あいまいな記録
ベルガモットの香り漂うアールグレイを淹れ、信長に差し出す。
一緒にバターをふんだんに練りこんだクッキーも紙の上に置き差し出す。
状況が状況でなければ優雅な午後のティータイムとしゃれ込みたい所だ。
「信長様、未来の飲み物紅茶とクッキーでございます」
「こうちゃ・・・とな。どれどれ・・・」
紅茶を一口飲んだ信長の表情は未知のものを味わった顔をしている。
未来のすばらしさを堪能しているかのような顔である。
「そちたちが未来から来たというのは本当なようだな。
このこうちゃという飲み物とくっきーという食べ物、今までに食べたことのない味がするではないか。気に入ったぞ!先ほどの続きを話せい!」
おいしい紅茶とクッキーの前に人間とは無力なものだと痛感する。
さて、ここからは本題に移ろう、忘れそうになったが明智光秀の件である。
「本日時間は不明ですが、明け方以降に明智光秀が信長様の寝込みを襲いにきます。詳細な時間は記録に残っておりませんが、この後来る模様です。
襲撃された信長様は周囲を包囲されたのを悟り、本能寺に火を放ち、自害したと記録に残っております。信忠様も戦いますが、やはり自害されたようです。」
「なんと・・・俄かに信じがたいことじゃが、負けを悟り自害するとはまことわしの考えどおりじゃ、そしてそちたちはどうやって助けるつもりじゃ。」
私は、信長に問われ、作戦ミスで寝所に出たことを思い出し、一緒に作戦を立ててもらう計画に、移行しようと考えたのだった。