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Act.01 ―暗殺者(アサシン)たち― ②

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そして時刻はお昼寝前の昼休み、ここ『いばらぐみ』の教室で、りか先生が不在となった7~8分間にある事件が勃発する。

 断っておくと、先生がいるときは騒ぎを起こさないような、お行儀のいい園児たちというわけではない。

 ある事件、それは唐突に――――


「オイ、まてよ! コラァ!」

「…………ぅ」

 啖呵を切ったのは悪役顔の幼児、『()()(つき)ごろう)』。

 五分刈りで襟足だけがなぜか長く、若くして無法者(アウトロー)の風格を持つ背丈が低めで、悪そうな目つきに潰れた鼻、爬虫類顔の蛇柄のシャツを着た園児。

 そして、その彼に絡まれたのが『()()(やま)(ゆう)()』。

 少し反応の鈍そうな園児で、体型は標準規格よりかなり大きめで、坊主頭に大人しめの顔、規格外のスモックからも飛び出した一際、大きく弛んだお腹に半ズボン、全体的に福よかな肉付きをしていた。

 不二山は名札は着用しているものの、それが何と書いてあるのかは、達筆と言えなくもない程の字体からは窺えなかった。

 傍から見れば子供が大人にからむような図、威勢がいいのは餓鬼の方――


「どーしたの? こゆみちゃん」

「ナンかむこーで……」

 ――とモッブ(群集、暴徒の意で今作では脇役園児に用いる)の女子園児に、声をかけられて五良月たちを指差したもう一人の女の子、『()()こゆみ』。

 彼女は、冒頭で紹介した物語の主要人物である『憂くん(以後は憂と記す)』のご近所さん。

 同い年では憂とは一番親しい存在で、黒褐色の背中まで伸びたセミロングの髪に、ワンポイントに、アニメで犬が咥えてそうな骨がデザインされたヘアピンを着用、顔立ちのいい大きな瞳の女の子。薄ピンク色のスモックでお洒落に決めている。

 大人ぶった性格で、お互いに家も近いことから、少し――もとい、かなり頼りない感じのある憂(未だに登場していないが)の面倒をよく見ているお姉さん的な頼れる存在。憂の方はというと、弟というよりも妹的な存在に近いかも知れない。


 ここで園規定の制服について追記しておくと、スモックは学年ごとに色が振り分けられており、今年の年長組のスモックの色は、水色よりさらに薄い水色となっている。

 そういうわけで当然、キャラ栄えの為とはいえ、一人だけのピンク色の彼女は、とても浮いて――もとい、目立っていた。

「もぅ、ゴラツキ(五良月)がまたからんでる~ オトコって、ホントにケダモノなんだから、ヤ(嫌)になっちゃう……!」

「……ホント、コドモだよね~」

 ――とモッブの女子園児が、こゆみの耳元でチンピラ五良月の陰口を囁くと、こゆみもそれに頷いて同意した。


 それでは本題に戻って――――

「きたねーテでオレのつくえにさわりやがって! ヨダレでベトベトじゃねーか!」

「……う?」

 吐き捨てるように五良月が不二山に文句を言い放ったが、当の不二山は自分がなぜ絡まれているのか分からないといった様子で頭を掻いている。

 

「うるせーよ。ナニしてんだよ? ゴロー(五良月)」

「シンちゃん!」

 そこに1人の園児が、少し不機嫌そうに椅子から立ち上がった。

 五良月から『シンちゃん』と呼ばれたその男は、先程の齢6歳にして貫禄の老け顔に、何やら訳ありの(スカー)(フェイス)――名前は『(あさ)()(しん)』。

 彼は、この年長クラス『いばらぐみ』を統べるボス猿的存在だった。


「みてくれよコレ! もーつかえねーよ!」

「……あん? よくみえねーよ」

 五良月と浅間の机の配置は、教室の配席図では左下(五良月)と右上(浅間)に置かれている(教卓の先生の側から見るので後ろが上になる)ので、浅間のいる位置からは遠くてそれ(鼻水)がよく見えなかった。

