Act.02 ―玄孫ギャング― ①
Act.02 Here I am ―玄孫ギャング―
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保育園から帰宅後、浅間は手下たちと溜まり場というより、吹き溜まりである『さわり公園』に集合していた。
手下には五良月ともう一人、憂を揶揄した取り巻きが浅間の後ろに従って付いて来ていた。
先ほど紹介を省いた園児の名前は『古井出五一』。
憂の回想で、五良月が言った公園で待っている『デコイチ』とは彼のことで、殺戮部隊『アサシン』の速攻隊長を名乗っている。
特攻隊長でなく、速攻隊長なところがポイントが低い。
見事な坊主頭に、袖なしの薄汚れた白いシャツに短パンと、服装に気を使わない感じで、顔も含めて特筆するところがない子供。
速攻隊長とは、実は現在の特攻隊長と熾烈?な口喧嘩で、ポジション争いをして敗れた彼が就いているポストで、速攻とは名ばかりの体のいいパシリだった。
定評ある足の速さを生かすべく、空力抵抗を考慮した?頭で、早くも将来が不安な広いおでこがチャームポイントというか、ウィークポイントの園児だった。
そんな速さ自慢の彼だが、同じクラスの『あずさ2ごう』ちゃんに連敗を喫していた。
『特筆するところのない彼』だが、紹介にかなりの行数を使ってしまった不思議。
「キガもフジヤマも、ゼッテーにブッコロス! ナマイキなツラを、ボコボコにしてやんからなア! そんでドゲザさせて……クツをナメさせて……ソレから……」
憤りを抑え切れずに、五良月が虐めのプランを脳内で捻出しては捲し立てた。
「……そーいや、シンちゃんさァ、ナンでキガのヤツをヤっちまわなかったの? フジヤマはいなくなったけど、キガはずっといたじゃん?」
先ほど、項垂れる憂の様子を一笑に伏した五一が、浅間に憂を虐めなかった理由を問う。
「いや、ベツに……」
「シメシつけなくていーの? アイツ、オレらナメてんじゃん? トッコー(特攻隊)にしゅーごーかけよーよ。アイツらバカのクセに、ムダにジュク(塾)いってっけど、シンちゃんがメーレー(命令)すれば……」
五一が言ったように、『アサシン』には塾通いの隊員もいて、浅間の一声で皆が問答無用で召集されるのだった。
「っせェ……」
「ねぇ、シンちゃん?」
「……っせェよ」
「え?」
「………………」
塾に通っている私怨のある特攻隊長を、引きずり出すように仕向けようとしたが、浅間はその五一の申し出を突っ撥ねた。
この年でもう声変わりが始まっているのか、と思ってしまうような低い声は、二人にはよく聞き取れなかったらしく、五一が浅間に聞き返すが、浅間は黙ったまま繰り返さなかった。
「ナンかチョーシくれてるよな。キガ(憂)のヤツも……」
浅間の心のわだかまりが、すぐ側で囀る五一の言葉を遮っていく。
何となく聞こえていた五一の声が聞こえなくなったとき、浅間の意識は過去の出来事に注がれた。