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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
生徒行方不明事件 〜魔法に恋し、親友を愛す〜
9/39

第9話:風紀委員会

 ミアがアイシスの部屋から出てきた。


「長かったな。何を話していたんだ」


 俺は一人、廊下で一時間ほど待っていた。


「濡羽の昔話を延々と語られたわ。アンタにも初恋相手が居たんだね」


「げ、あの人。そんな事まで話したのか。別に、その少女に喜ばれたくて魔術を学んだだけで初恋相手でも何でもないからな」


「それを世間一般では初恋って言うのよ」


 そうなのか。

 まぁ、今は勅令優先だ。


「ほら、早く行くぞ」


「待ってよ」


 ミアと共に寮の部屋に向かった。

 中では織可とタクオが待っていた。

 俺はUSB をパソコンに差し、情報の入ったファイルを開く。


「織可、居なくなった男子生徒の名前を挙げてくれ」


「分かった」


 織可の言った男子生徒の記録をピックアップしていく。

 全員言い終わると記録を開いて学院街で突然向かい居なくなった生徒全員共通する場所が無いか見ていく。


「あったぞ」


 その場所は学院街の外れにある墓地を管理していた寂れた教会で、今はその不気味さから誰も寄りつかない。


「犯罪者が集会を開いて隠れる場所には持ってこいだな。さっそく今日の夜、向かうぞ」


「敵の数もその強さも分かっていないのにこの場所に向かうのは無謀じゃないか」


 織可の言葉にタクオが同調する。


「そうでござる。無謀と勇気は一緒ではないでござる」


「大丈夫。今日は戦いに行くわけじゃない、潜入捜査だ。噂を聞きつけてやってきたバカな生徒のフリをして仮称WWがこの場所で何をしているのか目的を探る」


「それなら、大丈夫そうだな」


「潜入捜査。何だかワクワクするでござる」


「危険がないなら、私も行くわ」


「全員意見が一致したな。さて、作戦を立てるぞ」


 そこから三十分ほどで全員、何をするかを決めた。

 そのタイミングで、チャイムが鳴った。


「誰か荷物でも頼んでいたのか?」


「いや、拙者は何も」


「僕も何も頼んでないけど」


「ひとまず行けば良いじゃない」


 ミアが玄関に向かった。

 俺の中で妙な予感がした。

 敵は、いや俺たちを邪魔するのは犯罪者だけじゃない!


「ミア、開けるな!」


「え?」


 俺が声を発するのと、ミアがドアノブを捻り開けるのは同時だった。

 カランという金属音と共に、隙間から手榴弾のようなものが投げ込まれた。

 その手榴弾はミアの足元で、白い煙を吐き出すのと同時にミアは玄関から離れ、俺たちは玄関の方を見ながら構えた。

 煙幕は魔術の影響か、一瞬で充満し、視界を封じる。

 だが、それは一瞬だった。


「炸裂ッ!」


 若い女性の声と共に火花が散り、玄関とその周囲が吹っ飛ぶ。

 煙が晴れた一瞬で、俺たちはアイコンタクトを取り、織可とタクオが前に出る。

 俺はUSBを回収するとミアの共に、窓から下の階の部屋の窓を割り、部屋の中に入る。

 その部屋の先生は驚いていたが、気にせず部屋か出る。


「封印捕縛術ッ!」


 通路に出た瞬間、横から俺に向かって縄が飛んできた。

 俺を庇うようにミアが前に出て、縄に縛られる。


「逃げて!って、もう居ない」


 俺は階段を降りる

 その時、背後から蹴飛ばされあの場面に戻る。

 〜〜〜

 熱に灼かれながらも近くに水道がある事を確認し、固有魔術を行使する。

 水道を破壊し溢れた水が俺の全身の炎を消し、視界を覆い尽くすほどの白煙が生じる。

 そして庭園側に向かって、全力に走る。

 少し進むと俺を囲うように緑色の特徴的なローブを制服の上から羽織った集団が姿を現す。

 彼らの正体はそのローブと胸に付いた徽章から分かる。


「生徒会所属執行係『風紀委員会』か」


 学院最強と呼ばれる生徒会長自らが選定し、真に実力のある生徒と認められた者たちによって構成された学院の秩序と平和を守る生徒による治安維持組織。


「風紀委員会が何のようだ?」


 代表格の女子生徒が懐から令状のような紙を手にし、読み上げる。


「黒曜濡羽、貴様を生徒行方不明事件の容疑者として連行する。抵抗したくばすれば良い、我々はそれを公務執行妨害として戦闘も厭わない」


 冷静に告げる宣告に俺は心を震えさせ、最大の笑顔を持って応える。

 この事態は捜査官の仕業だな。

 流石に俺たちが探っているのがバレて、妨害工作だな。

 こんな事で時間を使っていたら捜査官に先取りされる。


「もう戦闘してるじゃないか、何を今更。ここで止められるのは嫌なんでね。抵抗させてもらう」


 風紀委員会の生徒との戦闘。

 俺の体に流れている狂戦士と恐れられた黒曜の血が騒ぐ。

 戦闘は興奮的かつ冷静的に……

 ここじゃ、ダメだ。

 あそこまで行かなくちゃ。

 俺は振り返り、風紀委員会の連中に背を向けて庭園の中央に向かって逃げる。


「逃すな。追い、捕獲しろ」


「はっ」


 一斉に風紀委員たちが俺を追い、駆ける。

 先に動いて、身体能力にも優れている濡羽との距離を詰めることは出来ないが、獲物を追う猟犬のような眼差しと執念で追い続けてくる。

風紀委員会

魔術師が大半だが数人ほど魔法使いも所属しているが、あまり活動することはない。

風紀委員会に所属する魔術師のレベルは三級魔術師の中でも上澄みレベル。

濡羽の実力はこの時、準一級レベル

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