めがね村とこんたくと村と目いしゃさん
あるところに、小川をはさんで二つの村がありました。
川の右は、めがねをかけた人たちがくらしていたので「めがね村」とよばれ、川の左は、こんたくとをつけた人たちがくらしていたので「こんたくと村」とよばれていました。
めがね村の村長さんはこんたくとがきらいで、こんたくと村の村長さんはめがねがきらいだったので、二つの村はなかよくできませんでした。
さて。
川の上には、二つの村をまたぐように小さなおうちがたてられていました。
このおうちには、一人の目いしゃさんがすんでいて、二つの村の人たちは、みんなこの目いしゃさんにみてもらっていました。
ちなみに、この目いしゃさんは、とおいとおい村からやってきた人なので、どちらの村の人でもありません。
目いしゃさんは、心の中では二つの村になかよくしてほしいと思ってました。
しかし、どちらの村の人でもない目いしゃさんには、どうすることもできないでいました。
めがね村に行っても、こんたくと村へ行っても、村長さんにあいてにされなかったからです。
目いしゃさんは、いつもなやんでいました。
ある日のことです。
目いしゃさんのもとに、めがねをこわした女の子と、こんたくとをなくした男の子がやってきました。
二つの村の子がいっしょの日にやってくることは、めずらしいことです。
目いしゃさんは、あることをひらめき、二人にそれぞれ、おねがいをしました。
めがね村の女の子が村へかえると、村長さんはたいそうおどろきました。
なぜなら、女の子がこんたくとをつけていたからです。
こんたくと村の男の子が村へかえっても、村長さんはたいそうおどろきました。
なぜなら、男の子がめがねをかけていたからです。
実は、目いしゃさん。
女の子と男の子が、おたがいのことをすきなのをしっていました。
そこで、女の子にはこんたくとを、男の子にはめがねをあたえて、それぞれの村の村長さんとよく話をするように言ったのです。
つけなれないこんたくとをしてまで、また、かけなれないめがねをしてまで、なかよくしてほしいとおねがいする二人のあついきもちにおされ、二人の村長さんは、なかなおりしました。
こうして、二つの村は一つにまとまり、めがねをかけようが、こんたくとをつけようが、どちらでもすきにしていいことになりました。
目いしゃさんは、おおいによろこびました。
それから、おとなになった女の子と男の子はけっこんし、子だからにもめぐまれ、すえながくしあわせにくらしましたとさ。
めでたしめでたし。