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Act.01 ―暗殺者(アサシン)たち― ①

 Act.01 Here I am ―暗殺者(アサシン)たち―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここは、預かり教育施設の『しなぢく保育園』。


 まるで猛獣のような園児たちを収容、収監している場所で、去年までは年長組二クラス、年中組二クラス、年少組一クラスで構成されていた。

 この年の年中組園児の入園が、前年を大きく上回ったことで、新しいクラスが一つ設けられて、年中組は三クラスとなった。

 

 その『しなぢく保育園』の年長クラス、憂くんの『いばらぐみ』の教室にて――


「ハンコ(出席の)を押しま~す。呼ばれた子から返事をして前に来て下さい。 ……あきのちゃん(返事)、ゆうひくん(返事)、てるやまくん(返事)、もみじちゃん(返事)、こいもちゃん(沈黙)、うすいくん(返事)」

 三つ編みに丸眼鏡、清楚な白のワンピース、ある意味狙ったような容姿で、田舎娘の『(まん)寿(じゅ)りか』先生が、開いていない出席簿を片手に、園児たちの名前を一人ずつ読み上げていく。


 水色をさらに薄くした感じの学年既定のスモックに、名前(ファーストネームの方)が書かれた自作の名札が園児達の制服。

 指定帽は特にないが、個人的にお洒落帽子を被っている(室内なのに)園児が現在、数人ほど見られる。

 ファッションとして、帽子のつばを中央で折っている者、つばに大きな安全ピンを刺している者、後ろ向きにかぶっている者、アーミーのワッペンをペタペタと貼りまくっている者と、さまざまで――服装の自由、そこには個性と呼ばせる無秩序が垣間見えていた。


 余談だが、このクラスには『あずさ』という名前の女子園児が二人いる。

 一人目は『あずさ』で、二人目は『あずさ2ごう』と書かれた名札を着用しているが、彼女自らがそれを書いたというのだから、最近の園児のセンスは侮れない。


 そんな園児たちの中に、主要人物であるところの彼(憂くん)もいるはずなのだが、服装に関しては規定通り着用しており、たくさんの個性溢れる園児たち(信号機のような頭をした園児もいる)に埋もれて、地味?な赤茶色の頭は見当たらなかった。


 さらに余談だが、赤い頭(憂くんよりも赤々しい)をした園児は赤なのに『進くん』。

 まったく、親は子供にどういった教育をしているのだろうか。


「ナンでゆうひくんのセキはアッチなのに、センセーとばしてよぶんだろ?」

「しらな~い……ってゆーか、『こいも』ってダレ?」

「……フン」


 これといって特徴のない男女の園児の普通の雑談。

 坊っちゃん刈りにおかっぱの男女、普通すぎて滑稽なその髪型が、今時の子供の普通にそぐわない雰囲気を醸し出してはいるが、この物語でいうならば、普通に普通の『園児A』と『園児B』の他愛のない会話だった。


 普通に考えて、その普通ではないのはその後ろの後ろ、配席でいえば左の窓最後尾の園児。

 ツンツンに逆立てた茶髪、左目の下に傷のある大人の面構え(つまりは老け顔)で、背も標準規格の『園児A』より頭一つ出た園児が、片膝を立てて椅子に足をのせた不遜な態度で、つまらなそうな顔をしている。

 こちらの老け顔園児は、スモックを着用しておらず、名札なしなのに園では札付きの(わる)で、無地の白いカットソーと、対比の派手な(スタッズ)がついたベルトに、両膝が空いたダメージ系のジーンズを、ストーリートファッションで着こなしている。


 またも余談だが、先に出席で名前を呼ばれていた園児の『(てる)(やま)(てる)』くん、『(うす)()()()(たけ)』くん、彼らだけはりか先生に、名前(ファーストネームの方)で呼ばれてはいない。

名前の割には輝いてもなければ、威厳なども感じられない脇役たち。


「ふっふふふ……」


 つまらない洒落に自らウケるりか先生だが、『こいも』という名前の園児は在籍していない。

 ある有名な歌に因んだ、りか先生の幼稚な遊び心で、悪戯心の所為といったところか――

 

 『こいもちゃんってさ、いるみたいだよ。ホラ、アソコのセキ……』

 

 しかし、この後『こいもちゃん』という幽霊が、このクラスの一番後ろの空いている席に座っているという噂が流れて、数週間後には、『こいもちゃん』を見たという者まで現れたりで、まことしやかに、『こいもちゃん』の存在が囁かれることになる――が、そんな事実もエピソードも今のところ確認されてはいない。


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