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12:尋問《おはなし》の時間

今回は会話のシーンが多めです。

 春人は侵入者に流してるテーザーガンの電撃を一度止める。侵入者はテーザーガンの電撃が止んでも体が硬直したままで動くことができない。そして肩で息をしている。


 先程の位置からでは分からなかったが、月明かりに照らされた侵入者は男だった。


「もう少しだけお前が来るのが遅ければ俺は寝ていたのにタイミングが悪くて残念だったな。さてお前が俺達を……厳密に言えば俺を狙ってた理由から話してもらおうか」


 だがまたしても男の反応は無言だった。そして春人はまた電撃を与える。男はまたも苦痛に悶える。


「そうやって苦しむ位ならさっさと吐いて楽になってしまえよ。喋るくらいの元気はまだ残ってるだろ?」


 ここで一度電撃を止める。それでも喋らないのでもう一度電撃を流そうとしたところ


「まて! まってくれ、話すから! 何でも話すからもう止めてくれ!」


 どうやら遂に観念したようだ。


「なら答えてもらおう。先程も聞いたようにお前の目的は何だ?」


 春人のドスの効いた声でこの男の目的を訪ねる。そこに半ば殺意の様なものも一緒に篭っていた。


「あぁ確かに俺の目的はアンタだ。アンタが使ってる武器を頂きに来た!」


 この男の目的は春人から銃を奪う事だそうだ。


「そうか俺の武器が欲しいか……別に武具屋で何か他の武器でも買ってればいいんじゃなかったのか?」


 そこから更に問い詰める。


「別の武器なんてどうでもいい。あんな強力な武器の威力を見せられれば他の武器なんてカスも同然だ」


「見ただと? どこで見ていた! 答えろ!」


 春人の怒号にも似た声がこだまする。そして手に力が入りテーザーガンのスイッチを入れてしまう。一瞬だけ流れた電流に男はまた悲鳴を上げた。


「止めてくれ! それだけは本当に勘弁してくれ! 俺が見たのはアンタが最近噂の盗賊を皆殺しにしているところだ。それしか見ていない」


 男が悲鳴混じりの声で答える。それでもまだ春人の尋問は終わらない。


「他にお前の仲間は居るのか? あの場所で見ていたのはお前一人か?」


「俺一人だけだ、他に誰もいない! 本当に俺一人だけだ! 信じてくれ」


「そうか……まあいい、それで俺を殺して俺の武器が欲しかったんだろう? もし仮にコイツを手に入れて何がしたかったんだ?」


 春人が普段腰のホルスターに入れているガバメントを指差しながら訪ねる。


「そんなの決まってるだろう。誰よりも強い武器を使って誰にも負けないくらい強くなる。そしてこの国一番のの強い男になる!」


 この男は他人から武器を奪い、それで強者になろうという見下げた事を言い出した。


「ほう、こんな小悪党が英雄志望とは面白い。だがな、人を殺してそいつから武器を奪って使ったところで英雄になんてなれやしない。結局は悪党のままなんだよ。第一お前はこれを使えるのか?」


 春人の言う通りこの世界で銃を使えるのは今のところ春人しかいない。この男が仮に奪えたとしても動かない金属の塊が手に入るだけだ。


「何だよ俺には使えないって言いたいのか? じゃあアンタはなんなんだよ? そんな武器を使って何をしたいんだよ!」


 男は自棄になりながら聞いてきた。


「俺がしたいことか? そんなもん一つに決まってる。俺はただ普通に暮らしたいだけだ。英雄になるだとかそんなものに興味はない。だけど俺達の暮らしを脅かすような奴等は排除する。俺の連れの女の子に手を出すような奴等は特にな。


 それと俺が何者かだったか? それはお前と同じ悪党だよ。お前も見ていただろう、盗賊達を一方的に殺してる姿を。相手が悪党でも殺したことに変わりはない。俺もただの悪党なんだよ」


