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Political correctness   作者: 憐夜
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ディザースターハンティング

【杉原 響/バトラス湖畔】


何やら、目の前にいるルークは、ゾディアに対してかなり強い怒りを持ったようだが、先ほどまで諦めていたような様子だったのに、何故急に怒り出したのだろうか。怒り出したのは、ゾディアがルークに向かって申し訳ないとでも言いたげな表情を見せてからだったと思う。


(うわぁなんかすげー誤解されてる予感…)


少しだけ苦笑いを浮かべながら心の中でつぶやく。別にゾディアは、これから相手を捕まえることに対してはなんとも思っていない。昔だったら罪悪感を感じたかもしれないが、今は完全に仕事として割り切っているため。そういった感情は浮かばない。ただ、ルークに対して、必死になって考えた策かもしれないけどごめん全部不発だ、と、伝えたかっただけだ。


「まあまあ、そうカッとなるなよ。ちょっと捕獲されて落ち着け」


相変わらずの、少しわざとらしい苦笑いを浮かべながら手をひらひらと振り、ヨーヨーを持っている右手を鳴らす。それと同時に、左腕を上から下へ振り下ろすと、袖口からヨーヨーが滑り出て、左手に収まる。その状態で、怒っているようなら、捕獲されて落ち着け、と、火に油を注がんばかりのセリフを何のためらいもなく言って。言い終わると、両手のヨーヨーを少し時間差をつけて放つ。ヨーヨーはルークを捕獲するべく、ルークに向かって行って。



【テレジア・ファイルヒェン/ルミネ市場】


「忙しいところ申し訳ないが、この店にある菫の花を全て包んでもらえないだろうか? 金なら幾らでも払おう」


多くの人々が賑わい活気に満ちた市場の中、花屋に佇む軍服を身に纏った女性が一人。艶のある黒髪が太陽の光を浴びて青みを帯びた色へと変わり、時折吹く穏やかな風によってサラサラと靡いている。凛とした顔立ちで店を彩る花々を眺める彼女の姿は、身に纏っている軍服と腰に下げた得物がなければ一般的な女性そのもので。彼女の名はテレジア・ファイルヒェン。ディザースターハントに所属する彼女が本部ではなく市場に赴いているのは、気晴らしに買い物がしたかったからではない。もうじき養父母の月命日が近付いてきているからである。ディザースターを擁護した罪で処刑された彼らは云わば反逆者で、公に墓を建てることは許されなかった。だからせめてもの手向けとして、この時期が近付くと本部にある自室にファイルヒェン家の紋章である菫の花を飾ることにしているのだ。

暫らくしてから花屋を後にした彼女の腕には、沢山の紫色の菫が抱えられていた。こんなにも沢山の花を自室に飾れるのか分からないが、それでも自身の誇りであり憧れだった養父母への想いの方が強かった。今日1番の用事を果たした彼女は本部に戻りながら、養父母のことやこれからのことを色々と思い巡らせていた。ディザースターが虐げられることのない国を創りたいという想いと、ディザースターによって起こされた悲惨な事件の数々。それら全てが意図して起きたものではないにしても、非能力者はディザースターを災厄扱いしてしまうのが現状である。だとしても能力があるだけで何の施策も行わず、一方的に彼らを虐げることに何の誇りがあるのだろうか。


「……っ! すまない、怪我はないだろうか?」


そんなことを考えながら人ごみの中を歩いていれば前方に注意を向けられるはずがなく、目の前にいる少年少女にぶつかりかけそうになった。ギリギリのところで回避したのでぶつからなかったものの、此方の不注意の所為で彼らに怪我をさせては申し訳が立たない。目の前の彼らが今まさに考えていたディザースターとは露知らず、怪我はないかと声をかける。



【フラム・テムペール/ルミネ市場】


「あぁん?元からだほっとけ。

……すぐ戻ろうと思ったって出来ない時もあるんだから、これから水は持ってけよ」


見た目は小さくても年相応の声を持ったフラムが不良のような声をあげると若干迫力がある。が、やはり彼女の小さな体躯を見てしまうとその若干の迫力まで消えてしまうのだから不思議だ。消えるどころか小学6年生くらいの女の子がお兄さんに何かを訴えているようにしか見えなくなってしまう。


