10話 要塞都市に戻れた
「勇者様を乗せた魔法馬の車がお戻りになりました」
「報告どうもありがとうございます」
調べものをしていたヴァナディの側近、オツターは門番の報告を受け、今のところ大した収穫のない作業を中断して立ち上がる。出迎えをヴァナディから頼まれているのだ。
領主館の前までたどり着いた魔法馬の車。内部から見えたのは、近衛兵がずらりと並んで一直線の道を作り出し、その道のド真ん中を進んで行く光景だった。正直少し怖い。
ようやく馬車が止まり、ドアが開く。
セイカとヨウキが降りると、見た覚えがなくもない眼鏡の青年が近くに来る。
「おかえりなさいませ、勇者様方。案内を任されております、オツターです」
「セイカです」
「ヨウキです」
「「よろしくお願いします」」
礼儀正しくお辞儀をするオツターに、自己紹介と挨拶を返す二人。
「こちらへ」
オツターに連れられ玄関から入っていく。もちろん玄関にもこの家に仕えている人たちの出迎えがあり、外にいる兵だけで終わったと油断していたヨウキはかなりビックリしていた。
セイカは抜かりなかったので余裕のスマイルを提供している。何人かの男性が落ちたような……。
出迎えの列が終わり、しばらくガラスのようにピカピカなタイルの廊下を歩く。
「セイカ様、ヨウキ様、昼食などはどうされましたか?」
オツターは申し訳なさそうに聞いてきた。きっと食べてないと思ったのだろう。
「持ってきたおにぎりを食べました」
「お、おに……?」
「う~ん、米……イネ科の穀物と具材を合体させたおいしいもの?」
「姉ちゃんざっくりだな」
「ほう、興味深いですね。なんにせよ、昼食抜きでなくて良かったです。
ヴァナディ様はああ見えてかなり焦っていまして。お二人の名前を聞きそびれたり、昼食代などをお渡しし忘れたりと……」
「気しなくていいですよ。ね、ヨウキ」
「ああ、気にしなくていい。……です」
ヨウキの取ってつけたような「です」に思わずオツターも表情が緩んだ。
「オツターさん、明日は魔法馬の車はいりません」
「そのように仰せつかっております」
「え、だれに?」
「次期領主のフロディ様にです」
ヨウキは説明された上で(いや、それだれ……)と思った。
そんな会話をしていると部屋の前に着いた。
「こちらのお部屋がヨウキ様のお部屋、その隣のお部屋がセイカ様のお部屋になっております」
「宿の心配はなかったな、姉ちゃん」
「野宿は杞憂に終わってよかった〜」
「間もなく夕食になります。時間になりましたら使用人が呼びに来ますのでそれまではお部屋でおくつろぎください」
オツターは軽く頭を下げる。二人が部屋に入っていくのを待ち、扉が閉まった数秒後に頭を上げる。
「前回の勇者様に比べて随分と雰囲気が緩いというか……プッ」
とても小さな独り言は誰にも聞かれることはなかったが、順調ではなかった調べ事へのやる気はひょっこりと顔を出したようだ。
「そういえば……コメという物が出てきた昔の詩があったような」
前回の更新から一か月経っていたことにビックリです。
時の流れって早いですね




