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33話 流れ星にする願いは(後日談)

「ヨウキ、早く! 見逃しちゃうよ!」

「待ってよ、姉ちゃん!」


 ヨウキは冷凍庫からアイスを取り出し、セイカの向かったベランダへ急ぐ。


 ベランダに出ると、既にセイカが待っていた。夜の空に星が沢山散りばめられている。


「はい、姉ちゃん、アイス」


 ソーダのアイス二つを分け合う。


「あらためて……誕生日おめでとう、姉ちゃん」


 さっき夕ごはんに食べたカレーはセイカの好物であり、ヨウキの好物でもある。

 デザートのケーキはセイカの誕生日ケーキだ。小さめなホールのショートケーキで、年齢分のロウソクを立てないのか聞いたら「このケーキの大きさに17本は多すぎるからやめとくよ」と断ったのでロウソクはなしだった。


 カレーとケーキを食べた後でいただくアイスは、別腹ということで。冷たくて甘くておいしい。


「これ、プレゼントなんだけど」


 ヨウキはお店で包んでもらったプレゼントを渡す。


「ありがとう。開けてもいい?」

「いいぞ」


 セイカは丁寧に包みを開けて、中身を見る。


「日記帳だ……!」

「なくなりそうだっただろ? 姉ちゃんのことだからもう新しいの買ってあるかもしれないけど、予備がもう一つくらいあっても困らないかなって」

「本当に、よく見てるな〜!」

「わ、姉ちゃん!?」


 セイカはヨウキに抱きついた。


「嬉しいよ、ありがとう!」

「暑いってば……はあ、姉ちゃんはしかたないなー。喜んでもらえてなによりだよ」


 キラリと夜空に光が走る。


「あ、流れ星来た」

「始まった?」

「うん」


 今夜は小規模な流星群が空を駆ける。小規模なものなのでみんなが想像するものよりも遥かにささやかだが、毎年セイカの誕生日は流星群がやって来るのだ。

 セイカはヨウキを放してあげて、濃紺の空を見上げた。


「姉ちゃんはなにかお願いごととかしないのか?」

「う〜ん、ヨウキの頭が良くなりますように」

「俺の頭、星に願わないとダメなレベルなのか」

「うそうそ、みんなが健康に過ごせますように、かな」

「毎年それじゃん。自分のことは?」

「私はもう叶ってるから十分だよ。それよりヨウキは?」

「お金が降ってきますように」

「夢があるような、ないようなだね」


 しばらく、ポツリ…………ポツリ…………と落ちる流れ星を言葉もなく見つめた。


 ふとセイカが言った。


「ヨウキ、私ね、本当は勇者じゃなかったんだよ」

「なんで?」


 ヨウキは上にやっていた視線をセイカに戻した。


「あの世界の勇者は相応の能力を与えられるんだって」

「与えられてたじゃん。魔法使ってたし」

「あれはね、元々使えたんだよ」

「じゃ、今も使えるのか!?」


 瞳を星のように輝かせてヨウキは聞いたが、セイカはゆっくりと首を横に振った。


「"星"がないから使えないよ」

「そうかー……」

「勇者はヨウキで、その、私は……」


 セイカはどこか不安そうな目をしている。


「……姉ちゃん、俺、本当は勇者じゃなかったんだよ」


 ビックリとした顔でセイカはヨウキを見た。


「俺、異世界の人たちが解決してくれって言ってたこと、してないからな」

「え……?」

「グウロさんの暴食衝動も止めてないし、フルド=ノックさんも正気に戻してないし、クラークさんに何かしたわけでもないから、海の水位を下げてもない」


 ニッとヨウキは笑う。


「だって俺もなんの能力も与えられてないからな。姉ちゃんもなんにも与えられてないんだろ? 同じだな!」

「……そっか」

「俺も姉ちゃんも勇者として呼ばれたのに勇者じゃなくて、普通の人だったわけだな」

「普通の……うん、そうだね」


 ヨウキは、セイカが異世界から転生してきたことを知った上で、さらに自分も異世界に行って来た上で、そう言えるのだ。

 セイカが一番望んだ言葉と理解がそこにあった。


 一筋の光が深い深い青をよぎった。

後日談まで読んでくださり、ありがとうございます!

至らぬ点やつじつまが合わなくなった点もあると思いますが、たくさんの方に読んでいただけて嬉しいです!

今まで作品を公開したことがなかったので、読まれることを意識する良い機会になりました。


それではまた~。

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