Act.01 ―暗殺者(アサシン)たち― ④
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「…………わかった?」
こゆみの少し大きめになった声で、憂は回想世界から現実に引き戻された。
「……あ、ゴメンなさい……きいてなかった……」
適当な相槌を打つこともなく、要領の悪い憂が両方の手の指を手を付けたり離したりして、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ゆーちゃんってば、いいドキョー(度胸)!」
「わあっ!」
先ほどの五良月の威嚇をものともしなかった憂が、こゆみの一喝に臆して頭を抱える。
「ご、ごめぅに……」
こゆみが引き攣らせた笑顔で、左右に引っ張った、肌理細くて柔らかい憂の白いほっぺは、餅のようによく伸びた。
「もうっ……ゆーちゃんのいートコは、わるいトコでもあるんだから……」
「?」
――と憂のそれを引っ張ったままで、こゆみが溜め息混じりで言葉を漏らしたが、当人である憂にその言葉の真意は伝わらなかった。
そんな憂をこゆみがもどかしく思う気持ちと――
「ハダがキレイ! ホント……オンナのコみたい…………きょねんの『おゆうぎかい』だって、ゆーちゃんがシンデレラで、アタシはママハハ(継母)……」
去年、憂たちが年中組のときに行われたお遊戯会での催し物はシンデレラ劇だった。
その配役は公平なくじによる決定だったのだが、はまり過ぎている2人に場内は大盛況となった。
こゆみの脳裏には継母(自分)に苛められて泣くシンデレラ(憂)の姿と、城の階段で転ぶ(脚本に転ぶシーンはなかった)アドリブのシンデレラ(憂)の姿が浮かんでいた。
憂の女子力?に嫉妬したこゆみの手にさらに力が加わる。
前に自分のほっぺと触り比べて、肌理細かさ、柔らかさ、瑞々しさなど、あわゆる面で完全敗北したのを思い出していた。