 気怠そうな表情で浅間が五良月の方に向かって来た。


「ホラ、ココだって……」

「きたねーな……きーろ(黄色)のまざってんぞ」

「そーだろって……ぇ……ちょっちょっ……ぅっ……わっああぁ!?」

 五良月が自分の机を、近づいてきた浅間の方に傾けて見せると、涎に混ざった黄色い粘っこい液体が、トロリと椅子に流れ落ちた。

 机を起こせばいいだけなのに、彼は愚かにもその様子を前屈みになって覗き込んでいたので、机は更に傾いた。

 五良月が絶叫、慌てて机を手前に引き起こすが――時、既に遅かった。


「ゥげ、えぇ…………」


 自ら被害を拡大させてしまった五良月が、しばらくショックのあまり立ったままで硬直していた。その間、数十秒といったところか――

 

「ひゃ~ ひっでェ~!」

「わあ! ナンだよソレ?」

「ひっさ~ん(悲惨、飛散?)!」

 その様子を見て、五良月の机を囲うように集まり、ワーと煽る浅間の取り巻きたち。


「…………オォ……オイオイオイイィッ?! フジヤマァ! どーしてくれんだあァ!?」

「……ぁうぅうぁう……」

 正気に返った――いや、返っていない。怒り心頭で、暴言を発する五良月に対して、当の不二山自身は、五良月をあやすつもりだったのか、それとも、実はただおちょくっているだけなのか、鼻水と涎が入り混じった粘液が付着したままの手で、『よしよし』と五良月の頭を、手から液体を拭い取るようにして撫でた。

 余りにも暴挙、お(つむ)に塗りたくられたその潤滑油は、単細胞に怒りの炎に注ぐ油としては充分過ぎた。

「なぁっ? ……このっ! ナメやがって……!」

 ハンカチを所持していない五良月が、服の袖でその液体を拭おうとするが、粘着質のあるそれは、頭と袖の間でよく伸びた。腕を振り回して払おうとするが、なかなか払えないし、拭えなかった。


「ブ、ブ、ブ、ブ、ブッコロス!」

 直情的な五良月の頭が沸騰すると、背景のホワイトボードの文字が湯気で歪んで見える。

 五良月が自分の机を、椅子の反対側に蹴って床に叩きつけた。

「きゃっ、きゃあああああ!」

 その並ならぬ状況の演出、驚いたモッブの女子園児たちの悲鳴が教室中に轟く。

 

「ちっ! キにらねー(気に入らない)な……」

 浅間が舌打ちをして、この状況に対して不満げな言葉を漏らした。

「うぅあう…………」

 傍観していた浅間が不二山を睨みつけるが、不二山は無反応で、明後日の方向を見ていた。

「………ナメてやがんのか?」

 その態度に浅間は、不二山に対して気に入らない以上の苛立ちを覚えた。


「……お? シンちゃん、ヤんのか?」

「そうそう、コイツのナメたたいど、ムカつかね?」

「ああ、いまおもってん(思っていた)トコだ」

 取り巻き(取るに足らない者たちなのでここでの紹介は省く)たちが浅間の周りに集まってきて、面白半分に囃し立て始めると、浅間がそれに頷いた。

 浅間にこの血の祭典(大袈裟?)の拍子をとらせて暴れたい輩たち。

「ブ、ブ、ブゥウッコロォオスゥ!!」

 面白がっている取り巻きたちが、不二山を虐めの標的になるように、狡猾に他の園児を扇動していく中、そんなこと関係なく一人、怒りを露わに五良月が猛り狂っている。

 