 春人は自分自身を悪党だと卑下する。それに男は軽く笑って答える。


「ハッ! アンタみたいなのが悪党だって? 随分と面白い冗談を言うじゃないか。ならばあれか? あの女はアンタの慰みものとでも言うのか?」


 そんなことを言う男に顔には出さないけれども春人は少しだけキレた。戯れ言を言う男にテーザーガンの電撃でもって答える。そしてまたも悲鳴が上がる。


 やはりこの責めは堪えるのか電流を止めると直ぐに止めてくれと懇願してくる。この世界で尋問に使うには丁度いいと思った。


「さあ下らないお喋りは終わりだ。話が逸れてしまったがまだ聞きたいことは残ってる。どんどん答えてもらおうか。


 次はどこでコイツの事を知ったかだ。たまたまあの場所で見たから欲しくなった訳ではないだろう?」


 ここで春人が一番聞き出したいことを問いただす。だがここでまた答えるのを渋ったためもう一度テーザーガンのスイッチを押し一瞬だけ電流を流す。


 またも直ぐに観念して喋り出す。


「俺がアンタの武器を知ったのはどっかの商人が話しているのを小耳に挟んだんだ。場所は町外れの弓職人の所でだ」


「そこでどんな話を聞いた?」


「なんでも新しい飛び道具を作るための参考としてアンタの武器の話が出てきた。その時に聞いたのは破裂音と共に目にも止まらぬ早さで飛んでいって相手を撃ち抜いていたと。そして矢をつがえるよりも早く撃っていたと言っていた。


 そこで俺はそんな変わった武器が気になって使っている奴をあちこち探し回ったんだ」


 この男の言うどっかの商人とはたぶんハロルドのことだろう。でも何故、彼が弓職人の所を訪ねてそんな話をしたのかは分からない。


「話を続けろ」


 そう言って話続けるよう促す。


「そんで街道で話に聞いた破裂音がしてもしやと思って見に来たらアンタがいたんだ。あんな話を聞いて更に実際に盗賊を皆殺しにできる威力を見たら誰だって欲しくなるだろう? アンタだってそれを自慢したくてそれの話をあの商人にしたんだろ?」


 ここで春人は今まである重大なミスを犯していたことに気が付いた。この世界で銃という武器は存在しない。そんな世界に春人は迷いこみ、この世界の住人に銃の話をしてしまった、それも何人かに。


 この男から聞き出したように、話した相手がまた他人に話したりすれば銃の存在が広まってしまう。そうなれば今回みたいに銃を狙って襲撃をかけてくる輩が出てきてしまう。


 春人は自分が思っていたことと違う状況に進んでしまったことに話したことを後悔した。


「自慢話? そいつは違うな。俺はただ聞かれたから答えただけだ。そのついでに自分の身の安全を守るためならコイツを使うという事を知ってもらうためだ。そのつもりで話したのだがどうも違った捉え方をされたみたいだな」


 春人が周りに話した理由は自分の身の安全を確保するために、抑止力として銃という武器を保持していることを知らしめるためだ。だが誰かに話して戦わずに済むための抑止力としては全く機能しなかったようだ。


 そして銃という便利な武器はこの世界の住人からは身の危険を犯してでも手に入れたい武器だということが分かった。


 ここで自分で自分の首を絞めていた事に気付いた春人はため息を漏らす。だがやってしまったものは仕方がない。


「どうやらアンタの当てが外れたみたいだな。それはそうと俺も聞きたいことが有るんだが聞いても良いか?」


 この男も春人に聞きたいことが有るみたいだ。それに対して春人は下らないことならどうなるか分かっているな? と念を押しつつも許可した。


「なぁアンタは何で盗賊を殺してから奴等の懐を漁らなかったんだ? 奴等もそれなりに溜め込んでる筈なのに何も手を付けないなんて勿体無くないか? 少なくとも俺なら金目の物を漁って頂いていくがな」


 春人は目の前で倒れたまま動けずにいる男の前まで行き、しゃがみこんで男の髪を掴んで頭を持ち上げ、顔を覗き込むようにして話し出す。


「ひとつ教えてやる。俺は人殺しの悪党でも死体を漁るような卑しい真似はしない。第一そんな事をしなくても金に困ってる訳ではないしな。それに俺のプライドが許さん。あんな奴等から金品が欲しければ勝手に持っていくがいい」


