14話 疲れたし眠ろう
次の依頼の内容を聞いたあと、ヨウキ、セイカ、フロディ、ヴァナディでババ抜きをした。
結果はセイカの勝ちで終わり、修学旅行かのような気分を味わって満足したセイカが今マジックを披露している。
「ね、真ん中に入れたはずのカードが一番上に来たでしょ? 望んだものを手に引き寄せることができるんだよ」
勇者は解決するのに相応の能力を付与されるのだとフロディから聞いた流れでマジックを見せ始めた。
だからこれは手品なのか手品風に魔法を使っているのか、もうわからない。手品という概念が存在しない異世界人、フロディとヴァナディは魔法だと信じて疑っていない。青白い光の粒がキラキラとしていて余計に魔法らしいのも要因の一つだと思うが。
「今日はここまでかな」
「セイカ様、わたくしはもう少し見ていたいですわ」
「ごめんね、私、眠くなる前に日記を書かないと」
「そうでしたか……残念ですわ……」
「それにあの二人を見て?」
セイカが示す方にはヨウキとフロディがいる。
ヨウキがあくびをしたのにつられてフロディもあくびをしたところだ。
「ヨウキ様……眠そうです」
「フロディさんだって眠そうだぞ。あくびしてたし」
「そ、そんなことはない……ともいいきれないみたいだ……。普段よりも馬で駆け回る時間が多くて僕も疲れ……」
フロディはハッとした顔になる。
「勇者様の前で砕けた話し方を……すみません」
「いや、全然気にしなくていいぞ。俺もいつの間にか普通に喋ってるからな」
ヨウキよりフロディの方が眠そうだ。ヴァナディは早く帰らないとフロディがその場で寝てしまいそうな気配を感じ取った。
ヴァナディはフロディを連れて自室に帰っていった。
二人が帰ったあと、セイカはトランプを入れた箱を異世界用持ち出し袋に戻して日記を取り出す。
「日記まで持ってきてるのか」
「こんなに面白いことがあるのに書かないわけには行かないよね」
ゲームの魔導書とまでは言わないが、四角に金模様があしらわれた厚めの表紙に大学ノート四〜五冊分のページ数。偶然にもファンタジーな世界観によくあっている。
空白ページを開くと、背表紙が迫っているようでまだ書き込んでいない紙が浮いてくる。邪魔だな、とセイカが思ったとき、横からニュっと手が伸びてきた。ヨウキが押さえてくれたのだ。
「ありがとう。あと三ページしかなくて」
「今日のことをどう書くのか気になったからな。これはついでだぞ」
「そう? じゃあヨウキが立ったまま寝ちゃう前に終わらせなきゃね」
日記をつけ終えた。
あとセイカに残されたことは就寝だけだが、少し躊躇っている。
蘇る昼間の嫌な夢。馬車で気持ち悪くなった状態で寝入ったせいか、悪夢を見てしまったのだ。全てが自分の周りから消えていき、終いにはヨウキが……セイカにとってそれは恐怖でしかない。
「姉ちゃん、手繋いで寝てあげよっか?」
「ほんと!? ヨウキは優しいな~」
「え、あ……冗談だったんだけど」
ヨウキがそういったのを聞いたセイカはしょんぼりした。
「ヨウキが嫌だと思うことはしなくていいから……」
セイカはしょんぼりしている!
「そ、そんな顔するなよ! 嫌とかじゃないから! 手くらい繋いでてあげるって!」
セイカの顔はパアッと明るくなる。
(どうしてこうなった……)
小さい頃ぶりに一緒にベッドに入ることになったヨウキは密かに思った。
セイカは修学旅行気分で異世界にいるみたいですね




