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92:ラストバトル 4

 春人とハミルトン、両者の剣戟はかつてこの世界で見たことのないほどの熾烈を極めた。


「くたばれジーークッ!」


「その言葉、そのままそっくり返してやろう、ハミルトン!」


 金属同士がぶつかる音を何度も立てながら二人の高周波ブレードは交じり合い、時に鍔迫り合いが起きている。それは嵐のように激しく、止まることを知らない。


 互いの攻撃は凄まじく、上下左右あらゆる方向から斬撃が飛んでくる。それを時に防ぎ、時には躱し、そしてまたある時には反撃を行う。二人の斬り合いはそれの繰り返しである。


 この世界での名の知れた剣豪がこの勝負を見たらきっと、自分たちとは次元の違う戦いだとでも言っていただろう。それほどまでにこの二人の戦いはバケモノじみた戦いであった。


「なぜお前はそこまでしてこの世界を破壊しようようとするんだ?」


 激しく剣が交じりあう中、春人はふとハミルトンに尋ねた。


「愚問だな。そんなのはお前も知っていることだろう。仲良しこよしの社会など生温い。人も他の生物と同様過酷な生存競争の中でこそ真の生を実感できる。人の歴史とは争いの歴史だ。奪い奪われ、殺し殺され、ありとあらゆる闘争心こそが人の本質とでもいうべきだろう。現に歴史がそれを証明している。俺は俺達はこの力でもって世界を改変し、人が本来持ちうる闘争心をむき出しにして生き抜く弱肉強食の世界を作り上げる! そしてその頂点に君臨するのが俺達死神部隊だ!」


「だからといって全く無関係なこの世界の住人を巻き込む事は無かっただろう」


「関係なくはない。たとえ世界が違えどもそこに人間が存在する限り争いの種が潰えることはない。それはお前もよーく身に染みていることだろう。お前も俺と同じでこの世界での戦争に参加し、そしてそこで戦いの中で生を実感したのだろう?」


「くっ……! この戦闘狂め。どこまで歪んでやがる」


 一瞬春人は苦虫を嚙み潰したような顔をした。それもそのはず、ハミルトンの言う事に身に覚えがあったからだ。ウルブスやベルカ帝国での戦闘に介入、そこで幾多の敵を葬り味方を勝利へと導いてきた。


 その戦いの中で確かに春人は生きていると実感することもあった。


「歪んでいる? そうさせたのはお前だろう? 俺達を導いて誰よりも相手を殺し、死神の異名を欲しいままに手に入れたお前が、ジークという存在が俺をそうさせたんだ。俺も、お前もこの戦いの中でしか生きていけない……。だから俺はこの力でもって世界を俺自身が住みやすい世界へと変えてやる」


 つい先程までのご高説は何処へやら、ハミルトンはその本心だと思われる事を言い始めた。


 曰く自分がこうなったのも全ては死神として君臨していた春人のせいだと言い、更には世界を変えようとする理由も結局は自分勝手な理由でしかなかった。


 それらを聞いた春人は敵意むき出しで睨んでいたハミルトンに今度は何とも哀れな奴だろうという視線を送り始めた。


「お前は……なんて……」


 力に溺れ、なんて哀れな存在なんだ。春人はそう言おうとした途端ハミルトンはどこからか取り出した何かのスイッチを手にしたかと思うと有無を言わずに無言でそのスイッチを押した。


 すると島中に敵襲を意味する警報とは別の新たな警告音が響き渡った。


「なんだこの音は!? いったい何が起きてる?」


 どこからかそんな声が聞こえてきた。それはきっと春人に加勢しに来たこの世界の兵士の誰かの声だろう。


「なあジーク、このスイッチが何のスイッチだか分かるか? 大方察しの良いアンタなら分かる筈だ」


「……まさかそいつは核の発射スイッチか!?」


「正解、ご名答! これはこの島には配備してある全ての核弾頭搭載型の弾道弾の発射スイッチだ。今から6分後にはミサイルは発射される。標的はこの島を除くこの世界全てだ! 今から6分後に世界は変わる! 俺の手によってな!」


 春人の予想通り、しかもそれは最悪の予想シナリオ通りの結果だった。ハミルトンの押したスイッチは核ミサイルの発射スイッチだった。それを本物だと思わせるようにあちこちのスピーカーから「今から○○秒後にミサイルが発射されます」という無機質なアナウンスが聞こえてくる。


「どこまで畜生なんだ貴様は。力に溺れるだけの哀れな奴かと思えば……」


 多少は予測していたとはいえ、実際に目の当たりにすると内側から何とも言えない怒りが込み上げてくる。その証拠に春人の顔は歪み、高周波ブレード握る手はより一層強くなった。


 相手も自分も銃はまともに効かないし、効果がある銃を取り出す暇なんてない。このブレード1本で決着を付ける必要がある。


 春人は内側から込み上げる怒りを何とか抑え込み、ただ一つハミルトンを殺し奴の野望をどうにかして防ぐことだけを考え始めた。


「こんな緊張感のある戦場は久しぶりだな。なんだその顔? ミサイルの発射を止めたいっていった顔だな。この島のミサイル発射の制御システムはこの俺とリンクしている。つまり俺がもし死ねばミサイルは発射されない。アンタが俺を殺す事が出来ればアンタの愛するこの世界は救われるって言う事だ。まあ、もし仮に殺す事が出来れば……な?」


「あぁ、また前みたいに殺してやる。お前を殺して全てを終わらせる」


「今度はアンタが死ぬ番だ。さあジーク、過去最高の……いや、人生で一番最高な6分間を過ごそうぜ?」


 ハミルトンは両手の二刀流で握っている二対の高周波マチェットを再度構えなおしてそう言った。


「ハミルトン……今度こそこれで最後だ……。ケリを付けよう。だから……いざ、参る!」


 春人も高周波ブレードを今一度しっかり構え、ハミルトンと正真正銘最後の決着を付けるために対峙しなおした。

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