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25:追撃戦 1

 アリシアを見送り、銃のマガジンも交換し終わった春人はMTマルチツールに今だ表示している無人偵察機プレデターからの映像を眺めている。そこに移っているのは春人を追って迫ってくるベルカ帝国軍の兵士が居る。


 視点を動かして野営拠点を見るとそこにも残っている兵士がそこそこ居るようだ。


 そしてもう一度視点を動かす。今度は森の奥、アリシアを探す。通常のカメラと同時に搭載された赤外線カメラがアリシアの姿を捉えた。どうやら順調にウルブスに向かって移動している。その周囲や進行方向先には敵の反応は無く、このまま順調にウルブスまで行ってくれと春人は願うばかりだ。


「アリシアも順調に移動しているな。それにしても足が速い、流石ウェアウルフの娘だけはあるな。さてと追手を始末してから奴らの拠点を落としに行くか。それと偵察ももういいだろう」


 無人偵察機プレデターの偵察活動を終了させ、空を飛んでいたプレデターはその役目を終え、姿を消した。


 そして春人はまず追手の部隊へと向かって走り出した。






「敵影確認! さっきの奴です!」


「来たぞ! さっきの奴だ! 奴は手ごわいぞ!」


「ギルバート閣下も隊長も奴に殺された。その仇を討つぞ!」


「たかが一人だ、数で押せば奴に勝ち目はない」


 追手のベルカ帝国軍の兵士たちがそれぞれ声を上げ、士気を高めている。その声も微かにだが聞こえるくらいの距離まで春人は近づいていた。それでも彼我の距離はまだそれなりに離れている。


 そして春人は前衛部隊に向けてP90を構え発砲する。フルオートで撃ちだされる5.7mm弾は前衛の兵士が着ている鎧をものともせずに貫通し、その銃弾は次々と鎧の下の生身の肉体に突き刺さる。


 銃弾を受けた兵士は悲鳴を上げながらも何とか歯を食いしばりまだ向かってくる者、その場で蹲る者、当たり所が悪く一撃で即死した者など様々だった。


「クソっ! 今の一撃で何人死んだ!」


「あーっ! クソ痛ぇ!」


「早くこいつに治癒魔法をかけてくれ。このままじゃ死んじまう」


「それよりも動ける奴でもう一度隊列を直せ! 盾持ちは前衛の前に出て防御しろ。魔導士部隊は負傷兵の治癒をしながら対魔法障壁を展開しろ、奴は見られない攻撃をしてくるぞ、常に警戒しておけ!」


 未知の遠距離武器で音もなくいきなり攻撃された前衛部隊の兵士は自分たちが何をされたのか分からず、負傷者や死亡者が倒れたりして隊列が乱れた。それでも指揮官が有能なのかすぐに後続の兵士と共に隊列が整えられた。


 今度は前衛に大型の盾を持った兵士が密集して防御陣形を組み、その後ろには魔術師が展開し何かを詠唱したと思うと空中に魔法陣のようなものが現れた。これが対魔法障壁なのだろう。


 その後ろでは負傷した兵士を障壁を張っていない魔術師が負傷兵の治療を行っている。


 春人も最初の会敵でP90のマガジン計50発を全て撃ち切り、マガジンを交換してから腰に戻す。


「隊列がすぐに戻る……中々優秀な指揮官が居るようだな。ならばこれはどうだ?」


 その場で立ち止まりMTマルチツールを操作して次の武器を取り出す。そして展開された武器は右手に現れ、完全に展開し終わるとそれを肩に担いだ。


 今度の武器はRPG-7、ソ連が開発し、現代まで使われ続けている有名なロケットランチャーである。今では正規軍の他にゲリラやテロリストが使っている光景もよく目にする。


 隊列を整え、その前衛に展開した大型の盾を持って密集陣形を取っている兵士をRPG-7に搭載されている光学照準器越しに捉え、そこに向かって引き金を引いた。


 直後、RPG-7から弾頭が撃ちだされ、そして発射機本体の後ろから後方噴射バックブラストが噴射され、発射時の反動を抑制している。


 発射機から撃ちだされた弾頭はロケットモーターを点火させ、目標目掛けて飛んでいく。そして着弾と同時に爆発を起こし、目標の盾を持った部隊を襲った。黒煙が晴れるとそこに居た部隊は殆ど動いておらず、生きている者は手足のどこかが失われていたり、盾や鎧などの破片が突き刺さり、全身血まみれになって呻き声を上げている者しかいない。


 そして着弾地点に居た兵士の姿は無く、跡形もなく吹き飛んでいた。そこに残っているのは身体中バラバラに引き裂かれた人間だったものの肉片しか残っていない。


「ミンチより酷いな……まあどのみちお前等は死ぬんだ、自分の最期の姿なんてどうでもいいだろ」


 かろうじてまだ生きている兵士に向かって更にもう1発RPG-7を撃ち込み、確実に止めを刺す。2発目が着弾し、それで今度こそそこに生き残っている兵士は居なくなった。


 着弾と同時に春人もRPG-7の発射機をMTマルチツールに戻し、そこから更に前進し近接戦闘に挑む。


「前衛に出た守備部隊がたった2回の攻撃で全滅だと? 信じられん、奴はバケモノか?!」


「奴がこっちに向かってきたぞ! 騎兵隊前へ! 奴の足を止めろ!」


 兵団の中を縫って出て来た騎兵隊が金属製のランスと呼ばれる槍に酷似した武器を構えながら春人を討ち取ろうと突撃してきた。

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