02:ギルドへ行こう
3日に1話更新出来ればと思っていたのですが、中々話がまとまらなかったため、投稿が遅くなりました。投稿が遅くなることもあると思いますが、途中で投げ出さず、最後まで書ききろうと思います。
壁を抜けるとそこは異国情緒溢れる不思議な町だった。石畳の道路やレンガ造りの建物を見るとどことなく元の世界の欧州を連想させられる。通りを行く人も多く、ここが活気に満ちているということが伺える。
なかなか良さそうな町だ。彼を助けてここまで乗せてきてもらったのは間違いでは無いらしい。
「さあ着きましたよ。どうです? 中々いい所でしょ?」
彼に声を掛けてもらわなければ、都会に出てきたばかりの田舎者のように周りの景色を物珍しそうに見ていただろう。
「えぇ、とても良さそうな町ですね。ハロルドさんこの辺で降ろしてもらえれば大丈夫です。乗せて頂いてありがとうございます」
「ここでいいんですか? よろしければ町の中心部まで乗せてきますよ」
馬車を止めてもらい、降ろしてもらう。
彼の申し出はありがたいが、これ以上厄介になるのは彼の優しさに付け入る様な気がしてならない。
「お気遣いありがとうございます。歩いて色々見て回りたいので」
「そうですか……ハルトさんとはもっと色々お話したかったのですがね。所でこれからどうされるんですか?」
「そうですね、どこかで働けるような所でも探そうと思います。今思えばこの国の通貨を持ち合わせていないんですよね」
異世界の通貨なんて持っているわけない。一応アイテムリストにはレーションの備蓄は有るため、しばらくは食事には困ることはない。それでも一文無しでいるわけにはいかない。
「でしたら冒険者ギルドに登録されてはどうです? この大通りを真っ直ぐ進んだ所にある大きな酒場に併設されています。あそこなら異国の人でも大丈夫だと思いますよ」
ハロルドさんには何から何までお世話になりっぱなしだ。
「えぇ、そうさせてもらいます。何から何までありがとうございます」
「私はただ命の恩人にお礼をしただけですよ。まだこれでも足りないと思うのですけど。何かありましたら、この町の商館に勤めてますので訪ねてきてください。私で出来る事なら何でもしますので。それではお達者で……」
そう言って彼は馬車を進める。1メートルも進まないうちに彼は何かを思い出したかのように振り返った。
「そうそう、ハルトさんにお渡ししなければいけない物が有りました。」
そう言って腰から下げていた袋から何かを取り出す。
「さあハルトさん手を出してください。少ないかもしれないですけど、これも受け取ってください」
差し出した手に何かを渡され、ハロルドさんの手によりしっかり握らされた。握った手を開き渡された物を見てみるとそこには黄金色の金貨が数枚輝いていた。この国でどれだけの価値があるのか分からないが、少なくとも暫くは生活に困ることはないだろう。
「こんなに頂けません。自分の食い扶持は自分で稼ぎます。ですのでこれはお返しします」
俺はそこまでの働きをしていない。ここまで乗せてきてもらっただけでも十分なのにその上お金まで貰うなんてことはできない。そう思い、渡された金貨を返そうとすると、それを止められた。
「いえ、これはハルトさんが受け取ってください。先程も言いましたよね? ここまで乗せて来るだけではお礼しきれないと。それは私の命を助けていただいた分と、異国の武具の話を聞かせてもらった分の報酬です。それに私はいい仕事にはそれに見合った報酬を支払うべきだと思います。違いますか?」
彼の言っていることは一理ある。それに受け取らなければ彼の気持ちを踏みにじることになる。ここはありがたく頂くとしよう。
「そうですね、ありがたく頂戴します」
それを聞いた彼はニコッと微笑み、それではと言いながら馬車を走らせていった。しばらく見送ると彼の馬車は人混みの中に消えていった。
さて、まずは冒険者ギルドに行きますか。
その前に今頂いた金貨をベストのポーチに仕舞っておこう。枚数を数えてみたが10枚ある。これがどれだけの価値があるのか分からないが、暫く生活していくのには困らないだろう。これだけの大金をポンと渡してくるハロルドさんとは一体何者なんだ?
まあ今は彼の正体を詮索するよりも、ギルドのある酒場に行こう。確かこのまま真っ直ぐ進めばあると言っていたな。まずはギルドで登録して、それから後の事は考えよう。
馬車から降りて歩いて街を見物していると、頭部に獣の耳を付けた人々が見受けられる。成る程、あれが獣人というものか、流石は異世界。ならばエルフや精霊、魔法使いが出てきてもおかしくはないな。
そうこう考えながら歩いていると大通りも突き当たりに差し掛かる。そして目の前には大きな石造りの建物が見える。あそこが冒険者ギルドがある酒場だろうか? 壁に酒場を示すであろうジョッキが2つ書かれた看板が吊るされている。ここで間違いないだろう。
ここで考えていても仕方ない、まずは中に入ろう。
そして酒場の扉を開いた。