27話 常識ってなんだっけ
手品という概念を説明されたあと、都合よく誤魔化されてくれなかったのでセイカへの質問攻めは止まらなかった。
「ガウガウ?(と、とにかく、どうしてセイカ様の方が魔王様より力が強いのだ?)」
「これじゃセイカさまが星の賢者じゃない……」
グウロとフルド=ノックがしきりにセイカが”星”の力を使える理由を聞きたがった理由はそこか。
セイカは魔王を超えた力を持っていない旨を軽く説明する。
「星の賢者は終わり際が一番不安定だけど、その分強いんだよ。私に与えられた力は魔王に共鳴して強くなってるんだろうね。だから私より今の魔王の方が強いはずだよ」
「そ、そうなのね?」
「ガウ(そうか)」
グウロとフルド=ノックは安心した顔をしたように見えた。
「姉ちゃんものしりだなー」
ものしりどころじゃない。なぜそんなことを知っているんだ。
「これくらいは常識だよ」
「そんな常識知らない」
「この世界にいたことがあれば、だからね。ヨウキは知らなくて当然だよ」
「え、いたことあるのか?」
「あるよ」
「あるのか!? でも……あー納得。姉ちゃんだからな」
「いやいや、おかしいわよ」
「ガウガウ(何故ヨウキ様は納得しているのだ)」
グウロとフルド=ノックは驚きで目を見開いたままだ。
「夢でね、見たんだよ」
「夢で行ったことあるのか? 予知夢とかじゃなくて?」
呆れた瞳でセイカを見るグウロとフルド=ノック。ヨウキは面白そうに聞いているが、おもしろ半分に茶化してはいない。
気づかれないように固唾を吞んだセイカは、笑顔でなんてことなさそうに言った。
「私が神津星歌として生まれる前の記憶なんだ〜」
「なんだって!? この話は異世界転移ものじゃなくて異世界転生ものだったのか!」
「異世界に転生したんじゃなくて異世界から転生してきてるから違うんじゃないかな? あとヨウキ、メタいよ」
「姉ちゃんには言われたくないぞ」
フルド=ノックが「転生だなんてありえないわ……」と呟いている隣で、グウロは顔と尻尾を上げた。
「ガウガウ(そういえば地底都市よりこちらに向かう際の魂鑑定でこちらの世界特有の魂の瞬きを観測していた。さらに星の加護もあった)」
「ちょっとグウロ、それ本当?」
「ガウ(当然だ)」
「今思い出したくせに開き直らないでよ。鑑定器の故障じゃないのよね?」
「ガウガウ(点検は定期的に行っている故に故障ではない。まごう事なく、この耳で聞いた)」
グウロの大きな耳がピッピッと動いた。
「ふぁーあ、難しい話は終わったのう?」
ヨウキの肩に乗ったまま大爆睡していたクラークが大あくびをしつつ起きた。
「どうじゃ、魔王城に行かんか?」
「心配なことがあるから魔王城は行かな……」
問われたセイカは答えようとしたが、最後まで言うことはできなかった。ヨウキが軽いめまいを感じるほどの星の光が、セイカを差す。
しばらくすると光が消え、セイカは力なく倒れた。
「姉ちゃん!」
ヨウキは慌てて駆け寄り軽く揺さぶったが、全く反応がない。
「救急車……! あ、あるわけないよな、どうしよう……」
ヨウキは心配そうにセイカを見つめた。
* * *
「オツター、勇者様がひとりでなかった事例はあったかしら?」
「はいヴァナディ様、詩として残っておりました。詳しく調べてみたところ、魂の形が似ていた方が4人ほど召喚されたようです」
「4人……」
「はい。似た者同士、友人だったかもしれません。食事を取る前の祈りの詩だったのですが、仲睦まじい描写と受け取れましたので」
「そう、ありがとうオツター。おつかれさま」
なんと、実はこの姉弟、神津という苗字なのでした!




