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星の賢者と召喚された姉と俺  作者: 秋見 京也
地底都市の領主 編
4/33

4話 呼び鈴は押すもの

 着いたところは森だった。

 活き活きとした緑のツタが絡まった木、聞いたことのない生き物の声、転々と続く足跡。一面に広がるのは日本とは違う自然。


 それを横切って「ここか〜」と言いながら右手側の地下へと続く洞窟へ直進するセイカ。


「姉ちゃん待って!」


 慌てたヨウキの声にセイカは振り返って止まる。ヨウキが駆け寄ってきた。


「ずんずん進むのはまあいいんだけど、俺がはぐれちゃうだろ!」

「ごめん。ついつい〜」


 洞窟の入り口から見ると、光の届く範囲までは斜面にシダやコケが生えている。


「こっちであってるのか?」

「あってるよ? ほら、地底都市への行き方に書いてある」


 セイカは一枚の紙を見せる。そこには確かに洞窟に入るよう書かれていた。


「そんな紙もらったっけ?」

「馬車に置いてあったよ」

「全然気づかなかった……」


 二人は一緒に傾斜の始まりへと踏み出した。


「そういえばあの馬車は放っておいていいのかな?」

「さあ? 何も言われてないから気にしなくていいんじゃないか?」

「帰りにも使うからいいか〜」


 入り口付近は勾配が強く、下の方には石か岩かの判断が難しいサイズの石がたくさんコケむしている。


「うわわ!」


 ヨウキはコケで足を滑らせ、バランスを崩した。しかし、ニ歩、三歩と足を前に出してそのまま駆け下りる。恐るべき体幹。


「ふー、ギリギリセーフ」

「ヨウキ大丈夫……あ!」


 ヨウキの心配をしてよそ見をしたセイカは石に躓いた。このまま転んだら地面がゴツゴツなので痛そうだ。

 でもヨウキを巻き込むことはなさそうだ、と思ったセイカに横から手が伸びてきた。


「うわっとと! 姉ちゃんは危なっかしいなあ」


 ヨウキに受け止められたセイカ。


「あ、ありがとう……」


 転ばずに済んだ。二人とも怪我しなくて何よりである。



 下り坂は終わった。斜め上から差し込む光でうすらぼんやりと全体像がわかる。

 天井は少し高めだ。緑が消えて地面がむき出しになった辺りに、レストランでたまに見かけなくもない呼び鈴がポツンと置かれていた。その後ろは行き止まりだ。つまり洞窟探検は即終了したわけである。


「なんでこんなところにチーン! って押すやつがあるんだ?」

「紙によると、そこの呼び鈴をチーン! って鳴らせばいいみたいだよ」

「……罠とかじゃないのか?」

「すごく怪しいよね~。……えい!」


 チーン!


「姉ちゃん!?」

「鳴らすって書いてあったからいいでしょ?」

「ただ押してみたかっただけじゃなくて?」

「八割方そうだけどね」

「やっぱり!」


 セイカの体が淡い光を纏う。


『魂鑑定中……瞬きと揺らぎを観測しました』


 どこからかアナウンスが聞こえてくる。


『加護を確認中……星の加護、世界樹の加護があります。あなたは勇者様です』


 セイカは興味深げに「ふ〜ん、私が勇者、ね。世の中わからないこともあるもんだな~」と言い、ヨウキはキョトンとしている。


 ・・・。


『ベルを鳴らし、世界樹の加護があることを確認してください』


「だって」

「あ、俺もやれってことか。わかった!」


 チーン!

 二人とも思いっきり押すところは同じである。やはりヨウキも淡い光に包まれる。


『魂鑑定中……揺らぎを観測しました』

『加護を確認中……世界樹の加護があります。あなたは勇者様です』


『その場にいる全員が世界樹の加護があることを確認しました。降下を開始します』


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


「なんの音だろ?」

「ヨウキ、怖かったら私に掴まっていいよ」

「?」


 セイカと状況の理解が追いついていないヨウキは、床が抜ける落下感に襲われた。


「ひぃやああああああ!」


 ヨウキはセイカにしがみつくことになった。

チーン!

あれを鳴らすの好きなんですよね。楽しい。

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