 そう言って髪を掴んでいた手を放し立ち上がる。そして重力に従い男は顔を床に思い切りぶつけた。


「痛ぇな、もうちょっと優しくしてくれよ」


 文句を言ってくる男を余所に春人は冷たい一言を言い放つ。


「さて、色々とお前から聞きたいことは粗方聞いた。そしたら後はどうなるか想像はつくな? つまりお前はこれで用済みだ」


「待て! たかが盗みに入っただけなのに俺を殺すのか? 待ってくれお願いだ、命だけは助けてくれ。ほ、ほらアレだアンタに有益な情報は何でも持ってくる。金はいらない! 他にもアンタの為なら何でもする。だから考え直してくれ!」


 用済みと言われ男は狼狽える。このままでは殺されると思い、必死に命乞いをしてくる。


「お前のような小者なんて殺す価値もない。それに自分が寝泊まりしている部屋で死なれたら目覚めが悪くなるからな。だが、お前にはこれから死んだ方がましだと思えるくらいの辱しめは受けてもらう」


 殺す価値もないと言われたときは自分は助かるんだと思ったが、その後に言われた一言に男の顔が真っ青になった。


 直後テーザーガンの電撃が男を襲う。今度は尋問で何かを聞き出すためではない。止めどなく電撃が体の中を流れ、永遠の様に続く激痛に耐えられず、意識が遠退いていった。


 完全に意識が無くなったことを確認してから、テーブルに置いてある蝋燭に火を着け、灯りを灯す。そして窓際に動かした椅子をテーブルに戻し腰かける。


「さてと、もう一仕事するか」


 そう言って春人はテーブルに羊皮紙を敷き、羽ペンを手にして何かを書き始める。


「よし、まあこんなもんだろ」


 書き上げた羊皮紙を持ち、再度男が気絶している事を確認し廊下に引きずり出す。


「お前無駄に重いんだよ」


 悪態をつきながら……


 それから階段を降りて誰もいない酒場を経由して外に出る。外に出ると辺りは微かに明るくなってきた。夜明けまでもうすぐらしい。気がつけばこんな時間まで続けていたみたいだ。


 人が活動し始める前にやることを終わらせるべくペースを早める。


 酒場の入り口近くの適当な場所に男を放置し両手を後ろ手で縛り、足の上に先程持ってきた羊皮紙を風に飛ばされないように気を付けながら置く。


「まぁこれでいいだろ」


 一通り終わらせてから春人はMTマルチツールのアイテムリストからタバコを取り出そうとする。


 タバコを取り出す為のOKボタンを押そうとする春人の指が止まった。


「いや、この際だから禁煙でもするか」


 そしてタバコは取り出さずリストからも消去した。


 異世界に来てまでこんな物にいつまでも依存しているのはよくないと思い、ここできっぱりと切り捨てた。それに以前アリシアにタバコの臭いが嫌いだと言われたせいもある。


「それにしてもまた面倒なことをしてしまったなぁ。まあ仕方ない、何か対策法を考えよう」


 春人のため息混じりの言葉は夜明け前の静かな街に消えていった。






 それから数時間後、酒場の前で晒されていた男はたまたま通りかかった住人に発見された。それを見た人は一瞬ギョッとしたが一緒に置かれた羊皮紙を見てこの状況を理解した。


 その羊皮紙にはたどたどしい文字でこう書かれてあった。


――私は深夜に物盗りに入りましたが返り討ちにあって捕まったマヌケ野郎です。


 それからどんどん野次馬が集まり、笑い者として晒されていた。


 そして暫くしない内に春人の部屋に侵入してきた男は街の憲兵により連行されていった。


 その後この男は盗みに入って返り討ちにあったマヌケという話である意味有名になった。

春人の日常と戦闘時で性格が変わるのは追々作中で書く予定です。

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