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39:戦闘準備 2

 ユーリとの談笑を終えた春人は酒場を後にし、ユーリは別の場所で作業があるとの事でここで別れ、春人はウルブス駐屯地に足を運んでいた。今ではここは侵攻してくるベルカ帝国に対する防衛の最重要拠点になっている。故に以前よりも警備は厳重になっている。


 そこで守衛に声を掛け、春人はハインツの元を訪ねた。


「ハルト君か、どうしたんだい?」


 ちょうどお昼時もあってかハインツは自身の私室で簡単な昼食を取っているところに春人はお邪魔してしまった。


「スミマセン、食事中にお邪魔してしまったようですね。後で出直します」


 邪魔してはいけないと思った春人は出直すと言ったがハインツは出ていこうとした春人を止めた。


 今ではウルブス防衛の総指揮を務めているハインツだがその苦労を他人に微塵も感じさせない姿は正に司令官として立派な姿である。


「いいや、構わないさ。もう済むところさ。それよりも私に何か用が有って来たんじゃないのかい?」


 ハインツは空になった先程まで昼食が乗っていた皿をトレーに戻しながら春人に私に用があったのではと訊ねる。


「先程ユーリからある話を聞いてその確証を得るために来ました。敵が南から侵攻してくるというのを聞いたのですが本当ですか?」


「随分と情報を聞きつけるのが早いな。確かに偵察に出た竜騎兵が山岳部を避けてここに向かってくるベルカ帝国の大軍団を発見したそうだ。場所はだいたい……この辺だ」


 ハインツは室内の机の上に広げられている地図を使って説明を始めた。


「この山岳部を迂回するとなるとウルブスに攻めて来る方角は必然的に南からになってくる。指揮所に行けばもっと詳しい情報が有るのだが、私の私室では情報になる物は置いてなくてね」


「いえ、方角が分かればそれだけでも十分です。それで、連中がここに到達するまでに予想される日数は?」


 今春人が求めている情報は敵の部隊構成や位置情報ではない。どの方角からどれくらいの時間でここウルブスに到達するのかが知りたかった。


「ここまで到達するのに現在の情報から推測すると約1週間。それまでに彼等はここを攻めに来るだろう」


 決戦まで残り約1週間、それまでに全ての防衛準備を終わらせなければいけない。時間は有るように感じるが実際は残り僅かだ。


「分かりました。そこで一つお願いがあります」


「お願い? なんだね?」


「少しばかり人員を貸してください」


 春人は単刀直入にお願いした。


「人手を貸すのは構わないが、いったい何をしようというのだい?」


「連中を迎え撃つのに必要な罠を設置するのにどうしても人手が必要でしてね。一人でやるにはどうしても時間が掛かるものでしてね」


 そのお願いにハインツは考える間もなく答えた。


「分かった、手配しよう。それでどこに集めればいい?」


「南門です。そこに集めてもらえれば後は俺の方で指示を出します」


 これで春人の用事は済んだ。後はハインツに人手を集めてもらって罠を設置する作業に当たるだけだ。


「それでは下の者に指示を出しておこう。さて、まだ私の個人的な時間はまだ残っているんだ。少しばかり相手をしてくれてもいいかな?」


「俺もこの後の作業に掛かれなければやることが無いのでお付き合いしますよ」


 その後二人はハインツが指揮所に戻る時間が来るまでの少しの間、今後のことについての方針を話し合った。


 他の街に逃げられた者はともかく、何らかの理由によって逃げることが出来ない住人をどうするかと聞けば、ハインツはすぐに答える。


 避難できない住人はここの兵士の誘導のもと、市内の商館や商館所有の空き倉庫などに避難させるそうだ。敵の侵攻の際にそこが狙われるのではと春人が指摘すればハインツはそこにも護衛の兵士と少数の魔術師を置くそうだ。


 それに市内の駐屯地であるこの場所に避難させるよりもずっとリスクは小さい。その辺については抜かりはないそうだ。


 仮に街が破壊されても住人が生き残っていればいつでも街は再建できる。これで守るための最重要地点が絞られた。


 それにウルブスの周囲を覆う城壁の上に設置しているバリスタや盾などの防衛設備だが、現在どこから攻めて来るか分からない状況だったため、全周囲に対して設置されていたが侵攻方向が分かった今、必要なくなった地点の装備を全て南側へと移動させている。


「こんな時でも冷静に自分たちがやるべきことをすぐにやる。この国の兵士の練度はかなり高いですね」


 竜騎兵による精度の高い偵察情報、情報が下りてからの設備を最適な位置に設置するための行動。市外に避難できない住人の保護、その他全ての行動に隙などない。


 春人は素直にこの国の兵士に称賛を送った。


「君からそんなに称賛を送ってもらえると部隊を指揮する私も鼻が高いよ」


 ハインツも春人からの称賛を素直に受け取った。


 後はもう二三意見を交わし合いながら時間は過ぎていく。


「さて、そろそろ時間だ。私はもう戻るよ。人員についてはこれからすぐに集めて南門に集まるようにしておこう。時間も無いから今日から作業に掛かれる方が君もいいだろう」


「そうですね、早いに越したことはないですからね。では俺は先に南門で待ってますので人員についてはよろしくお願いします」


 それからハインツは指揮所に戻り、春人は一足先に南門に向かい、二人の談笑もとい意見交換会は終わった。

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