「まっ……まって!」

 五良月が不二山に掴みかかろうとした局面に、遅ればせながら物語の主要人物である憂が、満を持して登場する。

 本編に入る前に紹介だけは済ませてあるが、もう一度紹介させてもらうと――

 その子の名はとても甘そうな男の子、名前は『()()(ゆう)』。

 憂が廊下から事件を目撃して、赤くて茶色い髪を振り乱しながら『いばらぐみ』教室に駆け込み、息を切らしたまま五良月と不二山の間に割って入った。

「あァ? ジャマすんな。どけよ!」

 未だ呼吸が整わない憂を振り払うように、五良月が右腕を大きく薙ぎ払った。

 その五良月の指は、横に手を広げて大の字になって、不二山を庇っている憂のあまり高くない鼻先を掠めていった。

「ゆ、ゆーちゃん……」

 その脇で、幼馴染のこゆみが祈るように胸の位置で指を組んで、少し心配そうな表情で憂を見つめている。


「コッチのじじょー(事情)もしらねークセに、クチだしすんなクソボケが!」

「……じじょう?」

 かなり威嚇したつもりの五良月だったが、意外に憂は臆することなく、少し首を傾げるながら五良月に尋ねた。

「みろよ! フジヤマがハナミズつけやがったんだ! このつくえとイスじゃ、もうベンキョーできねーだろーが!」

 立て続けに捲し立てる五良月が、自ら足元で踏みつけている机を指差して、その有り様を憂に見せ付けた。


「……ボクが、つくえをふくから…………あ、ふくから……」

「オイ……ソレでおわりじゃ、ゴローがカワイソーっておもわねーのか?」

 ハンカチを取り出して机を拭こうとする憂がようやく五良月の頭に気付いて、こちらを先に、と手を頭に伸ばそうとしたとき、その後ろから浅間が憂に詰問してきた。

「……なぐったら、ユウピ(不二山)くんのほうがかわいそ……」

「……ぁう?」

「キガ……ソレ、マジでゆってんのか?」

「……シン、アサマくん……でも……」

 少し戸惑い気味の憂が、浅間の呼び方をファーストネーム(名)からラストネーム(姓)へと言い直す。

「……うぅ、あう?」

 憂と浅間の二人のやり取りに、周りが緊迫した空気に包まれている中、当事者である不二山本人は、まるで他人事であるかのように、それとも事態飲み込めていないのか、左右に首を動かして、その様子を傍観していた。


