魔法使い2
俺はようやくやってきた最大火力戦力を見た。
薄茶の髪を無造作にたらし、生成りの布を身体に巻き付けただけな格好をした女。
様々な色のビーズで出来た装身具をこれでもかと身に着けているがけばけばしさは感じない。
肌にじかに描かれた文様が魔法使いのあかしだった。
魔法使いは人の形をした兵器だ。
だがなぜ人が魔法使いになれ、何故魔法使い以外は魔法が使えないのか我々にはわかっていない。
彼らは俺たちとは全く違う生活習慣と文化を持っている。その習慣は俺たちには意味不明だが彼らには重要なものがかなりある。
それが彼らの魔力の由来となっているらしい。
一度彼らの幼児を我々の文化圏で育てるという実験が行われた。その子供は結局ただの子供からただの大人になってしまった。
つまり彼らの魔力は生来の者ではなく幼少期から魔力を得るための修業を行わなければならないらしい。
ただその生活習慣はあまりに異質なので彼らのもとに子供を預けて魔法使いにしようというこちらの人間はいない。
基本的に少数民族なので、徐々に減っていく。やはり近親結婚など子供が生まれにくくなる弊害は多い。
しかしいま彼らに絶滅されても困る。彼らの火力は我々にとっても必要不可欠なものだ。
そのため彼らの扱いは基本的に鄭重を極めた。下手すれば王家の姫君より鄭重だ。あちらもこちらの文化をあまり理解していないのでそのあたりはわかっていないのかもしれない。
目の前の女に化粧気はなく顔に描かれた文様を除けばそこそこ整った顔立ちをしている。あの色狂いのあほが、あちらの少子化を解消する手伝いをと申し出て、副官に沈められていた。
本来あり得ない暴挙だがそれをとがめる人間はいなかった。それくらい扱いにはこちらも気を使っている。
着任のあいさつと、彼女のために用意させた部屋の位置を伝えた。
定期的に禊と称して水浴びをするのでできるだけ水場に近い場所を用意していた。
両手を身体の前に打ち合わせる彼らの流儀の挨拶を受けて俺も敬礼した。
まったく動かない表情は妙に威圧感がある。年齢は俺よりたぶん下なのだと思うが自信はない。
魔法使いは妙に老けて見えない。それが修行の成果なのかもしれないが。
いよいよ始まるか。
魔法使いがやってきたということは開戦が近いということだ。
俺はそのまままとめられた書類を手にした。
見慣れない筆跡はカタリナのものだろう。筆跡の種類が違うので妙に浮き上がって見える。書記官用の筆記体を軍ではあまり取得していない。




