令嬢の困惑
書類が何束も机に置いてある。
私の机だけでなくほかの人の机も大量の書類に埋まっていた。
これから開戦だというのにこんなにも書類があるのかと驚いた。
私は書類の中から物品の名と数量を用意された帳簿に記していく仕事を任されていた。
私の書類はほとんど食料に関するものばかりだった。
ただ、私にもわからないものもある。おそらく食糧なのだろうけれどどういうものなのか名称だけでは判断がつかないのだ。
私はその名称をメモしておいた。あとでどのようなものか確認しなければいけない。
山のような書類から抜き出した名称と数字をかきあげた後はその数字を足して今現在どれほどあるかを出さなければならない。
石でできた計算機はとても重いので侍女のエミアに手伝ってもらった。
エミアは私に付き従いながら、私や私以外の書類と格闘している士官たちにお茶を配っていた。
お茶はエミアがわざわざ持ってきたものだ。私の心を慰めるためと言っていたがほかの士官のほうが喜んでいる。
「お茶なんてぜいたく品はまず手に入りませんから」
今砦に運び込まれているのはまず実用本位。お茶などという嗜好品は最初に省かれているそうだ。
エミアがどれほどお茶を持ち込んだのかは知らないが。しばらくしたらお茶ではなく白湯をいただくことになりそうだ。
「お茶をいただくことが当たり前だと思っていたわ」
そう呟く。
「カタリナ嬢。これから倉庫を見に行くことになっている。見方を覚えてくれ」
ほかの士官の方がそう言って私についてくるように言った。
エミアは当然のように私の後をついてくる。
私はそのままずいぶんと歩いて行った。
この砦はとても大きい。普段の私なら馬車を使うような距離を歩かなければならない。軽く息切れをした。
半地下になっているその場所では大量の貨物が収納されていた、
「あちらが武器、そっちは別の人の担当だから」
そう言って指さす方向はとても小さい。
「基本的に君の担当は食料だから」
そう言われたが、見渡す限りの貨物で目の前が揺らぐ。
「ええと、この袋が小麦?」」
私の胴体より太い袋が私の背丈より高く積み重なっていた。小麦一袋の重さとざっと見た袋の数。それを計算してその膨大な量に圧倒される。
書類の数字ならどれほどの数字も流せるが実物を見るとそれがどれほどのものかと。
「実情って、大事なのですね」
士官は私の言葉を聞いて少し笑った。
「まあ、王城にいたんなら倉庫なんか見たことないよね、でも王城でも倉庫ではこんな状態だと思うよ」
そうなんだと思いつつ私は腰の痛みを感じた。
「どうなさいましたか」
「ちょっと背中が。痛いの」
エミアは私をじっと見て言った。
「おそらく、コルセットを外しているせいですね」
コルセットを外したおかげで私は息がしやすいのだけれど。
「コルセットを日常ずっとつけていると、背筋が無くなるんです。お嬢様が感じているのは筋肉痛です」
「そう、なの」
「しばらくすれば慣れますよ」
背中とわき腹がなんだかじくじくと痛む。コルセットをしてもしていなくても私はずっと痛いのか。




