未来の姿
こんなしんどい朝は迎えたくないな。
そんなことが俺の頭に、ふと浮かんだ。
いつも通り学校に行き、家に帰ればすることは同じ。
青春時代になんでこんなことしているんだろう? もう、高校三年生だっていうのに、そんなこと考えちまう。
しかし、今はそんなこと考えてる暇もない。早く学校に行く準備しないと……
なんだろう。凄い眠い。学校から帰ってきただけなのに……
もう駄目だ。布団をひいて寝よう。
……なんだ。今日の夢はいつもと違った。なんだかとても印象に残る夢だった。
その夢の中で、俺は喋ったこと。いや、見たことすらない女性と話をしていた。
だけど、その人と話をしている俺は、自分でもビックリするくらいの笑顔で笑ってて、生きているどんな時間よりも楽しくて、この夢がいつまでも続けばいいと願った。それくらい楽しい夢だった。
それが三日も続いた。
同じような夢を三日も見ることに不思議な気持ちを覚えた俺は、夢の中で、女性に「誰ですか」と尋ねた。
「…………」
でも、女性からの返事はない。やっぱり夢の中の話か……少し残念だ。
目覚めた後、そんなことを色々考えている内に、いつの間にか空は暗くなり、日も変わろうとしてるじゃないか。
だが、そんなときに俺は友達にこの話を話したい衝動に駆られた。
そう考えると行動は一つだ。俺は携帯に手を伸ばし、友達の晃を俺の家に呼んだ。
「どうした勇馬。こんな時間に?」
「いや、実はな……」
俺は晃が来た途端に、夢の話を一心不乱に話した。
晃も、俺が真剣に話すことに驚いたのか、思ったよりも真剣に話を聞いてくれた。
「それ、夢の話だろ? 妄想が膨らんでるだけだって。そんなことで悩んでる暇だったら現実で恋愛しようぜ」
やっぱりな……真剣に聞いてくれたのはありがたいけど、どう考えてもまともな話じゃないもんな。仕方ないか……
「そんな落ち込むなよ。妄想の話じゃなくて現実の話ならいつでも相談のるからさ。じゃあ、明日バイトあるから今日はこれで帰るな」
「あぁ……夜遅くに悪かったな」
それからも、この夢が消えることはなかった。
毎日見続けることはなくなったが、それでもたまに、女性は俺の夢の中に現れる。
その夢は、俺の受験勉強すら妨げた。でも、受験勉強をしていかないと大学に行くことはできない。出来るだけ、その夢を忘れるように努力した。
不思議なものだ。受験勉強をしている間。その夢を見ることはなかった。
夢を見なくなった俺は、不思議と肩の荷が下りたような感覚になり、受験勉強も捗った。そのお陰なのか、大学に合格することが出来た。
これは後から知った話なのだが、晃も俺と同じ大学を受験していたようだ。その夜は二人で盛り上がった。
大学に進学した後も、その夢を見ることはなかった。
だが、そんなときに出来事は起こるものだ。俺は、初めてそう感じた。
俺は、大学終わりに晃と街中を歩いていた。ただブラブラしたい。そんな目的しかなかった俺の眼に、驚くべき光景が飛び込んできた。
「どうした? 急に立ち止まって。いい女でも見つけたか?」
俺は思わず固まってしまった。そして、嘘じゃないか眼を擦って確かめたりもした。
「いや……なんでもない。行こう」
そんなはずはない。きっと見間違いだ。そんなはずはない……
駄目だ。とうとう一日寝ることが出来なかった。このままじゃ体がもたない。
ちゃんと確かめよう。俺だって男だ。
「お〜い。帰ろうぜ」
いつものように声をかけてくれる晃。でも……
「ごめん。今日はちょっと用があるから無理だわ」
「そっか。じゃあ仕方ないな。また明日!」
そうだ。今日は帰る事はできない。俺は確かめなければならない。
そうじゃなきゃ納得できそうもない。
俺は昨日と同じ場所で眼が痛くなるくらいに辺りを見渡した。
これほど何かに真剣になることは生まれて初めてかもしれない。受験勉強よりも頑張った。
時間だって過ぎるのが早いように感じる。そう思っていたとき、俺の眼に、昨日と全く同じ光景が飛び込んできた。
それは……夢の中で何度も見た女性の姿だった。
いや、その女性ではないのかもしれない。でも、嘘じゃないかというくらい瓜二つだった。
俺は走った。周りも気にせず走った。そして、女性を呼び止め、声をかけた。
周りの人は、ナンパしてるんじゃないかという眼で俺を見る。でも、そんなことは今の俺には関係のないことだ。
「えっ?」
よかった。反応してくれた。なぜかそれだけで嬉しい。
「一緒にご飯でも食べに行きませんか!?」
「あのぉ……これってナンパですか?」
「あはは……そんなところです」
やっぱりいきなりは不味かったかなぁ……
「う〜ん。分かった。暇だしいいよ!」
よかった。いい人だ。普通なら断る。
俺達は初対面なので、最初はギクシャクしたものの、話を続けていくうちに、どんどん意気投合してきたように感じる。
そのお陰なのか、メールアドレスを聞くことが出来た。二十歳の女性で、名前は唯。いい名前だ。
「じゃあ、今日はこれで帰るね!」
「うん。いきなりごめんな」
「別にいいよ。楽しかったし。じゃあ、またね!」
俺達は飯を食べた後、お開きとなった。
そして、家へ着いた俺は、迷惑だと思いながらも、唯にメールするために携帯を取り出した。
