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48:撤退する死神部隊

 春人とつかの間の戦闘を行ったサミュエルとハミルトンを回収した死神部隊のオスプレイは機体を加速させ速やかに戦域を離脱していた。


「まさか新たに現れた転移者がジークだとは流石に予想外だった」


 機内に設置されているシートに腰かけながら現死神部隊の隊長であるハミルトンはひとりボソッと呟いていた。


「隊長、ご無事で何よりです」


 ハミルトンに声を掛けてきたのはサミュエルだった。彼はハミルトンと別れ、そのまま予定していたオスプレイとの合流地点へと向かって先にオスプレイへと搭乗していた。


「サミュエルか、見ての通りこのローブと強化外骨格をやられたよ。そう言えばお前はジークとは初対面だったな? どうだった? アイツと戦った感想はどうだった?」


 ハミルトンはサミュエルにそう訊ね、少し考える仕草をしてからサミュエルは答えた。


「そうですね、一言でいうならば彼はバケモノ……そう表現した方がしっくりくるでしょう。至近距離で自爆しないギリギリのところでグレネードランチャーを撃ったり、銃弾を高周波ブレードで弾いたりなど普通のCFコンバットフィールドのプレイヤー基準で考えれば彼は規格外もいいところでしょう。だが久しぶりにゾクゾクした戦いを楽しめました。次にまた会う時はぜひ強化外骨格を装備してから再戦したいところですね」


 サミュエルは今の一般市民に紛れ込むかのような格好や普通の戦闘服では春人とまともに戦えない事を感じていた。もしあのままハミルトンが介入せずに二人が戦い続けていたらサミュエルは春人に敗れ、この場には居なかっただろう。


 そう二人が話しているともう一人の強化外骨格を装着した人間が近づいてきた。先程ハミルトンが戦線を離脱する際にM2重機関銃で春人の足止めをしていたのは彼である。


「隊長、それとサミュエルさん二人ともお疲れ様です。さっきの相手ですが自分の見間違いでなければあれは前隊長のジークですか?」


「あぁカズマか、そうだあれは確かにジークだ。まさか今度はアイツが転移させられてくるとはな」


 ハミルトンは頭を抱えながらもう一人の死神部隊のメンバーのカズマに向かって答えた。


「ジークが相手では今まで遭遇した転移者のように仲間に引き込むのは無理ですよね?」


 カズマがそうハミルトンに訊ねるとハミルトンは暫し時間をおいてから答えた。


「アイツを仲間に引き込むのは無理だ。アイツからすれば俺達は裏切り者だ。もともとこの世界に来る前からアイツとは敵対していたんだ。それがこの世界でも敵としてアイツが現れただけだ。だから今までのように仲間に引き込めなかった転移者同様にアイツも殺すしかない」


 どこまで行っても春人は自分たちの敵だと言ったハミルトンは今まで彼等が遭遇した転移者と同じように春人も殺害するしかないと言っている。


 そしてハミルトンに続けて今度はサミュエルがひとり笑みを浮かべながら呟いている。


「今度の敵は今まで以上に楽しめそうだ」


 その言葉から彼が相当の戦闘狂であることが伺える。そしてそれは死神部隊のメンバー全員が知っていたことだ。


「ほんとにサミュエルさんは手強い相手と戦う時は楽しそうですよね?」


 ふとカズマがそう言うとサミュエルが楽しそうにしながらカズマに答えている。


「そんなふうに見えるのかね? カズマ君」


「ええ、それはもう最高にいい顔をしていますよ。流石は死神部隊一の戦闘狂」


「ははは、君もなかなか言うねぇ。確かにジークは手強い相手だった。私が冷や汗を流すほどにね。そんな相手と久しぶりに戦えるんだ、楽しまなきゃ損じゃないか。どうだい? カズマ君も私と一緒にジークに挑んでみないかね?」


「いいえ、俺は今まで通りにサポートに専念させてもらいますよ。俺は前衛に向いていませんからね」


「そうか、それは残念だ」


 カズマとサミュエルが談笑しているとハミルトンが立ち上がり、二人の会話を止めるようにして割って入った。


「さて、楽しい楽しい異世界生活も終わりだ。今度はジークが相手だ、今までの様にはいかない。我々には大きな目標が有るのだからな。その障害になるであろうジークは真っ先に排除する、他に立ちはだかる奴等も同様にだ」


 ハミルトンがそう言うとサミュエルとカズマはそろって「「了解」」と答え、ハミルトンはそのまま操縦席の方へと歩いて行った。


「機体の調子はどうだ?」


 操縦席に向かったハミルトンはオスプレイのパイロットにそう聞いた。


「機体の調子は万全、どこかの無茶な使い方をする国のパイロットのような使い方でもしない限り墜落なんてしないよ。私を誰だと思ってるんだい?」


 そう答えた操縦席に座ってオスプレイを操縦しているパイロットはヘルメットで顔は見えないが、体つきで女性であることが伺える。


「ああ、そうだったなミシェル、お前の操縦の腕は部隊内一だからな。それよりも予定変更だ」


「なんだい? このまま他の奴等を回収してベルカの首都に戻るんじゃないのか?」


「その予定だったがベルカに戻るのはキャンセルだ、このまま仲間の回収が済んだら例の場所に移動だ。ベルカの連中との契約は今日付けで破棄だ。利用価値の無くなった連中といつまでも雇われてやる道理なんて無いからな」


「例の場所……あそこはまだ建設中じゃなかったのかい?」


「完全には完成していないが主要施設はもう使えるよう様になっているそうだ。今後はそこを我々の活動拠点とする。向こうには既に連絡済みだ。それにあの兵器も配備が済んだようだしな」


「あいよ、進路をそっちに変更するよ」


 オスプレイの操縦席ではそんなやり取りがされ、その後死神部隊は別地点で元の依頼であったベルカの皇女の捜索を継続していた残りのメンバーを回収して彼等はベルカ帝国へと帰投することは無かった。

週末にそこそこ書けたので次は明日の夕方5時に投稿予定です。

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