「『毒でも良いから食わせろ』って言われたら私はどうすれば良いんだ……

ああ、病にかかっても彼奴は診ないだろうな。なんとなく」


あの性格だ。きっと瀕死になってようやくのろのろと診ることだろう。


「お前がその道に進んだら私まで食われそうだしな……」


と、そこまで言ったところで、自分達より幾分か年上の、青みがかった黒髪の女性がぶつかりそうになってきた。

しかしその女性はそれを回避し、『怪我は無いか』と、そう投げかける。

これが普通の女性だったらどれだけ幸運だったことだろう。

女性が身に纏うは、政府から支給されたであろう軍服。

そして腰には何やら物騒な物を下げている。


__今日はつくづく運が悪い


ああ、面倒だと思いつつも彼女の問いを返さず逃げる訳にはいかないだろう。


「ああ。私は大丈夫だ。

……おい猫目馬鹿、お前は大丈夫か?」


一応名前を出さずに──良い名前が浮かばなかったから取り合えず簡易で適当に呼ぶことにした──先程まで話していた彼にも話を振る。

今くらいは空気読めよ、と念じながら



【ディール/ディザースターハント本部】


「よぉ、副隊長さん。御機嫌よう。なんか面白いことねぇのかよ、なにもないってのは一番つまらねぇ。次の作戦でも、指示でも、まだきまらねぇのか?」


ディールは副隊長のセレンナに対して、全く態度を改めるようすもなく話しかける。地位でいえば上だが、ディールとは同じ年の上、ディザースターハントと仲良くする義理もない。だからこそ、ディールはいつもの調子で、この間延びした日々を打開すべく、次の作戦はまだかと聞いたのだった。平穏平和な日々なんて、まっぴらごめんだ。ディールには、そんなぬるま湯につかっている時間はなかった。


「へいへい、すみませんね。でも、きっちり淹れて持ってくるなんて、優しいじゃねぇか。ありがとうございます、せんぱいっ」


こちらは地位は同じでも年上の相手、アークだ。だが、ディールの態度は変わらない。アークが淹れた珈琲を受け取ると、先ほどよりも明るく人懐っこい声で礼を言う。自分が持つ丸い目を全力で輝かせて笑顔を向けるが、その目とにやりと曲げられた口元には、微塵も感謝の気持ちが込められていなかった。むしろ、やはり自分のために珈琲を淹れる人間がいたじゃねぇか、と思惑通りに事が運んだことに喜びを感じていた。

さっそく珈琲を飲もうとしたところでアークとセレンナの会話が聞こえてくる。ゴミ、か。ディールの視界がぐらりと揺れた気がした。国やディザースターハントの連中が、ディザースターのことをどう思っているか、どうしたいと思っているのか、重々承知しているつもりだが、やはり生の声というのは心を揺さぶる。ディールは胸の内に渦巻いた感情任せの言葉を吐かないように、手渡された珈琲をぐっと一気に飲む。しかし、その珈琲の味はとても普通の味とは言えないものだった。ディールは瞬間、眉をひそめ、必至になって珈琲を吹き出すのをこらえる。


「んんっ!!っ、アーク、てめぇ…わざとだなこの野郎…これから背中には気をつけろよ、覚えていやがれ」


なんとか口に含んだ分の珈琲を胃の中に流し込むと口元を手の甲でぬぐう。口元だけは笑っているが、額には青筋が走り、アークをしっかりと睨み付けた。珈琲の色を観察すれば、通常よりも何倍か濃い飲み物であることを見抜けたはずだが、ディールは決して自分に落ち度を認めない。

未だ濃度まし珈琲の余韻をディールが受けていると、この場に新たな人物が入ってくる。シェリル、ディールからすればアークと同じ、地位が同じで年が上の人物だ。彼女はそれに加えて武術だが宗教だかの師範だったはずだが、やはりディールにとって、それは態度を改める要因にはならない。


「久しぶりだな、シェリル。相変わらずご聡明な格好だことで。んで、なんか面白いことでもあったのか?」


普段シェリルはどこかの山の上に住んでいると聞く。ここに来たということは、なにか特別なことでもあったのかと思い、ディールはシェリルに話しかけた。



【ミシェル / 市場】


「う、わ……っ!?」


ハントを呼ぶのなら勝手にしろ。そう言い残し、ドルチェの言葉は待たずに躊躇いもなく能力を発動させ、逃げ出そうとしたところで何者かに腕を引っ張られ、大きくバランスを崩し心底驚いた声を上げた。身体が右後方に大きくぐらりと傾き、転倒しかけた寸前でどうにかバランスを保つことに成功し身体の向いている方向を反転させる。すると自らの右腕を掴み人混みの中へと引いて行く少女の後ろ姿が見え、すぐに自分を逃がしてくれたのだろうと理解した。人混みの中は混み合っており、複数の人間とぶつかるうちに再びフードが外れるが、右腕は掴まれ、左腕はあの印を見られるわけにいかないのでポケットから出せない。結局フードをかぶり直すことを諦めたミシェルは、周囲の喧騒に掻き消される程度の声で少女に顔を近づけて、ほぼ囁くようにして聞いた。


