2話 召喚された
まぶた裏にまで届く眩しさが収まり二人が目を開ける。
ヨウキはキョトキョトと周りを見渡す。見たことのない場所だ。
白い壁で赤い屋根の異国の建物がコの字型に自分たちを囲っている。今立っている場所は庭のような場所なのだが、幾何学模様が石畳に刻まれているのでここは祭壇かもしれない。
「勇者様、異世界からようこそいらっしゃいまし、た……」
きらびやかな洋服と黄金と琥珀のアクセサリーを身に着けた少女が二人に声をかけ、呆けた。
(二人ともまだ幼い顔立ちですが……元気そうな男の子と、なんて素敵な、優美な女の子……)
ヴァナディが男だったら一目惚れしていたかもしれない。
「って二人ですの!?」
おそらく呼び出した側であろう少女が心底驚いていることにヨウキは一抹の不安を覚える。
「なー、姉ちゃん、これ事故だったりしないか?」
「う~んあの様子だと、少なくとも二人いるのは事故なんだろうね」
思いっきり私語をするヨウキとセイカに、我に返ってコホンと咳払いをする少女。
「異世界からようこそいらっしゃいました。わたくしはヴァナディ、この地、要塞都市の領主の娘ですわ」
ヴァナディと名乗る少女は、領主の娘というより王女という表現の方が当てはまりそうなものだが、どうやら違うらしい。
「これから、この世界の抱える悩みの種を取り払っていただきます」
「具体的には何をするんですか?」
セイカは聞いた。
「問題のある場所へ赴いていただき、困っている方々を助けるのが役目でございます。他に何かご質問はありますか? お答えしますわ」
「どれくらいで帰れますか?」
今度はヨウキが聞いた。
「そうですわね……短ければ二日でお帰りになれます。全て解決なさった上でお帰りにならないと言うのであれば、それも結構ですわ」
ヴァナディは一旦区切り、柔らかな笑顔から真剣な表情になる。
「さあ、挨拶はここまでにいたしましょう。地底都市の領主に異変が起きているそうですわ。途中までは魔法馬の車をお出ししますので早速ですが向かってくださいませ」
側近らしき眼鏡の青年に馬車へと案内される。ヨウキは迷いなくピョンと乗り込み、「はい、手」と差し伸べる。セイカはその手を借りて「ありがとう」と言いながら膝までの段差を登った。
扉が閉められ、馬は走り出した。
馬車を見送るヴァナディと、案内をした眼鏡の青年は話す。
「オツター、聞きたいことがありますわ」
「はっ、なんでもお聞きください。私の知識はあなたの物にございます」
「これまでに勇者様が複数人いらしたことはあるかしら?」
「断定できる範囲だと一度ございました。双子の勇者様だったようです。文献に残っております」
眼鏡キラーン
「そう。断定できない範囲にも他に心当たりがあるようですわね。好きに調べなさい」
「おや、気づかれましたか」
「ええ、あなたはそういう人ですもの」
「どこで見かけたかをはっきり思い出せていませんのでご容赦を」
ヴァナディの言葉にオツターはニッコリとする。胡散臭い笑顔だ。
「今気づいたのだけど、名前を聞きそびれてしまいましたわ」
「記録の名前の欄は空白にしておきますね」
「助かりますわ」
勇者を呼び出したときの記録をきちんと残しているようだ。
「あと一つ、これはあなたの意見を聞きたいのだけど」
「なんなりと」
「オツターはあの二人の勇者様が本当に解決できると思うかしら?」
「難しい質問ですね。私個人の意見としましては無理だと思います」
「やはり、そうですわよね」
しかし、と続けるオツター。
「世界樹様が勇者様を呼ぶ際、そのときの困りごとを解決する能力がある方を選ぶ……もしくはふさわしい人格の持ち主を選び能力を付与します。前回の魔王様の件も私は無理だと思いましたが見事解決してこの世界からお帰りになりましたし」
「三年前ですわね……」
「三年前です」
「間がありませんわ」
「過去最短かと」
二人はため息をついた。
オツターはその場から去ろうと背を向けたとき、用意していた袋が目に入った。
「失礼ながら、私から一つよろしいですか?」
「ええ、許可しましょう」
「ヴァナディ様、活動にいたって必要と思われるお金を渡しそびれています」
「そんな!?」
「馬もフロディ様が乗っていかれましたから追いつくことは叶いませんね」
「お兄様ったらどうして今日に限って……! もう!」
ヴァナディはやるせないという顔をした。
この回、セイカとヨウキ全然喋ってなかった(気付かなかった)




