13話 次の問題もなんとかなる!
シリアスになる気配をさせておきつつ、なりません(ネタバレ)
「本題ですが……町で多くの神隠しの報告を受けました」
フロディは勇者の部屋を訪れた主目的を達成するため、切り出す。
「神隠し?」
「誘拐か?」
「お兄様が散歩から帰ってまたすぐ出かけたのは……」
「そう……それまでは私が勇者召喚の儀を執り行う予定でした」
どうやらこの世界に呼び出されたときにフロディの姿がなかったのにも事情があるようだ。
「お兄様が領主の跡取りとして行うべきことを後回しにするほどの?」
ヴァナディは顎に手を当てる仕草をしたあと、思い当たる節があったのか「まさか!」と目を見開いた。
ヨウキもセイカもそっくりな表情になった。はてなマークを浮かべた顔をしている。
「目の前で友人が消えてしまったと言う人に話を聞きました。……金色の転移陣に攫われたそうです」
「そう、やはり……」
「金色の転移陣は死の象徴です。不帰都市の領主に異常が起きたんでしょう……」
フロディの捕捉によると、死んだ人の元に必ず金色の転移陣が現れるそう。
行き先は死者の都市、通称:不帰都市だと言われている。
「ふき……のとう?」
「違う違う。帰らずって意味だよ」
「なんだよ、普通に怖いな!」
「でも好奇心は湧くよね」
「え……?」
信じられないものを見る目をセイカに向けるヨウキ。
「ああでも、流石に私だって片道切符は嫌だよ?」
ヨウキは少し安心した顔をした。
「それで、その帰してくれなさそうな場所に行けっていうのか?」
セイカとフロディ・ヴァナディの間にサッと入るヨウキ。剣でも扱えたら鞘から取り出して構えるんじゃないだろうかという程の警戒ぶりだ。
「警戒なさらないでくださいませ、ヨウキ様! お兄様のことですわ、策があるのでしょう?」
「不帰都市が関わっている旨を人々から聞き終わったあと……風のように地底都市の領主が現れました」
「まあ、地底都市の領主が出てきたのですか!?」
「伝承通りの燃え盛るような毛と体躯……間違いない。そして……グウロという名だと教えてくれた」
「名づけられているんですのね……!」
ヴァナディもフロディもグウロの見た目を伝え聞いたことしかなかった。
グウロは、見るからに暑いあの地底にどれだけ引きこもっていたのだろうか。
「明日から勇者様は彼に乗って移動する約束をしたことと……不帰都市の領主のことを聞きました」
「グウロはなんて言ってたの?」
「……正気に戻せれば生きている者は必ず還すだろうと」
グッと覚悟を決めてフロディは言う。
「しかし、不帰都市の領主を正気に戻せなかったら帰れません」
「お兄様」
「だからやるかやらないかは……」
「お兄様!」
ヴァナディの顔は言っている。そんなことを言ったら誰も引き受けるわけないだろう、と。
「ヴァナディ、本来こちらで致命傷を負っても世界樹の力で全治した状態で元の世界に帰るだけだが、不帰都市にはいかないな……?」
「そうですわね」
「不帰都市からは帰ったものがいないのだから何があるかもわからない」
「ですが……! こちらは世界がかかってますのよ!」
「思い入れもない世界に呼び出して、こちらの問題を解決するまで帰さないと脅し同然のことをしているんだ」
「わかり、ましたわ……っ」
フロディの目の真剣さが伝わったのか、ヴァナディは黙った。
「セイカ様、ヨウキ様、どうしますか?」
空気が重い。
「行くよ~? だって行ってみたいし」
軽すぎるくらいの口調でセイカは言ってのけた。フロディもヴァナディもあんぐりとしている。
「普段なら、行きはよいよい帰りはなんとやら~な所に、帰りの保証有りで行けるってことだよね? 行くしかない!」
「さすが、わけわからない人代表の姉ちゃん」
ヨウキは呆れを通り越して感心している。
「セイカ様、あの、話は聞いていましたの?」
「ヨウキ様も……それでいいんですか?」
二人ともセイカのペースに吞まれてしまったのか、動揺が隠せない。
「聞いてたよ」
「姉ちゃんができるって言うんだからできるんだろ」
「グウロだってなんとかなったんだからできるよ」
「お願いしますわ」
「……わかりました」
「任せて!」
なぜだろうか。
フロディもヴァナディもセイカの一言を聞いて、本当に大丈夫だと思えた。
異世界側の人とセイカの温度差で風邪ひきそう……はっくしょん!




