23話 もう一つ依頼をこなそう
不帰都市の領主の暴走を止め、無事に出てきたセイカとヨウキとグウロ……と一緒にきたフルド=ノック。
空の色はまだ青いが、雲はオレンジ色に照らされている。
「人がいっぱいいるところに出て、大丈夫なのか?」
ここは要塞都市のヴァナディたちが住んでいる領主館だ。
グウロが不帰都市に連れて行ってくれたときはわざわざ誰も巻き込まないところまで距離を取っていたが、フルド=ノックはそんなことしなかった。
「グウロと一緒にしないでちょうだい。あたしは転移対象以外を巻き込んだり転移地点が想定とズレたりなんてしないわ」
得意げなフルド=ノックは自分の赤い帽子から同じ帽子をグウロに被せた。すると、グウロとフルド=ノックが消えた。
すると、オツターが近くに来て感謝を口にした。
「おつかれさまです。セイカ様、ヨウキ様! 正直、金の転移陣を見たときはもう駄目かと思っておりました。もうお迎えが来てしまったと……」
「俺ももうだめかと思った」
「ヨウキ様ったらご冗談を」
ヨウキは(フルド=ノックさんの演奏中、みんな怖かった)と思い返して軽く震える。
「私が帰ってから一時間ほど経ちましたが、何かございましたか?」
オツターが帰ってきてからヨウキたちが帰ってくるまでの時間が長かったことを心配していたようだった。
セイカは何もなかったことを伝える。
「私たちはオツターさんが帰ったあと、フルド=ノックたちと数回言葉を交わしたくらいで戻って来たんだけど……。不帰都市は時間の概念が無いらしくてですね」
「そうでしたか……興味深いですね」
ヨウキは気づいた。セイカとオツターさんは好奇心強めの、知らないことを知るのが好きなタイプだと。ヨウキとは違う人種だ。
「無事、解決されたそうですわね。勇者様、ありがとうございます。今、お兄様が民の帰還を確認しに出ていますの。……あ!」
ヴァナディの視線の先はこの館の門、入り口だ。白い馬に乗ったフロディが帰ったところだった。
ヨウキたちがグウロのいる地底都市に向かう際に魔法馬の車に乗ったが、魔法馬ではない馬もいたようだ。
「お兄様、勇者様が不帰都市からお戻りになりましたわよ!」
「街の不帰都市に行ってしまった方々は皆、急に自宅へと現れたそうです。ありがとうございます……セイカ様、ヨウキ様」
フロディはサッと馬から降り立ち、ペコリと頭を下げた。
「お疲れでなければ……あと一つ、最後の問題解決をお願いしてもよろしいですか」
「お兄様、それは、また明日にしませんこと?」
ヴァナディは「朝からこんな時間までずっと不帰都市で奮闘された後ですわよ? きっとお昼も食べていないでしょう」とフロディを説得しにかかる。
「私は構わないよ?」
「俺も大丈夫だぞ!」
まだ仕事できるアピールを慌ててするセイカとヨウキ。不帰都市は時間という概念がないため、不帰都市にいるのが数分でも実際には何時間も進んでいる。
つまり、セイカとヨウキにとっては朝ごはんを食べてからそんなに経っていないのでお腹が空いていないのだ。
「そうですか。お二人がそうおっしゃるのであれば、わたくしは止めませんわ」
不思議そうな顔をしながらヴァナディは引き下がった。
「この大陸の周りにとぐろを巻いている海の主が最近……急激な巨大化を続けています」
フロディに続けてヴァナディも捕捉をする。
「そのせいで水位は上がり、寝返りなどで大きな波もたち、被害が出ているのですわ」
「不帰都市の方で問題が起きなければ……海の主のことをお願いしたのですが……」
真剣そうな領主の跡取りたちを差し置き、セイカは目を輝かせた。
「海の主……心が躍るね!」
「そうか? よかったな」
ヨウキは軽く流した。
「それで? それで、私たちは何をすればいいの?」
「そもそも何かできるのか? 天災レベルじゃん」
ヨウキのもっともな疑問。
「え? それは、今までのようにパパパパーっと……」
「急な語彙力の低下!」
ヨウキにツッコミを入れさせるヴァナディ……天然だろうか。
「勇者様がわからないなら、わたくしだってわかりませんわよ!」
その通りだった。ヨウキもわかっていないのだから当然の反応だったかもしれない。
ヨウキにもどうして今までなんとかなってるのかわかっていません




