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25話 ひょうきんなクラークさん

 海底付近から上がってきた大蛇はチラリとこちらを見やって懐かしそうな目をした。


「ほう、久しいのう……グウロにフルドじゃな。そこにいるのは……」

「勇者のセイカだよ!」

「ヨウキだぞ」


 セイカはノリノリで、ヨウキは普通に答えた。


「お、おお、ついに儂の番か。ずっと待っておったのじゃぞ、勇者様。儂はな、最近異常な成長期に突入して巨大化が止まらないんじゃ」

「さっきそれは要塞都市のヒトたちに説明されてたわ」


 海の主クラークが事情を説明しようとすると、フルド=ノックに打ち切られた。


「すでにセリフを盗られてたなんて思わんかったわい。儂に取っておいてくれても良かったと思わんか?」

「向こうだって必死で勇者さまに依頼しているんだからクラークに文句を言われる筋合いはないと思うわ」

「うっ……そうじゃな」

「まあ要塞都市のヒトたちが何も言わなければあたしが代わりに依頼したでしょうからどっちにしろクラークが説明する機会はないわね」

「儂のために……お主優しいのう」

「クラークのためじゃないわ。ただ私の領地に一気に人が増えると拡張が大変だし、そもそも来るのは望ましくないから依頼するってだけよ」

「ガウガウ(命あるものは大切にすべき故にな)」

「グウロもいつも喧嘩ばっかりしとったのにフルドのために不帰都市まで転移したんじゃろ?」

「ガウガウ(だからあれは地上のヒトと勇者様が困っていたからで……!)」


 このやり取りを傍で聞いていたヨウキとセイカはお互いにヒソヒソ言った。


「あれはツンデレなのか?」

「ヒト型してるフルド=ノックはともかく、オオカミのツンデレに需要はあるのかな?」

「うーん、ないな!」


「……っ」


 軽口を叩いていたら、セイカが頭に手をやった。少し顔色が良くない。頭が痛いのだろうか。


「姉ちゃん、大丈夫か?」


 一歩近づくと、パチャンと水たまりを踏んだような音がした。

 靴に滲み込むほどではないが、靴底から数ミリ水が張っている。


「うっぷ……グラグラぐるぐるするのじゃ……」


 クラークはなぜか目を回していた。今は水面から完全に顔を出しているので水中にある体の体積は減っているはずだが、水かさが増している。


「うん?」


 気のせいだろうか、一回りくらいクラークが大きくなっているように見受けられるのだが。

 顔を上げたセイカは異世界用持ち出し袋から酔い止めを取り出してクラークに投げた。


「クラーク! これを飲ん……だらもったいないから舌で受け取って舐めてて!」

「ええ!? それ小さいし、目も回ってるのに結構無茶ぶりじゃよ、それ!」


 そう言いながらもしっかり成功した。セイカの投擲力は高かった。


「クラーク、その薬はさっきの揺さぶられたみたいな気持ち悪さに効くよ! よかったね!」

「そ、そうかの。そんなもんがあるとは知らなんだ」


 セイカはすかさず唱えた。


「星の力よ 満悦を得た我に応えて 崩す者クラークから 星の鼓動による反作用を消し去れ」


(小規模に、小規模に……!)


 クラークの口の中が、いや、舌に乗った酔い止めが青白く光りだした。みるみるうちにクラークの姿が水の中に消えていき、足に迫っていた海水も引いていく。

 どんどんと水かさが減っていき、そのうち海面の低下は止まった。

 フルド=ノックとグウロは驚いた顔で停止している。


「ありがたいのう、初期の大きさに戻れたわい」


 いつの間にやら陸に上がってきたエメラルドグリーンのウロコを持つヘビからクラークのような声がする。


「誰だ?」

「クラークじゃよ、一瞬で忘れたか少年?」

「ちっさ! 信じられないくらい小さい」

「元はこの大きさだったんじゃよ」


 なんとデフォルトサイズは約50センチだった。日本ではマムシくらいの長さだろうか。どうやら最初は割と普通なヘビだったらしい。

 さっきまでの大きさが大きさだったので、ヨウキの感覚は麻痺してしまい(ヘビってこんなに小さかったっけ?)と首をかしげた。


「クラークさん、はい」

「ヨウキ様、その手はなんじゃ?」


 ヨウキはクラークに手を差し出していた。


「クラークさん小さいから移動するとき踏んじゃいそうだ。乗ってくれないか?」

「そういうことなら、ありがたく乗らせてもらうかのう」


 クラークは差し出された腕を器用にシュルシュルと上っていき、ヨウキの肩にしっかりと腰(?)を落ち着けた。

クラークは好きで海に入ったわけではないとか。


これで「海の主 編」が終わりですね。

ひょっとして短い? と思った方もいると思いますが、実は……短いんです。

あ、知ってました? これは失礼しました。

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