何かを見つけました
一通りの部屋を見て回る。3階は大きな部屋が多い。
3階で一番大きな部屋は円卓が真ん中に置かれている。会議室だろうか?
別の部屋を見てみると、乱雑に倒されているけど椅子や机が散乱している部屋もある。
うーん……なんとなく学校の教室をイメージさせる部屋だ。
「マスター、何を?」
「いや、懐かしいなーってね」
「ふむ」
椅子と机を1セットきちんと起こして座ってみる。うん、ちょっと大きいけど問題ない。
学校に通ってた頃を思い出すなあ。みんな元気だろうか。机に頬杖をつきながら思い出す。
これで目の前の壁に黒板があって、無数にうごめく大きな虫たちがいなければ完璧だ。
僕はこういう状況にも慣れてしまったし防護服もあるし、
何より元々虫は苦手じゃないからいいけど、虫嫌いな人は卒倒するだろうなあ……
さて、あまりこの部屋に長居してもあれだし、2階に行こうかな。
2階に降りると建物の中で一番大きな長方形の部屋があった。なんだろうなこれ……
ふと床を見遣ると、ボウルのようなものやスプーンのようなものがたくさん落ちている。
なるほど! 食堂かな。星は違えど食器の形は似ているのがまた面白い。
2階の残りの部屋と1階は殆どが居住スペースのようだ。
ちょうど、マンションといった感じかな、似たようなレイアウトの部屋がいくつもあった。
どの部屋も殆ど空っぽだったのが残念だ。
「めぼしいものはあらかた持ち出されていますね。一般の居住区のようですから、
残っていてもあのクリスタル以外は価値あるものがあるかどうか……」
「何があったかは知らないけど、特にあのクリスタルはそりゃあ持ち出すよねえ」
この文明に何があって滅んだのか、住んでいた人たちはどんな生活をしていたのか、
遺物を回収しながら思いを馳せるのが僕は好きだ。
極々稀に、文明が遺した記録とかがあって理由を推し量ることはできるけど、
それはそれで色々と考えさせられたりする。
そんなことを考えながら歩いていると、つま先で何かを蹴る感触がした。
「お、綺麗な石のかけら。ナル、分かる?」
この色褪せた世界には不釣り合いな、綺麗な緑色の石のかけらがそこにあった。
拾い上げてみると、ほんのりと光を発する。
「これはエレキストーンですね。熱を加えると電気を発生させる鉱石です。
高熱であればあるほど電力量が増えますが、人肌程度の温かさでもそれなりの電力を生み出します。」
「あ、知ってる。何故か加工して球体にすると石のままよりももっと電気出すんだよね」
「とても貴重な鉱石です……生成条件が不明、地下深くでしか取れない、
最新の技術でも未だに探知できない、と採掘者泣かせの鉱石です」
どうやらここはその貴重なエレキストーンが採れる星だったようだ……
滅んだというより、採掘しつくして星を捨てたんだろうか?
「どっかに大きいの落ちてないかなぁ」
「難しいかと思いますが……採掘場があると思いますので、探すなら掘ったほうが早いかと」
「よし来た、収穫なしでは帰りたくないしね。探そう探そう」
1階をぐるりと見て回ると明らかに怪しいシャッターがあった。
ナルにシャッターをハッキングしてもらって開くと、地下に降りる坑道を見つけた。
ビンゴ!でも中に入るとかなり深そうだ……掘り尽くした線が濃厚かな。
とりあえず最奥まで降りた後、掘る道具はあいにく持っていないので、
パワーグローブで掘りまくる。
ナルいわくかなり硬度は高い鉱石らしいし大丈夫でしょ。
掘る! 掘る! まだ掘る! さらに掘る! それでも……掘る! ……
「ねぇナルー……なんかこう手っ取り早く見つける方法って」
「ありません」
「えぇ……」
休み休み3時間ほど掘った結果から言うと、収穫はちょうど10個。
ただし、ほとんどが小さな欠片。一番大きいので5cmほど。
ナルに石を見せてもその特性のせいでやはり探知不可。
あーあやれやれ、無駄足だったかなぁ。
しばらくこの星に滞在するのも考えたけど止め止め。
座標情報でも売って大規模な採掘団にお任せして分け前でももらう方が現実的かな。
善は急げ、ここ数週間ほど宇宙を旅してばかりだったので、
文明のある星にも一旦行きたいしね……
そうだなぁ、行きつけの商星ウィローにでも行こう。
なんて考えていると、なんかナルが恐る恐るといった感じで声をかけてくる。
「マスター」
「んあ?」
「少々信じがたいのですが、生体反応です……虫たちとは違うようです」
「うぇ!?」
「微弱ではあるのですが……私も今、念のためにと生体センサーを展開したところなので
気づきませんでした。それ以外に大きな反応は見られません」
「ナルって意外と抜けてるよねー」
「うるさいです」
「ぐぬ……生体反応は動物じゃなくて?」
「この深さに加え、周囲は建材で覆われています。坑道から侵入したとも考えづらいですね」
さすがに文明人の生き残りがいるとは考えにくいけど……微弱な反応か。
「一応見るだけ見てみよう。どこ?」
「2階です、警戒を怠らないで下さい」
「ナルもね」
「わ、分かってますよ」
ナルのナビゲートに従って生体反応を追っていくと……
「壁だ」
「壁ですね」
壁だ。
いやいやいや、そんなはずはない。壁をこんこん叩くとどうも裏は空洞のようだ。
こういう場合は大体……お、あった。壁に似せているけど隠しスイッチだ。
ダメもとで押してみるが……開いた。え!? 開いたぞ!? マジで?
よしよし、こういうところにはお宝が眠っているのが相場だ。
さぁて鬼が出るか蛇が出るか……どっちが出ても逃げるけど。
いざ、お宝!