いきなりのことだから何をメールしていいのか迷った。
ふとその時、俺の頭の中に、あの夢の出来事の一つが思い浮かんだ。
夢の中の俺達は遊園地にいて、コーヒーカップを一緒に回して、ジェットコースターにも一緒に乗って……あの時は叫んだりもしたなぁ。観覧車に乗ったときはちょっとドキドキした。
そうだ。遊園地に誘おう。きっと楽しい。
俺は、唯に遊園地への誘いへのメールを送った。
これもまたいきなりの話だ。断られても仕方がない。だが、俺の携帯に返ってきた返信は、俺からするととても喜ばしい返事だった。内心、とてもホッとした。
約束の日、当日。
俺は、約束の時間よりも三十分前に着く予定だ。当然、俺が先に着く予定だったのだが、約束の場所に、唯はいた。いつからいたのだろうか……俺は思わず待ち合わせ時間を間違っていないか腕時計を見た。
「ごめん! 早く来たつもりだったんだけど、遅かったかな?」
「別にいいよ。私が早く来ただけだから」
「じゃっ、行こうか!」
文句一つ言わずに、俺の手を引いてくれた唯に、少しドキッとした。
俺と唯は、今日の一日。色々な乗り物を楽しんだ。当然、コーヒーカップも、ジェットコースターも、観覧車にも乗った。
唯と色々な乗り物に乗って、唯の笑顔を見て、ドキッとする自分がいて……俺は自分の気持ちに気づいたんだ。
俺はいつのまにか唯のことが好きになってた。夢とかそういうのは関係ない。
俺は、唯のことが好きになっていたんだ。
遊園地を出た後、俺は勇気を振り絞って唯を近くの公園に行こうと誘った。
「ちょっとベンチに座って話しよう」
「うん。いいよ」
俺と唯は真夜中の公園のベンチに座った。
俺は、自分の手をさり気なく唯の手の上に置こうとした。
意外と唯は嫌がらなかったようで、何の文句も言わず手を置かせてくれた。
「どうしたの急に?」
「駄目かな?」
「ううん。いいよ」
その言葉に、俺は少し安心した。
それと同時に、俺には一つの決心がついた。
そう考えると体も勝手に動く。
俺はベンチから立ち上がり、唯の真正面に動いた。
「唯。真剣に俺の話を聞いて欲しいんだ」
「急にどうしたの?」
不思議そうに俺を見る唯。
どうやらまだ、俺の気持ちには気づいていないようだ。
「俺、唯と初めて出会ったとき、いきなり唯を誘っただろ? 実はあれ、理由があったんだ。笑わないで聞いて欲しい」
俺は唯に対して隠し事はいけない。そう思ったんだ。
だから、俺は夢のことを全て話した。これが全てのきっかけだから……
すると、唯からの笑い声が聞こえてきた。
確かにおかしな話だ。自分でもそう思う。笑ってしまうのも無理はない。
「あはは。勇馬君らしいや」
俺の勘違いだった。唯の笑い声は馬鹿にした笑い声じゃなくて……
唯の純真無垢な言葉から、そんな気持ちが伝わってきた。
「でも、俺の中での唯は夢とかそういうの関係なくて……ただ唯の純真な笑顔を見てると嫌なこととか全部忘れられる……そんな唯のことが俺は好きだ!」
気づくと俺は唯を抱きしめていた。
「……えっ?」
「……唯のこと大事にしてくれる?」
「唯のことは大事にするし守る。当たり前だろ?」
「うん……大事にしてね。約束だよ」
俺と唯は指切りをした。
場のムードもあったのだろう。俺と唯は軽くキスをした。
その後、俺と唯は家に帰った。
そうだ。晃にも伝えとこう。一応、晃にも夢のことを話したしな。
俺は携帯を取り出し、晃に電話した。
「こんな時間にどうしたんだ浩太?」
「実はな……」
俺は晃に今までのことを全て話した。
「本当にそんな話ってあるんだなぁ……羨ましいよそんな出会い」
そう言った晃から笑い声が聞こえる。
「晃なら出会えるだろ絶対」
「勇馬みたいな出会いは無いってこと。夢から始まる出会いなんてよ」
そうだよな。こんな出会いが出来た俺はきっと幸せ者なんだろうな。
「おい勇馬。絶対に彼女を離すなよ。夢から出会いが始まって、夢のように出会いが終わるなんて、そんな笑えない冗談聞きたくないからよ。じゃあ、そろそろ寝るわ。勇馬の彼女、いつか紹介してくれな!」
分かってる。絶対に離さない。俺は唯と指切りして約束したもんな。
「あぁ。自慢の友達として紹介してやるよ。じゃあ、夜遅くに悪かったな。おやすみ」
さぁ。家に帰って寝るか。
今日は色々あったもんな。唯に告白したときの事を考えると、ずっとドキドキしてる。
だからか。全然眠れない。ドキドキして全然眠れない……でも、こういうドキドキが続くなら眠れなくてもいいな。なんだかいい気持ちだ。
それにしても俺が見たあの夢はなんだったんだろう。
本当に夢だったのだろうか。いや、きっと違う。
俺が見た夢は、未来から贈られてきた俺の未来の姿だったんだと思う。
俺は、そんな自分の未来を大事にしていきたい。
唯の純真無垢な笑顔を、これからも大切にしたいから。
原作者。イエーチ(友達)
文章編集。推敲。HERON
初めて物語を書きましたが疲れました。
でも、自分の作った作品に愛情をもっています。by.イエーチ
初めて人に物語を考えてもらった作品ですが、なんだか自分で考えて書くよりも緊張しますね。とても新鮮でした。by.HERON