「ウゼェ! だったらきーてみろよ? オレとコイツのどっちがワリィかをよ!」

「……ソレは……でも、でも、でもでも……」

 二人の間に割って入ってきた五良月の言い分に気圧された憂が、少しすがるような気持ちで後ろのモッブの園児たちを伺う。

 気になるお友達のご意見は――――

「きまってるじゃない。ネー?」

「あやまりもしないし……」

「…………え?」

「クチでゆって(言って)ダメなら、カラダでわからせるしかねーじゃん?」

「ボケてんだよ。なぐってやりゃ、メさめんじゃね?」

 旗色が悪い――どころの話ではなく黒一色の惨敗で、憂にとって望ましくないものだった。


「……そんな、そんなのって…………はァ……ナンで、バカ……」


 不二山を擁護することなく、冷たく突き放すようなモッブたちと、さらに浅間の取り巻きが不二山を揶揄すると、憂が少し驚いた表情をしたあとで鼻白んだ。

 クラスメイトの無情さにか、それとも人にすがろうとした自分にか、その両方にだろうか、右手で顔(落胆というよりは呆れ顔に近い)を覆って溜息をついた。

 少し、優しい憂らしからぬ表情――でも、それも無理はなかった。

 憂はこのクラスの園児たちが、不二山のことを誰も懇意に思っていないことは知っていた。

 それでも憂はクラスメイトに期待した。

 そして味方してくれたその子が、他のクラスの子に睨まれるのではといった心配まで――

 その短いやりとりの間で、数歩先までが簡略的な絵柄のイメージで、頭の中でグルグルと巡り、どうしようどうしようと、憂がその場でわたわたと右往左往していた。

 しかし、そんな憂の気遣いは、まったくの徒労に終わったのだった。

 そんな憂が吐いた落胆の一言の『バカ』は、あまりにも馬鹿馬鹿しいの『バカ』だった。


「たすーけつ(多数決)だ。キマリだな?」

 ――と浅間が判決を下したが、結論は最初から出ていたような雰囲気が漂っていた。

 ただでさえ劣勢な状況だったのに加え、クラスのボス猿である浅間に、盾突こうなんて考える者はいなかったからだ。

「……そんなのって、みんしゅてき(民主的)じゃナイよ……」

 クラスメイトを貶める迷いのない言葉の暴力、気圧されて後ずさる憂に味方は皆無だった。

「……ゆーちゃ……」

「ユミちゃん……」

 憂の名前を呼ぼうとして、言葉が途切れたこゆみに憂が目を向けると、『だめだめ』と表現するように、大きく首を横に振って憂へ無言で伝える。

 直接的には『浅間に逆らうな』――間接的には『不二山を庇うな』と――

 

「フジヤマくん……いっちゃったよ」

 モッブの女子園児が、廊下の方を指さした。

 事件の当事者である不二山をそっちのけで、浅間たちは憂と揉めていたとは間抜けな話だ。

「にがすな! つかまえろ!」

「コロセー! オー!」

 浅間に命令された男子園児らが廊下へ走り出した。


「……ボクのつくえと、とりかえよ?」

「どけ!」

 両手で五良月の服の袖を掴んで制止させようとした憂が、五良月から手首のスナップを利かさない、腕の動きだけの右の裏拳を顔面に食らった。

「あうっ……」

 そして怯んだ憂を押し退けて、五良月が強引に突破。先の男子に合流しようと走り出す。

 

 園児たちの目に余る暴動に、当局が乗り出した。一人の人物が、廊下の壁に貼られた『ろうかはしらない』のポスターに平手を叩き付けて――


「小僧ども、廊下を走るんじゃないよ!」


 廊下を駆け出す野党のような園児たち、その行く先に立ち塞がったのは白髪の老女で、彼女こそがここの園の長、その人であった。

 視覚(ビジュアル)的には皺々の老いた(骨と皮だけ的な)お婆さんで、年齢を感じさせないというか、年甲斐もない白地に赤い花柄のワンピース(りか先生より遥かにお洒落)を着用していた。

 園長『(つる)()(うめ)()』先生が、くちばしを尖らせて園児たち一喝する。

「ウメボシババア(園長先生)だー! いちじてったい(一時撤退)!」

「梅子先生と呼べと、何度言ったら分かるんだい?!」

 結局、有象無象は一人の老女に気圧されて、先居た教室にすごすごと戻っていった。

 これぞ正しく『鶴の(梅子の)一声』、というものだった。

 

