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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
83/91

第82話:決着

 修行して、ミアと戦う内に気付いた。 

 私には突出した攻撃力が足りない。

 浮上させ操作する魔術・魔法と潜弾は平均的な攻撃力しか持っておらず、他の魔法使いや魔術師は魔奥には劣るが魔奥級とも呼べる技を扱っている。

 シェリーの顕星や濡羽の黒海などがこれに該当し、魔奥級の技があることで戦闘での決めが行える。

 私の戦い方は決め手たる魔奥級がなかった為とあらゆる魔法、魔術を無効化出来た為に物量かワンサイドゲームが多く、実力が拮抗または凌駕する相手には有効な作戦や技を持ち合わせていなかった。

 魔奥級の攻撃手段を生み出すために試行錯誤した結果、生まれたのが潜針だった。

 消去という魔奥級に届く攻撃力を持っていたが、当てにくさと防御に特化していたために決め手とは言えず、失敗だった。

 ならばと私は思考を逆転させ、単純化させた。

 潜性は潜らせた対象と術者のパスを切断し、私と繋ぐことで操作を可能にしている。

 もし……もしだ。

 魔奥そのものを潜らせ、普通の魔術や魔法と同じくパスを切断すれば私が操れるようになるのでは?

 その考えの元、検証に検証を重ね誕生したのが——

 再浮上、リバースだった。


***


「ゴフゥ……ゲホォ」


 私は吐血しながら掌に開けた出口から放出というか放流のようにシェリーの魔奥を濡羽に向けて流す。

 白の閃光、宇宙の晴れ上がりの“余波“が全てを照らし破壊する。

 再浮上(リバース)

 魔奥を潜らせ、浮上することで我が物とする私の決め手。

 強力だが欠点が多く、使いやすいものではない。

 潜らせる事のできる魔奥は私が理解できるものか強力ではないものであり、どちらにも当てはまらなかったシェリーの魔奥は本体を潜らせることが出来ず、余波のみ潜らせることが出来た。それとあくまで潜らせることの出来る魔奥は放出型のみで濡羽やカールなどの装具型、ミアのようなバフ型や織可の領域型は術者と魔奥が密接だったり、境界線が分からないため潜らせることは出来ない。

 潜らせた魔奥は術者との接続が切れたためか時間経過でその威力と効力が下がっていき、一日経つと完全消滅してしまう。

 そして魔奥はその強力さと異常さから潜性の力に反発し、普通の魔術や魔法以上に魔法と私の脳に負荷を掛けるために操るときは私自身が万全の状態でないと無理であること。

 そのため、シェリーの魔奥をこちらまで浮上させることは出来たが、操ることは叶わず出し切るまで放出するしか出来ない。

 以上の欠点などを抱えながらも魔奥級とも言える攻撃であり、放出しているのはシェリーの魔奥(余波)だ。

 魔王の行使した最上位魔法の魔奥、これを防げる魔術師などこの世にいない。


「私の……勝ち、よ」


 気力を失い、私は意識を保ちながらも床に倒れる。

 そして勝負の結果を見守る。


***

 

 濡羽は焦っていた。

 今まで見た事のないような魔奥の攻撃、それは完全に防御した自分を百回ほど殺せる威力を秘めていた。

 だが、同時に嬉しくもあった。

 自分の愛している女性は、ここまで強い。

 ならば、自分はそれ以上に強くなくてはいけない。

 俺はモーゼスを強く握りながら魔力を高める。

 勘が告げている。

 この魔奥の大部分は水素で構成されている。

 誰の魔奥かは知らないが良い練度で、最強と言える攻撃力だ。

 だが、水素があるなら俺の魔術の範疇だ。

 液体魔術は液体を操る、それはこの世界を占める液体を構成する水素さえも操れる。

 水素を操るとなると液体全ての適性以上の適性が求められる。

 その行為は自身を構成する細胞を構成する物を感じ取り操るということ。

 そんな感覚を持ち合わせ、操ることの出来る生物などこの世に存在しない。

 濡羽はそんな御託や常識など忘れて、無我夢中で研ぎ澄ます。

 器官を、神経を、脳を、魂を……己を構成する全てで己を感じ取ろうとする。

 極限的な集中は体感時間を遅らせ、濡羽に時間が止まっていると誤認させるほどで実際、再浮上が発動してから30秒も経っていないのに、濡羽自身は一週間経ったように感じた。

 そして再浮上が発動して1分後、濡羽は水素の輪郭を掴む。

 10秒後、水素を感覚として捉える。 

 5秒後、水素を操る。

 モーゼスは加圧放射に特化している、それ解釈し加圧と放射に分けることで自由性を獲得する。

 魔奥を構成した水素同士を放射させ、自分の手元に移動させる。

 瞬間的にルナや魔奥、試合場全体の水素がなくなり濡羽の元に集う。

 その影響でルナの体とくに外気に触れる部分は乾燥し壊れようとし、空間には火花や静電気が溜まっていく。

 後にこの技は預者の戒め、(ウィー・)渇断(アロン)と呼ぶことになる。

 そして集めた水素を液体に、そして加圧放射で刃そして剣に変換する。

 この瞬間、俺の全細胞が悲鳴を上げた。

 だが、それで良い。

 ルナを超えるためにには——これしかない。


「『預者の示し、(ロー・)導潤(ハイドラ)』」


 水素圧刃とも呼べる刃は魔奥を切り捨てた。と同時に形が崩れ消え失せる。


「はぁはぁ、最後に立っていた方が勝ちだよな?」


 濡羽の問いに実況も観客の声を上げない。

 シェリーの魔奥が出た時点で濡羽以外の全員がルナの勝利を疑っていなかった。

 だが、濡羽はものの数十秒で魔奥を切り捨てた。

 当事者以外に何を行ったのか分からなかった。

 だが、1分後落ち着きを取り戻した実況が声を張り上げる。


「キングクラウン優勝者は黒曜濡羽ァ!!」


***


 その人物は黒曜濡羽を見据えながら小さく呟く。


「やはり、彼は邪魔だな」

これにて、この章は終わりです。

明日からは、本編とは違う時間軸の幕章を投稿していきます。

ぜひ、お読み下さい。

それと、誤字脱字の報告や感想をお願いします。

感想は確認した時点で返信していきますので、ぜひお願いします。

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