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フィオとナルちゃん

 前回までのあらすじ!

 リアさんが僕の船を勝手に動かして、フィオナのお兄さんの待つ星に出発した!

 ナルがリアさんに対してカンカンである!

 怖いので僕は離れて見てる!

 以上!


「リアさん! 私はまだ了解していません!」

「まぁまぁナルるんさ~ぁ、フィオりんの話も聞いたげてよん」

「嫌です! 大体あなたもですね!」

「ナルる~ん、ナルるんってば~」

「少々身勝手が過ぎます! そこまで彼女を助けたいのであれば私は……」

「……ナル、聞いて」

「う」


 出た、真面目なリアさんだ。この人が真面目になるとなんとなく気圧される。

 流石のナルもたじろいだ。

 今までの僕はこういうリアさんの時でも、たまーにぶーたれてたりしたけど、

 あの路地裏の件もあるし……基本的に逆らわないようにしよっと……


「ちょ~っと向こうでお姉さんとお話ししようぜ~ぃ」

「……分かりましたよ。ただ納得できなければウィローに引き返してもらいます」

「構わん構わ~ん、にへへへ~」


 なんて言いつつナルを掌に載せて向こうの部屋に去っていく。


「じゃあレスト、よろしくね~」


 去り際にウインクしながら去っていった。

 サンキュー! リアさん!


「ではフィオナ、作戦会議です」

「え? は? な、何が?」


 二人でテーブルにつく。

 リューちゃんはフィオナの隣でなんか気合の入った顔をしている。

 

「多分リアさんはナルを宥めてくるけど、フィオナの話を聞いて判断、ってなると思う。

 だからナルの説得のための作戦会議です」

「え、えぇ……そう……」

「キュキュー!」

「い、痛い痛いリューちゃん……」


 おぉ……妙にリューちゃんが乗り気だ……フィオナの太ももらへんをバシバシ叩いている。

 なんとなく場の雰囲気でも察しているのかな。


「でも、出来るのかしら」

「出来ます。絶対出来ます」

「キュッキューイ!」

「自信満々なのね……聞かせて」


 フィオナが身を乗り出して真剣な眼差しで僕を見てくる。

 リューちゃんは……なんだそのドヤ顔。なんでだ。

 まぁいい、対策と言っても一つだけ。


「えーとフィオナの身の上、お兄さんと別れてからなぜ僕を襲ったか、

 その後どういう事があってみんなで助けに行くことになったか」

「うんうん」

「それをできるだけ感情をこめて感動的に、時折涙も交えながら語って下さい」

「……は?」

「以上」

「ま、待って! 何の作戦なのよそれは!」

「キュイッ!」

「リューちゃんのお墨付きも出ました。完璧な作戦です」

「そんなの作戦とは……」

「ただいま~にへへ」

「フィオナさん、あなたの話を私が聞いて判断するという結論になりました。

 二人で話しましょう」


 お、結構帰ってくるの早かった。でも予想通りの反応だね。


「え、ちょ、レスト君……」

「じゃあ、頼んだよフィオナ!」

「さ、行きましょうフィオナさん。もう夜も遅いです」


 ナルに急かされて渋々フィオナは部屋を出て行った。


「で、少年……首尾は?」

「泣き落としです」

「キュ!」

「にへへ、よろしい」


 まぁなんだかんだ、ナルならこれで大丈夫だろ……

 リアさんの後押しもあるし、僕もフィオナは心配ないって話してあるし。

 で、待つこと10分……まずリューちゃんがおねむだ。

 夜更かしさせてしまったな。安らかに眠れ……

 待つこと更に30分……リアさんがゲームの最中に寝落ちした。

 仕方ないのでベッドに運んだ。

 待つこと…………PiPiPi!


「はうぁっ!?」


 い、いけない僕も寝てた……僕の携帯の着信音で目が覚めた。

 誰から……ナルからだ。えーと……『皆さん先に寝ていて下さい』

 よく分からないけど……正直頭が働かない……寝よう……



 「ううーん」


 よく寝た……ええっと、6時間ほどか。

 そう言えばナルとフィオナはどうしたんだろう。

 二人が向かった部屋に向かうと、

 ドアに耳をくっつけてるリアさんとリューちゃんがいた。

 何やってんだ……


「あの」

「しっ」


 リアさんが人差し指を口に当てる。

 その後、ちょいちょいと手招きされたので仕方なく僕も耳を当ててみる。

 どれどれ……


「ぞれで……にいざんはおどうざんとおがあざんがじんだっでのに、

 ぜんぜんながないでわだじにわらっで……

 だいじょうぶだぞっであだまを……うぐううう」

「そうですか……フィオのお兄さんは強い方なのですね……」

「でもげっぎょぐわだじのぜいでにいざんは……」

「大丈夫ですよ! 私にお任せください! マスターだってそれなりにやるんですから!」

「ふぐぅう……ありがどうナルぢゃん……」


 まだ話してたんかい! しかもなんかすごく仲良くなってないか!?

 なんだよフィオにナルちゃんって……それに僕がそれなりってナル……お前ってやつは……

 結局二人が出てきたのはそれから更に1時間ほど経ってからだった。

 

 フィオナは泣き腫らした目で出てきたと思えば、

 朝ご飯を食べると泣き疲れたのかすぐ眠っちゃうし、

 ナルはナルで、さぁ行け今行けすぐに行けって勢いで僕を急かしてくるし。

 ていうか毎回変わり身早すぎない?

 急かされなくともワープで件の星、《岩窟星グランディル》の傍にはもう着いてるってば。

 

 《岩窟星グランディル》

 表面の多くが岩に覆われた星で、様々な良質の鉱石が採れることで有名だ。

 こういう星では珍しく防護服無しでも問題ないこともあり、

 色んな企業が開拓、現役バリバリの鉱山とかが稼働しまくってる。

 本当にこんなところに未開拓の遺跡が?と思いつつナルが調べてみると本当にあるようだ。

 例の謎生物が座標をキリリとした顔で指している。『Hurry Up!』の吹き出し付きで。

 

 リアさんは『な〜んだこりゃ~』とか言いながら腹を抱えて笑ったおかげで、

 防衛装置フル稼働でお仕置きされている。

 フィオナは『ネコかわいい!』と。ナルは『でしょう?』って……

 そうかこれは猫なのか……

 そしてフィオナもナルと似たセンスの持ち主なのか……

 リアさんの気の抜けた悲鳴を響かせつつ、ミストラルはグランディルに着陸した。


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