32話 元の世界へ
ヨウキと目覚めたセイカはフルドの魔法で一瞬にして要塞都市に戻った。もうすっかり夜になっていて、街中では酒を呑み交わす男たちの声がしていた。街並みを見て歩いた。
今はヴァナディたちのいる領主館で魔法陣の上に立っている。おにぎりを作れるくらい発動の遅い転移魔法なので、使わなかったお金を返したヨウキは、クラークのいた入り江をあとにして魔王城まで行って来たことをフロディとヴァナディに話していた。
セイカが倒れたことなどは言っていないが、二人とも興味があるようだったので魔王城がどんな感じだったかを詳しく話した。人形があったことや、動いてちょっと怖かったことなどを。
足下に描かれた模様の光が強くなってきたので、そろそろだろうか。
「勇者様方、ありがとうございました」
「とても……助かりました」
ヴァナディとフロディからの感謝の言葉と共に一層明るく帰還の魔法陣が光る。
ヨウキとセイカは眩しくて目を瞑った。
「セイカたち、どこに行ってるんだよう……」
「ん〜、そのうち帰ってくるんじゃない?」
心配で泣きそうな顔をする男性と、心配ではあるがどこか楽観的な女性。言わずもがな、セイカとヨウキの父と母だ。
不意に二人の視界の端、キッチンの方が明るくなった。
「おおー、家だ!」
「ただいま〜」
ヨウキとセイカの声だ。
父が慌ててヨウキたちの近くに走ってきた。
「心配したんだぞう! 帰ってこないんじゃないかとか、家出したんじゃないかって……」
「ただいま」
「お父さん慌てすぎだよ〜、家出とかしないって」
ヨウキは大きなアクビをする。
「なあ姉ちゃん、俺先にシャワー浴びていい? 安心したら疲れた」
「どうぞ~」
ヨウキは自室に服を取りに行った。ちなみに今は魔王城で着ていた青と金の装飾という目立つ服ではない。マオさんのかけた魔法が解けたみたいで、世界を越えたらただの外着に戻っていた。
そういえば、セイカのかけた魔法でパジャマが外着になったはずだけど、そこはまあいいだろう。
お風呂場で、バスチェアに座ったとき、鏡に映った自分を見たヨウキは思わず疑問を口にした。
「あれ? 俺の目、こんな色だったっけ?」
ヨウキの虹彩は髪とそんなに違う色ではなかったはずだが、今は空色に変わっていた。
「うーん、今まで気づかなかっただけでこんな色だったのかもな!」
風呂から出て来たら、母に目のことを心配された。そのあと、気のせいなわけないでしょと言われた。父はヨウキたちが帰ってきたことで舞い上がり、気がつかなかったようだ。
セイカも同じような色をしているので、遺伝の可能性があるという結論になった。
その後、今までどこに行っていたのかを聞かれ「異世界」と答えた。ヨウキには嘘をつくとき目が泳ぐ癖があるので、母は注視していたのだが、泳がなかった。本当だということがわかる。
「へえー! いいなあ!」
驚いてから羨ましがる父。
「そういうこともある、か。貴重な体験ね」
意外にもすんなりと受け入れる母。
この親にしてこの子あり、なのかもしれない。
ワクワクしながら詳細を聞いてくる父は説明の上手いセイカに任せて、ヨウキは寝る支度をする。
慣れない土地で慣れないことをしたヨウキは布団に入ったらすぐに寝入ってしまった。
異世界、一泊二日の小旅行(?)はこうして幕を閉じたのだった
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
話としてはこれが最終話なのですが、おまけとして後日談があります。
ぜひ、見てください。




