16話 消えたオツターさん
オツターはヴァナディのお付きの人です。
「ありました! コメなる物が出てくる詩……!」
ハートを四つつけた風車のような形の光る花を胸元に挿し、ライトとして使っている。広範囲を照らそうとしければ読書に問題のない明るさだ。
オツターは勇者が複数人召喚されたことがあるか調べているところだった。
ふと、周りが明るくなったことに気づく。それほど広い範囲は照らしていないはずだ。
「これは!」
光の発信源は床にあった。勇者を召喚するときに現れるものと輝きの色は違っているが、術式は似通っている。
そう、金色の光で描かれた幾何学模様だ。
書庫で大声を出しているのが聞こえる。朝から入り浸っているので今の声はオツターだろう。
休憩中の門番は(坊っちゃんたちがおやすみになっているのに大声を出すなんて。怒られる……!)と思い、注意しようと書庫のドアを開いた。
ガチャリ。
「オツターさーん、何叫んでるんですか?」
広くて本がびっしりと詰まった書庫。入り口からは本棚で隠れて見えないところがあるほどだ。
ぼんやりと光が漏れているので、そこにいるのは明白だ。
「そうですか! そういうことだったんですね!」
何かに気づいたような意味深長な一言。よほど興奮しているのか、それにしては切羽詰まったようでわざとらしい、オツターの大声だ。
「もう深夜なんですから静かにしてくれないと、うるさいって怒られちゃいますよ」
少しいらだった声でコツコツと靴音を鳴らしながら近づく門番。
「無視しないでくださいよ、オツター、さん……?」
金色の光に包まれて、オツターが消えていった。この光景、数度見たことがある。
「今のは、不帰都市への転移陣……!」
慌てて戻したのか、棚から浮き出ている本には光る風車のような花が挟まれていた。
この後、門番さんは慌てふためいたとか。




