよ!?)」
「わかってるよ」
「わかってるのか……やっぱ姉ちゃん未来予知できるんじゃ」
「できないよ」
トーさんとルーさんは指示どおり扉から距離を取った。セイカは逆に近づいていく。
ドゴオオオオオオオオオオォォォォォォン……パラパラパラ……
扉は壊れていないが負荷に耐えきれなくなった金具が壊れた。
獲物を探す燃えてギラギラとした目、なんでも飲み込みそうな大きな口に垂れた涎。現れたのは緋色の大きなオオカミだった。
「グオオオオオオォォォォォオオオオウゥゥゥ!!!!!!」
咆哮がビリビリと一帯に響きわたる。
セイカを見るやいなや、喰らってやろうと走り出す。もしそれを目で認識できても驚いたり恐怖したりで対応なんてできるはずがない。
――普通だったら。
そこはさすが変な人代表のセイカ。怖気づかない。
「星の力よ 満悦を得た我に応えて 飢える者グウロから 星の鼓動による反作用を消し去れ」
パール大の青白い光を二つ、手で放った。寒色でありながら不思議と暖かく感じられるその光の軌道は、人と同じ高さのオオカミの口に真っ直ぐ向かっていく。
舌に乗ったとき、目を見開いた。ごくりと喉が動き、飲み込んだのであろうことがわかった。
ついでにセイカの「え、飲み込んじゃったの? もったいない……」という呟きは誰にも届いていなかった。
「キュウウウウン」
グウロの体が光ったかと思うと、すぐに失せた。
いかにも炎属性なオオカミ、グウロは走る勢いを大幅に落としながらセイカの元にたどり着くと、懐いたように顔を舐めだした。
「うわわわ! くすぐったい、くすぐったいよ!」
「キューンキューン」
「ルー(ちょっと勇者様! グウロ様に何食べさせたんですか!)」
ルーさんがなんだか怒っているようだ。グウロがとてもビックサイズなだけのワンコに見えてきた。ルーさんの様子から察するに何かおかしいのだろうか。
「そんなにお気に召すとは思わなかったよ。酔い止めの薬なんだけど……」
「ルー(酔い止め? 二日酔いの薬です?)」
「乗り物で気分が悪くならないようにする薬だね」
セイカの持っている異世界用持ち出し袋を気にしている点から見ても酔い止めをあげたのは本当なのだろう。
「全部あげちゃうと私たちの分がなくなっちゃうから駄目だよ?」
味はソーダの飴みたいでおいしいと以前セイカが言っていた。グウロがもう一つ食べたがるのもわかるが、効果てきめんすぎたのでもう上げない方がいいだろう。
※人間は規定の量を飲みましょう
「あれって乗り物酔いをおこしてたのか?」
「大体そうだよ」
「あとさ、さっき酔い止め青く光ってなかったか? それとも気のせい?」
「光らせたよ、セイカマジックで」
「やっぱり? ほんとにすごいな!」
セイカマジックってすごい。
地底都市は暑いです




