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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第73話:姉の意地、覚悟

 舞台は現在へと戻る。

 万を超える炎、雷、風が渦巻き会場を包み込むように飛び回る。

 一筋の銀針がそれらを薙ぎ消し、シェリーの元に向かう。

 シェリーは距離を取りながら再度、万を超える攻撃を生み出す。


「シェリー、あの時の言葉を訂正する気になった?」


 銀針がまた全てをかき消す。


「そんな気起こるわけないでしょ!」


 魔力が発露する。


「顕性魔法、『顕影(フォルム)』」


 シェリーの分身が複数生まれる。

 ルナは思考する。

 シェリーはもう分かっているはず……

 潜針による消滅は空間によるもの、針が触れさえすれば容易く消去することが出来る。

 だから無駄にデカい隕石など大きいだけの格好の的に過ぎない。


「『顕星(メテオ)』」


 焦ったわね。

 ルナはすぐに針を落ちてくる隕石に向かわせ、消滅させる。

 だが、それで生じた針が離れた隙をシェリーは突く。


「『顕霆(サンダー)』」


 雷雨が発生し、無数の落雷がルナに降り注ぐ。


「ッ『潜針』」


 隕石を消滅させた針を消し、手元で再生成することで落雷を防ぐ。

 流石にバレたわね。

 今の私に生み出せるこの大きさの潜針は一本だけ……だから攻撃と防御を併用することは出来ない。でも、バレることは想定済み、何も問題ない。

 このサイズの潜針は一本だけ、だけど小さくすれば——


「『潜針・(スウォーム)』」


 微細な潜針が数十本生み出され、降り注ぐ落雷を消滅させる。

 潜針による消滅速度は消滅対象の大きさと針自体の大きさに依存する。針ほどの潜針では隕石を消滅させるには時間は掛かっただろうが雷という大きさという概念のないものなら一瞬で消滅させられる。

 小さくなり数も増えた影響で強襲や複数対処も可能になったが、消滅速度が低下したことで防御には向かない。

 だからこそ、シェリーが新たな一手を放つ前に圧倒的な物量で押し切って、倒す。

 潜針の一群が一斉にシェリーに向かって飛ぶ。

 シェリーも阻むように分身を前に出すが、穴だらけにされ、次には消滅する。

 そしてシェリー本体へと向かい、消滅により無数の穴が開く。


「ゔっ……」


 血が飛び散り、地面へと落下していく。

 そして地面にぶつかる。


「え?」


 こんなあっけない終わり、あり得ない。

 まさか……


「顕性魔法『顕身(ソウル)』本物の分身は見抜けないわよね」


 ルナの背後に立つシェリーが耳元でそう囁く。

 危機的状況下で引き延ばされた思考時間。

 別身体、分身とは違い本物にもなれる並列存在。

 どうする? 潜針を戻す時間も再出現の時間もない。

 振り向いて殴る、それしか道は——

 ルナが行動を起こすよりも早く、シェリーは魔法を行使する。


「顕性魔法『顕虚(ネガ・マテリア)』」


 ルナの背中に触れるシェリーの手から“それ“は広がる。

 それはシェリーが生み出した“この世に存在しないはず、存在する訳がない物“という抽象的物体でありエネルギーであり概念であり、概念じゃない物。

 顕現したそれは存在する事が出来ない世界に晒され暴露し、存在出来ず、それに触れる全てを不安定にする。

 魔力は弛み、筋肉は緩み、骨は綻び、神経は止まる。

 不安定の影響で、触れれば崩れる砂上の楼閣となったルナの体を崩すためにシェリーはもう一手、魔法を行使し、顕現させる…


「『顕波(ウェーブ)』」


 空間そのものを押し出すような衝撃波がルナを襲い。

 全身の細胞が液体のように流れ、崩れていく。

 そして地面へと落下する。


「ァァ——」


 声にならない絶叫を上げながらもルナは着地体制を取り、落ちる。

 全身にヒビが入り、上手く脳からの指示が伝達されない。


「ァァァゥェ」


 その影響で喋ることもままならず、誰もがルナの敗北を感じた。

 しかしルナだけがそれを考えも感じもせず、行使する。


「ェゥェ——アァ、やっと喋れた」


 少し掠れているがルナは喋り出した。


「何であれをくらって喋れるのよ!?」


 行使したシェリー自身も驚く。

 あのコンボは神経と脳を破壊する対能力者最強の一手。

 喋ることも含む行動全てを無効化することで対象を無人間とする必勝の技。


「簡単よ。脳からの神経伝達で壊れている部分、欠けている部分を一度潜らせてから浮上で無理やり繋げた。その影響で結構、魔力を消費するのと周りを巻き込んだ影響か、激痛と頭痛が酷いけど……」


「狂ってる」


 妹は姉の行動を理解出来なかった。

 自身に魔法を行使することは誰でも出来るが、失敗すれば何も出来なくなるという状況でそんな事を出来る人間がどれだけ居ようか。


「シェリー、魔奥で決着つけましょう」


 その覚悟が決まった紅い目が、同じく紅いシェリーの目を突き刺す。


「分かったわ。魔王らしくいきましょう」


 魔王とは最も恐れられると同時に一人の魔法使いとして尊敬されている。

 それはどんな相手だとしても絶対に一騎打ちを受け入れるからだ。

 魔王として受け入れ、魔王として叩きのめす。

 その簡単であり難解な行動を行う精神性こそが魔王とも言える。

 二人は杖を向け、構える。

 そして魔力を高め、深め、圧縮する。

 圧縮した魔力を全身に解放すると同時に紡ぐ。

 白銀の髪が濃い紅蓮のようであり原色の赤よりも濃い赤色の髪へと変貌する。


「「魔女は心奥にして魔奥を覗く」」


 魔法使いとして最高峰である二人の魔奥が今、ぶつかる。

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