5話 スーさんとノリノリ勇者と
降下時間はものの数秒。地面が近づくと落下速度はなぜかゆっくりになっていき、止まる。
心の準備なしでフリーフォール系のアトラクションと同じようなあのゾワゾワと怖さを味わう羽目になったヨウキは涙目だった。
セイカはというと、ヨウキに抱き着かれてどことなく幸せそうな気がしなくもない。いや、久しぶりにお姉さんをした感に浸っているのだろう。そういうことにしておこう。
「姉ちゃんはなんで落ちるってわかったんだ……?」
「私、未来予知できるから」
「そうなのか!? でもなんか納得だな」
「……嘘だよ?」
「え」
「お姉ちゃんはヨウキが変な人に騙されないか心配だよ」
「大丈夫だぞ。姉ちゃんより変な人見たことないから」
「スー(あ、あのー、勇者様?)」
二人の前には2mは超えていそうな炎を纏った人(?)がおり、おずおずと副音声のような念話で話しかけてきた。
「お待たせしました、勇者のセイカです」
「俺はヨウキだ」
セイカはその場のノリで楽しそうに答えた。勇者というフレーズにはやはり心が躍るのだろうか。
「スー(地底都市の領主、グウロ様が……暴走してしまいました)」
「だれ?」
「地底都市の領主でしょ?」
「それは今スーさんから聞いたぞ」
「スーさん……?」
「スー(セイカ様、ヨウキ様、グウロ様の暴走をどうか止めてください!)」
スーさん(命名:ヨウキ)は切羽詰まったような声音だった。
セイカとヨウキの割とどうでもいい未来予知の話なんて割り込んで良かったんだぞスーさん。
「よ~し、やるよ!」
「どうすればいいんだ?」
「スー(情けない話なのですが、暴走を止める方法もわかっていないのです……。でも、勇者様なら、きっと!)」
「私に任せてスーさん! もう解決策はあるからグウロを止めに行こう!」
「スー(もう解決策が? さすがは勇者様です!)」
セイカは道を知っているかのように進みだす。
「スー(セイカ様、グウロ様がいるのは逆です!)」
「ああ、そうなの? なにせ初めて来るところだから」
「スー(初めて来るところはそんなにグングン進まない方がいいと思います!)」
セイカはバカなのだろうか。いや、頭は良いはずなのだが。
セイカが迷子にならないようにする、というかフラフラどこかへ行かないようにする手段がある。
「姉ちゃん、手、つなごう」
「うん!」
セイカはこの上なく嬉しそうに手を繋いだ。
実はわざと迷子になりにいってるんじゃないだろうか。
「スー(ヨウキ様は慣れてますね)」
「姉ちゃんが勝手にどっか行って迷子になるのはいつものことだから」
「スー(セイカ様何やってるんですか……)」
「善は急げって言うじゃない?」
セイカは腕をサッサッと前後させた。走るようなジェスチャーだ。
「スー(とは言っても手を繋いで走るのは危なくないですか?)」
「大丈夫だよ!」
「それは大丈夫だぞ。急いでるんだろ? 走ろ?」
「スー(ヨウキ様がそういうなら)」
「あれ、私も同じこと言ったよね?」
「……」
「……」
「なんでスーさんもヨウキも目を逸らすの?」
「スー(では、ついてきてください!)」
「うん!」
「二人とも〜?」
ナビゲーターのスーさんに続き、ヨウキとセイカは走り始めた。
ヨウキがセイカの速度に合わせていて、速くて危なげのない走りだった。これにはスーさんも驚きだ。案外息ぴったりなのかもしれない。
セイカはきっと自信満々に迷子になるタイプですね