「……お前も、ディザースターなのか?」



【アリック/バトラス湖畔】


「今日も良い天気だなぁ~……」


そんな風に暢気な声を溢しながら湖畔の畔を歩いていく。今日も今日とていつも通り、色んな雑用から逃げ出している最中だ。もう逃げ出しているなんて感覚はなく、今はただ単に散歩を楽しんでいる感じだが。最近はよく逃げ出してはこの湖畔へ来るのが常になっている。水も澄んでいるいるし、マイナスイオン?とかがたくさん出ているから癒されるのだろう。市場など色々巡ってからここに来たため、もう逃げ出してから数時間は経っているだろう。そろそろ戻ってやろうかな、などと考えていると、向こうの方に見覚えのある人影が映る。


「(……あれは、ルークとジルレインか?……いや、それだけじゃない。その奥にもいるな。)」


見えたのはよく見知った仲間である2人と、そしてその奥にもう2人。見知っているわけではないが、何度かは見かけた事がある。ディザースターハントの奴等だろう。なにやら危ない雰囲気が漂っている。「せっかく散歩楽しんでたのになぁ……」なんて軽くそんな愚痴を溢しながらも、能力を使って自分の姿を見えないようにし、ゆっくりと音を立てないように4人のいる方向へと近づいて行く。


「やっほー!うちのお姫様とナイト様になにか用かなー?」


ルークとジルレインの後ろまで近づくと、パッと能力を解いて姿を現し、危機感も何もない声と台詞でディザースターハントの2人へと問いかけた。



【レイン/ルミネ市場】


大分離れたところにきてから

少しずつ速度をゆるめて、人の少ないところでやっと止まる


「あ、はは…こ、ここまでくればいいかな…?」


緊張したなとつぶやいて、やっと相手の問いかけに答える


「ううん、違うよ…俺はただの人間。あ、安心して!ハントじゃないから!

 どちらかというとネス派?まぁ、一応防衛手段で武器持ってたりするけどね」


そういって大きな黒いスーツケースを揺らす


「あ…えと、余計なことだったらごめんね!

 あんな人ごみだし、ハントとかハント派の人とかいたら大変かなーって思って

 …あの女の人はどうかわからないけどね…あ、手ぇ大丈夫?」


左手を気にする



【ルーク/バトラス湖畔】


「…………っ!」

 この男はいつまで自分を馬鹿にし続けるのだろうか。ルークが年下だから?ルークが弱いから?ルークが災厄だから?そんな言葉が渦巻いていた。しかし相手の武器が男の手の中に収まったとき、思考回路が変わった。今自分がしなければならないこと。それは男から放たれたヨーヨーから逃げなければならないこと。それしか頭には残っていなかった。片方は左に避けて回避したものの、相手は2つ放っていた。1つ避けることしか考えていなかったルークはもう1つが自分の目の前に来た瞬間、何が何だかよく分からなかった。

「……っあ!」

 左肩から腰にかけて糸が絡み付いた。逃げようにも逃げられない状況だった。

(アリック、アリック……っ)

 必死に彼の名を心の中で叫ぶ。____すると、誰も予想しなかったであろうことが起こった。


「え?アリッ…ク……?」

 後ろにいた。自分の大好きなポリティカルコレクトネス団長、アリックが。涙が出そうになりながらもルークは思った。1つ突っ込ませてくれ、お姫様ってどっちだよ、と。そしてアリックの顔を見て何かを思い出した。