「だいじょーぶ? あ……ハナヂ」

 床にへたり込む憂に近づいて、心配そうにこゆみが顔を覗き込むと、ハンカチで憂の鼻から頬をそっと拭った。

「キガ(憂)……オレ、オレらじゃなくって、フジヤマについたな。どーゆーつもりだ?」

「……アサマくん」

 背後に立つ浅間が、なぜか少し動揺気味に憂に問いただすが、憂に言葉は続かない。


「シンちゃん、『アサシン』のしゅつどう(出動)だ!」

 廊下から戻ってきたモッブたちが浅間に部隊の出動を要請してきた。

 『アサシン』とは、隊長である浅間慎の『あさ』ま『しん』をとってアサシン。

 『アサシン』は浅間と、浅間の支配者的カリスマを慕う園児と、その他で結成されたごっこ遊びで済まないグループで、現在この保育園を牛耳っている。


「ゆーちゃん……」

「……ン……ん、んぅ……」

 心配するこゆみの手が、憂をハンカチで押さえつけたままで停止すると、憂は少し苦しそうな喘ぎ声を漏らした。

「……くっ!」

 憂が不二山を庇ったことで、浅間が自分に敵対したと決めつけて憤る。

 何処となく寂しそうな表情にもとれたが、そんな自分にさえ苛ついてぎゅっと下唇を噛む。

 浅間は今の憂と自分の関係に、やるせない気持ちでいっぱいだった。

 憂と浅間、二人の仲は少し前までは、それなりに良かったのだから――


「あ~あァ……オマエもバカだね~」

「……え?」

「シンちゃんキレちまったじゃんよ……」

「オレらさつりくぶたい(殺戮部隊)『アサシン』をテキにまわすとは……しんだな?」

 浅間の取り巻きたちが憂を呆れた風に見下して言った。

「もーおそいぜ。シンちゃん、オマエのコトをそーとームカついてたみたいだぜ」

「……あ、シンちゃん! まってくれよ!」

「ベンジョだ。ついてくんな」

「……と、とゆーワケだ。おっ……おぼえとけ」

 取り巻きたちは項垂れる憂を嘲笑うようにして見下した後、仏頂面で教室を出る浅間の後を追って退場する。


「アサマくん……」

「フジヤマくんなんて、ほっとけばいーよ。ゆーちゃんがかばってあげてるのに、しらんプリしていっちゃったし……」

 クラスの皆と同意見のこゆみが、憂を諭そうとする。

「ユミちゃん、ちがうよ」

「いーからききなさい!」

 憂がこゆみを説得しようと上体を起こすが、こゆみが有無を言わさぬ勢いでそれを遮る。

「っ………」

 憂はその迫力に圧倒されてしまって、起き上がれずに膝を抱えた体育座りで、床に座り直させられた。


「アサマくんってば……このまえも、となりのくみのコをなかしてた。ソレはソレは、キョーボーなヤツなんだよ!」

 顔を近づけて憂を少し睨む表情になったこゆみが、浅間の凶暴さについて語り始めた。

 数週間前の年長組戦争、それを制したのは殺戮部隊『アサシン』の総隊長で、『いばらぐみ』

の組長、とクラスの連中から崇めらている浅間ということだった。


「でも……むかしはアサマくん、もっとおとなしくてゆーちゃんとも…………あはっ」

 『ゆーちゃんとも――』と言いかけて、言葉を濁したこゆみは、少し笑って誤魔化すような仕草で、そこから先は口にしなかった。

「…………いい、ゆーちゃん?」

 こゆみは傷心の憂を気遣う表情をしばらくした後、きゅっと口を結び、厳しい顔に戻ってお説教を続行させる。


 憂と浅間は、年長組戦争まではそれなりに仲が良かった――が、大した理由でもないすれ違いで、浅間は憂から離れて行き、そのまま現在に至っている。

 それには憂のお節介と、浅間の粗暴さが起因しているところだが――

 たくさんの子分を従えた浅間は今、ギャングの頂点に君臨していた。

 簡略的に言ってしまえば、その浅間がただ憂を疎ましくなったと、ただそれだけの本当に取るに足らない理由だった。

 

「ユウピくんも、あやまってくれるようにたのめば、ケンカとかしなくても……」

「ダ~メ! もうフジヤマくんはほっときなさい! ……いい? ダレのせいでこーなったっておもってるの?」

「……ボクが、よわいから」

「そう! ……じゃなくもないけど、1バンのゲーイン(原因)はフジヤマくんだよ」

「そんなコト……!」

「アタシらじょしかい(女子会)も、フジヤマくんにはイラっときてるんだよ」

 憂は何度も不二山をフォローしようとするが、ことは男子だけに及ぶ問題ではないのだと

いうことをこゆみが告げた。

 女子高生やOLのような乗りで、不定期に行われる『いばらぐみ』女子園児の女子会。

 お茶会に昼食会など、大人顔負けのさまざまな名目で、楽しい企画が催されている。


「……ユウピくんを? どうして?」

「ずっとまえのおえかき(お絵かき)のじかんに、アイちゃんがかいたママのエ(絵)を、ハナミズのついたテでさわって、グヂュグヂュによごして……アイちゃんないてたよ。でも、あやまらなかったし……ほかにも、ツメはかんでたべちゃうし……あとね……」

「………………」

 幼馴染みの小言が長くなりそうなので、数週間ほど前(年長組戦争直後)の、憂と浅間の友人関係に亀裂が生じる前の頃に話を戻すと――――


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