はじまりのきっかけ
テレビをつけると、最近話題の『ファースト』についてのニュースが流れていた。アメリカとか中国とかオーストラリアとかイギリスとか・・・とにかく自国や自民族が大切で他の人たちなんて邪魔だから差別していいという風潮が世界中に広がっているらしい。
私はなぜそんなことをする必要があるのかさっぱりわからなかった。この時代においてまだそんな差別などともめていることが幼稚に思えて仕方がなかった。まあ、今はそんなことを考えている場合ではない。学年では成績優秀の少女として、あしらわれている私が学校に遅刻しそうなのだ。その理由は何を隠そう、寝坊である。そんなことで遅刻して、クラスのみんなに笑われたくないのだ。それでも、きっちりと身なりを整えてから家を出た。次の電車の時刻まではあまり時間がないので、走る、のではなくて、早歩きをした。それはなぜかというと、走って汗をかきたくないといくのと、遅刻しそうなところを周りの人たちに悟られたくないからである。なんとか電車に間に合って乗ることができた。しかし、この時間は、通勤ラッシュで満員電車だった。この調子だと、汗を掻かないで学校に辿り着くのは難しいだろう。季節は夏の7月。もうすぐ夏休みを控えた高校生女子一年。だからと言って、油断するわけにはいかない。私は理想を貫いていく。学校にたどり着いたら、まず、鏡を開いて身なりを整えた。チャイムがなり、朝のホームルームをし、いつもどおりの学校生活をおくる。
下校時間。私は部活に入っていないので、授業が終わったら、すぐに帰宅をはじめる。私は、高校から一人暮らしで、アパートに住んでいるので、帰りに近くのスーパーによって今日の夕御飯と明日の朝御飯とお昼の弁当の分の食材を買ってから帰る。帰ってすぐに夕御飯を作って食べる。それから、机に向かって勉強をはじめる。寝るまえにお風呂に入って、1日の疲れをとって、牛乳を一杯飲んでから布団につく。これが私、天城結衣のだいたいの生活スタイルだ。
次の日、事件は起こった。なんと、日本の自衛隊がクーデターを起こして、街中に戦闘機や戦車を配備して、東京を占拠したのだ。市民は、皆外に出ることができず、私も学校に行く支度はしたとはいえ、部屋から出ることができなかった。通信も占拠され、だれにも繋がらない。そんなときに、玄関のドアを叩く音がした。恐る恐るドアをゆっくりあける。そこには、銃を持った自衛隊員がいた。
「お嬢さん、一人かな?」
隊員の問いに私はうなずく。
「じゃあ、手を縛らせてもらうから、後ろ向いて。」
私は、後ろを向くふりをして、足で隊員の顔を蹴った。そのすきに、銃を奪い、逃げ出した。
「こちら、佐藤。女子校生に銃を奪われました。現在、北東方向に逃走中です。」
「何!?何してるんだ。早急に捕まえろ。応援をやるから、見失うな。」
「了解!」
どうやら、相手はかなり焦っているらしい。銃を奪われたんだから当然だけど、簡単に奪われる自衛隊員もどうかと思う。とにかく今は、逃げるしかない。捕まったら何をされるかわからない。角という角を曲がり続けて相手をまく。そんなとき、突然、横に引っ張られた。
見覚えのある相手だった。学校にいくと、毎回、かまってくる女子だった。たしか名前は、天川きららだったはずだ。私が声を出そうとした瞬間、手で口元を押さえられる。まるで私は壁ドンされてるような状態になったが、きららは私ごと草むらに倒れた。ー何をするの?ーという意を伝えたが、いっそう増して強く口を押さえられた。足をバタバタさせていると、そっちまで足で固められ、動けなくなった。ちなみに、私より、きららのほうが体格的に大きい。そんななか、近くを自衛隊員が走り去っていく。さっきの隊員に加えて、応援で駆けつけた隊員もいて、人数が増えていた。しばらくして、拘束状態から解放された。
「もう大丈夫なはず。これからどうしようか?」
と、きららが尋ねてきた。
「私についてきて。もうこの日本もダメ。世界なんてなおさらダメ。私たちが世界を変えよう。だから、私がつくる組織に入って。人が平等に人権を脅かされることのない世界を。そうだね、組織名は、ヒューマンフェア!」
きららはおどろいていた様子だったが、私の要望に答えてくれた。
「わかった。私はあなたについていく。一緒に新しい世界を創造しよう。」
二人はうなずきあって、握手を交わした。