「……アリック、この時間にウロチョロしているということは、さては仕事サボりましたね?」

 じーっと冷たい眼差しを送るルーク。いくら厚く忠誠を誓っていても、仕事は仕事。それがルークのモットーなのだから。



【セレンナ/ディザースターハント本部】


ディールに仕事はないのか。と聞かれた


「ディザースターが出ない限りは、することなんてないですね」


いや、違う

ディザースターがなにかやらかさない限りは、だ

というか何よりも隊長がいないとなんの決断も下せない


まだ見つからない。兄様も、ミシェルも。どうせなら、自分の手で捕まえたい



【ジルレイン/バトラス湖畔】


聞き慣れた声が聞こえて来た

あれは、きっとアリックだ。団長だ


「ナイトは私のことですね?」


クスクス笑いながら振り返れば、なんの危機感も無い団長がいた

ルークは真面目だから、団長のサボリに苛立ったようだ。なんて微笑ましい光景

ちょっと気になって仕事場を千里眼で覗いてみると、大半の机が仕事用では無くなっていた

もっとすることあるだろうがこの団長&副団長よ。つい一人で笑ってしまったじゃないか


ああでも、良かった。向こうは自分の顔に気が付いていない

まぁ、その為に瞳の色を変えているのだけれども。このままだったら大丈夫だろう



【クウゴ/ルミネ市場】


「まぁお前らしい方が良いな。……あぁ、そうさせてもらおう」


っと渋々と顔に苦みが出るが、今日の様にはならない様にと用心する事にした。情けない兄さんの様に苦笑いが絶えない。俺にも色々と隙がありまくるのかもしれないな、っとこの時だけ一瞬思った。

異様に目立つ猫目も細くなってしまう。猫目を持っているだけでも不気味だと言うのに補足すると睨んでいる様にも見えるので、何か嫌な事に会うから困ってしまう。

何故俺だけこんな仕打ちなのだろうか?、俺がなにかしたか?、まぁ昔はやりすぎにも程があるほどやりまくりましたがね。もう自分の能力が単なる呪いにしか思えなくなってしまう。



「それはそれで毒物でも仕込ませて、彼奴等自ら反省させるべきだろ。どうせ毒物入れても死なんだろう?。……まぁ、昔の俺の手口だな」


っとポリポリと右頬を右手で掻きながら昔の事を思い出す。反省させるべきでは自ら過ちを持って、今後の為に制限する方が何かと得だ。それ故俺達は餓鬼だ。まぁ19歳の俺が餓鬼なんて容易い様な言い分は通じないと思うが、やはり言っても聞かない奴もいるから、その策が俺は得だ。

っと、さり気なく少し恐ろしい事を言っているようだが、彼自身はそう思わなかった。


「否定できないね」


フッと鼻で笑いながら微笑む。

すると、自分は何かにぶつかりそうになった。この人混みの中なので恐らくはさ迷ってぶつかりそうになったのか、或いは動きが読み取れなかったのかの二択が候補に挙がるが、それとばかし考える余裕は無く、少し戸惑いながらも避ける。

足のバランスが良かったのか、転ぶ事は無かった。それにどこも痛みも感じてはいない。

そしてぶつかりそうになった人の姿を見ようと目を向けると。


そこには昔一番お世話になった人の服「軍服」を着ていた女性の姿が見えた。

その容姿に思わず「ゲッ!」と心でそう思いながら急にピンチに切り替わった。

するとフラムが俺の無事を確認しようと声をかけられると、俺は汚れてもいないのに服をパッパッと払う。

これは完全に戸惑っている証拠である。


「あ、ああ……大丈夫だ」


っと冷や汗を掻きながら、再び彼女の方へと見る。

昔、色々と追い回された挙句に、俺の人生を混乱へと陥れた人達の軍服を見ると、やはりトラウマが蘇る、と言うよりかは今の状況で俺が昔暴れまくった「殺人鬼」なんて気づかれたらもともこうもない。

すると俺は何かを察した、何かこの場では空気を読まないといけない気がする、と言うかしないと面倒な事になりかねないので俺は直様ネクタイをちゃんと締める。

……焦りすぎだと思われるが、だがそれも何年の話、こちらが俺の顔を知らないのなら大丈夫だ、騒ぎは起こさないので、取り敢えずは昔の様な振る舞いはしない、そしてこの場の流れに乗るだけだ。…少し困難だな、

っと色々と脳に書き込みをしている。


ちょっと何かいてんだろう僕…ってことで5話出しました

なんかよくわかんない展開に持って行きました。タイトルはもうわかりません。

それでキャラについての資料ページに書かれていないキャラを出してしまい申し訳ないです。一応下書きノートに書いてあるものを使ってしまいまして…これからすぐ出していきたいと思います

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