表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の賢者と召喚された姉と俺  作者: 秋見 京也
星の賢者 編
30/33

30話 聞いてないって!

「何故、此処へ来タ」


 無機質な声と表情で問われているが、文脈からは来てほしくなさそうにしか受け取れない。


「クラークさん、魔王城に来たら喜ぶぞって言わなかった!? 歓迎されてなさそうだぞ!」


 小声でクラークに話が違うと告げる。


「なにを言うておるんじゃ、勇者様。すごく嬉しそうではないか」

「え」


 ヨウキはマオさんをじっと見た。

 人形の瞳は壁の松明の火の光を受け、赤く反射した。


「ぜったい怒ってるって!」

「あんなに目をキラキラさせているではないか」

「ギラギラの間違いだって!」


 ヨウキとクラークの小声の掛け合いを聞いたお耳の大きなグウロは魔王に話す。


「ガウガウ(魔王様、勇者様はどうやらその器が好みではないようです)」

「ソウカ、ならバ変えるトしよう」


 ゴゴゴゴ……という音を立てて奥の壁が開いていく。

 そこにあったのは数々の陶磁器の人形(等身大)と甲冑、違う素材で造られたゴーレム数体、大きな角を持つ魔王感溢れる人形(?)だった。


「勇者ヨ、選べ」


 どうやら怖くないモノを選んで良いようだが、敢えて言いたい。全部怖いので却下だと。


「でも、強いて言うなら……」


 ゴーレムかな、と言いかけたとき、マオさんはひょいと玉座を立った。しかし、立ったのは人形ではなく、人形から出てきた黄色に光る人型の精霊だった。光の精というのがピッタリで、とても美しかった。


「……それだ!」


 マオさんは薄く光っている自分の体を見る。


「コレでは何も纏ってイナイ」

「お願いだ、その姿でいてくれ! 他のヤツ全部怖い!」


 ヨウキはこの機を逃すまいと声を荒げた。


「選べト言ッタカラには断ワレナイ、カ……了解シタ。……シテ、何故此処に来タ」

「それはかくかくしかじかで」


 セイカとフルド=ノックを穿った光が似通っていたこと、"星"からその光が降ってきたことを伝える。


「マオさん、姉ちゃんを起こすことってできないか? 魂が眠ってる状態? らしいんだけど」


 マオさんはグウロに乗せられたセイカを一瞥する。


「可不可ならバ、可と答エよう」

「おお……!」


 期待の眼差しを向けるヨウキにマオさんは、しかし、と続けた。


「条件ガ有ル」

「条件?」

「汝ノ魂、ソノ半分を頂ク」


(魂を全部持ってくって言われたら敵キャラっぽいって思うところなんだけど、半分か。それでなんとかなるなら別にあげてもいいか、と思えるのはなんでだろうな? それに、だれかに似てるような……?)


「わかった、それでいいぞ」

「決まりダ」


 マオさんは呪文を唱え始める。セイカの目を覚ますために魔法を使うのだろうか。


「星を治める力よ 我が永遠の孤独に応えて 創造せよ」


 金色の光がなぜかヨウキとマオさんに降り注ぐ。マオさんが星モチーフのドレスを纏っていく。薄く向こう側が透けているのは霊体だからだろうか。足は見えるので、おそらくきっと、幽霊ではないだろう。ちなみに羽のついた靴を履いている。

 ふと自分を見ると、先程まで着ていた動きやすい服がいつの間にやら青地に金の装飾が施された高級感溢れる服に変わっているではないか。どこかで見たことのある魔法だが、すごい。

 焦っていたので失念していたが、相手は魔王。やはり身なりを整えてから来ないと失礼だったのかもしれない。


「勇者ヨ、近くニ」


 来い、ということだろうか。ヨウキは頷いて玉座に近付いた。どこまで近づけば良いのかわからなかったのである程度まで進んで、止まった。マオさんはその距離感が気になったのか逆にこちらへ来てくれた。


 なんだか近い気がする。


「デハ、くちづけヲ」

「……え?」

「キスじゃよ、キス」

「き、き……す? なんで……?」

「ガウガウ(なぜと問われてもな)」

「魂の分かち合いってそういうものでしょ?」


 おっとマオさんだけでなくここまで来てくれたクラークもグウロもフルド=ノックも当然という顔をしている。異世界の常識のようだ。知らなかったと言い訳したい。

 肩に乗っているクラークが楽しげにヨウキを見ている。


(どうしよう……)


「魔王さま、足が!」


 フルド=ノックの声で覚悟を決められずにいたヨウキがマオさんを見る。マオさんが足元からだんだんと光がほどけていく。


「コノ日、コノ時と定めラレタ寿命ダ。コノために汝達、魔物は自己制御が困難トなり、世界樹ガ勇者を呼んだのダカラ」


 マオさんはこちらに向き直す。


「勇者、コノママ時間を無為にシテモ良いガ、次の魔王が話を聞く者かハ保証デキナイ。なにせ、先代はコノ世界ノ滅亡を企んで愚者に堕ちたのダカラナ」


 このまま先延ばしにしていると、マオさんは消えてしまうだろう。


「姉ちゃんのため……姉ちゃんのため……! すー、はー、すー、はー……し、失礼します!」


 ヨウキは声が裏返りながらも、控えめに失礼した。勇気が出なかったからなのだが、これが正解であった。

 薄い布に触ったかのような感覚。力を入れたらすり抜けてしまいそうなくらい、曖昧な存在で、ヨウキが違う世界からやって来たからかもしれないが 触れるのもやっとだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