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QRコード

作者: 青山済

「好奇心もほどほどにしとかないとね。」


新宿のベローチェで、Tさんはそう呟いた。


Tさんは、SNSで知り合った25歳の会社員女性。

都市伝説や噂話の好きな私に面白い話を聞かせてくれるといい、久しぶりにカフェで会ったのだった。


「ステッカーって知ってる?掲示板とか街灯とか、ちょっと見るとかなりの数のステッカーが街中に貼られてるんだよね。誰が貼っているのか分からないけど、寂れた駅にも結構あるのよ。」


Tさんも都市伝説好きで、相撲取りのステッカーが渋谷で増殖した事件をきっかけに、たまにチェックするようになったのだという。


「大抵は単なるアルファベットか気持ち悪いオリジナルキャラクターなんだけど、中にはQRコードが印刷されてるやつもあるのね。ドクロ型のアイスクリームっていう、悪趣味なステッカーに印刷されてるのをうちの近所で見つけたのが最初なんだけど、同じのが新宿や池袋にも貼られているのを見て、つい。」


QRコードを読み取ってしまった。


読み取ったスマホの画面には、一言「このステッカーの真実を知りたいですか?」というダイアログが表示された。Tさんは、読み取った勢いでそのまま「はい」ボタンを押してしまった。


「その時は『ありがとうございます。』って表示されて、それだけ。しばらくは何事もなかったんだけど、一週間くらい経った時かな、家に変な封筒が届いたの。」


その封筒は差出人不明だった。B5の封筒で、振ってみると中に小さな紙のようなものが沢山入っている気配がした。思いきって開けてみると中には……。


「あのステッカーが入っていたの。20枚くらいだったと思う。ステッカーの他に紙が一枚入ってて、『このステッカーを他の人にも読ませれば、あなたは救われます。』って書かれてた。」


怖くなったTさんは、エンジニアをしている友人に相談した。


「彼にスマホを調べてもらったら、『Skull』って不審なアプリがインストールされてたから、データのバックアップを取ってスマホを再初期化してもらった。どうもあそこで『はい』を押しちゃったから変なアプリをインストールさせられて、住所を抜かれてたみたい。それから、ステッカーのQRコードは一枚一枚微妙に違っていて、どれが読まれたのかをチェックされてるんじゃないかって。」


送られてきたステッカーを貼っちゃう人もいるんだろうね、とガムシロップの蓋を眺めながらTさんは言った。


ステッカーを送られてからすぐ、Tさんは引っ越した。引っ越した後にステッカーが送られて来ることはなかった。


ただ、今でもたまにQRコードを読み取りたくなってしまうのだという。

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