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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第71話:過去、母親

 私は屋敷で働くメイドたちに聞き込みをして情報を集めた。

 ルナとシェリーの母親はアリアネルという名前で、有名な探索者だったらしい。

 探索者時代は『銀風』という異名で呼ばれていたらしく魔法使いとしての異名もそれだった。

 サーベイと知り合った経緯などは分からなかったが結婚する時にはルナを身籠もっていたらしく、結婚式当日でそれを見た長老会が怒り、サーベイと揉めたらしい。

 ルナを産んでからも長老会はサーベイに抗議し、アリアネルとの離婚を勧めるように促していたが魔王権限で拒絶されたらしく、シェリーを身籠るまでは穏やかな日々を送っていたらしいがシェリーを身籠もった際にシェリーの全魔法使いトップレベルの魔力に当たり、体調を崩すようになり、シェリーを産んですぐに亡くなった。

 メイド曰く、シェリーは自分の性で母親が死んだことを知らないらしく本人に言わないようサーベイに念押しされたらしい。


「二人の娘を家に残して魔王サーベイは何をしているの?」


「サーベイ様はアリアネル様を亡くされてからは仕事一筋になり、家に戻ることはなくなりました」


 妻を亡くした悲しみを思い出すからかな?

 それでも幼い娘を残して家を去るなんて、魔王のくせに意気地なしね。


「仕事って?」


「サーベイ様の魔法は観測魔法というもので、その力で世界の動向を観測しており、異常が起きた際は元老院に連絡を行うお仕事です。世界全てを観測するために世界の外側に居ると聞いています」


 上位魔法『観測魔法』なら出来るか。

 あの魔法で魔王って凄いわね。


「情報、ありがとう」


 メイドに約束の金を渡す。

 

「他に娘と母親に関する情報はある?」


「確か、アリアネル様が亡くなる前にルナ様と二人で何か話していたような。それと葬式の後、ルナ様が血相を変えてサーベイ様の元に向かわれたことを覚えています」


 二人でね……そこに探索者になりたいって事が関わってくるのかしら。そして葬式の時に、あのルナが血相を変えるなんて、何かありそうね。

 そろそろ師匠として弟子の事情を聞かないといけないと思っていた所だしね。


「本当にありがとうね」


 更にメイドに金を渡し、ルナの元に向かう。

 思っていた通り、大図書館で本を読んでいた。


「ちょっと良いかしら?」


「何、師匠」


「貴方が探索者になりたい理由が気になったんだけど、私の読みが合ってるなら。母親のアリアネルが関わっているでしょ?」


 ルナは読んでいた本を閉じる。


「はぁ……私の部屋で話しましょうか」


 私はルナに連れられ、部屋に入る。

 そこは女の子らしさとは無縁の本まみれで壁中には付箋や資料が貼り付けられてあった。

 どれも迷宮や探索者に関わる情報だった。


「ルナ、魔法の勉強もしたら?」


「してますよ」


 そうルナが指差す机には魔法に関する本が置かれていたが、規模感で言えば少しに過ぎなかった。


「それで私が探索者になりたいのが何故か。聞きたいんですよね」


 私とルナは向かい合って座る。


「簡単な事です、私は探索者に憧れているんですよ」


 アレ思っていた答えと違う。もっと重いのが来ると思っていたのに。


「死んだ母が幼い私に読み聞かせてくれたのは自身が探索者の時に体験した物語でした。幼い私は母の冒険に憧れ、私もそんな冒険をしてみたいと思っていた。でもそんな時に母は死にました」


「シェリーを産んでから体が弱っていっているのは分かっていましたけど私は母が死ぬなんて全く思っていませんでした。だって母が冒険で体験した危険なことの方が私にとっては今の状態よりも危険に思えたし、死んじゃうかもしれないと思えたから、その予想を裏切るように母は安らかに死にました」


 その言葉一つ一つに深い悲しみを感じた。


「シェリーさんを恨んでる?」


「シェリーを恨む? 恨むわけじゃないですか、シェリーは私のたった一人の家族ですよ」


 たった一人の家族? 父親、サーベイは?


「サーベイも家族じゃないの?」


 ルナは一拍置き、私にその言葉を平然と告げる。


「父はもうこの世に多分いませんよ」


「え?」


「メイドや世間では母は妹の魔力に当てらた事で体を壊し、それがたたって死んだことになってますけど真実は違います。母は確かに魔力に当てられましたけど、シェリーを産んだ以降は回復傾向にありました。でもあの日、母は急に死んでしまった」


 どういう事? ルナは何を言っているの?


「母は死ぬ前、自分の死を予見していたのか。私と二人きりで会い、こう言いました。もし、私が死んだら葬式の席で変な言動をしている奴が犯人よ、犯人が分かったらこの会話と犯人をお父さんに伝えなさい」


「私は母の死んだ悲しみを心の奥にしまい、母の言いつけ通り。葬式で変なことをしたり、変な事を言っている人が居ないか注視してました。そこで私は犯人を見つけ、父に伝えました」


「父は葬式後、犯人の元に向かいました。父はその日は帰って来ず、次の日になると仕事に行ったとメイドに言われました。その日から父の姿は一度も見てないので間違いなく死んでいるでしょう」


 この子、自分の両親二人とも殺されているのに。


「犯人は誰なの?」


「母が弱っていたという噂を広め、メイドたちにサーベイは仕事に行ったと言い、メイドたちに自分らの事を隠すように命令できる人たちがこの家には居るでしょう」


 もしかして……


「……長老会」


***


「あの家庭教師がアリアネルの事を嗅ぎ回っているとメイドが」


「厄介な。家庭教師の仕事だけ全うしていれば良いものを」


「どうします? 依頼通り、殺しますか」


「そうさな……計画より早いが殺すか」

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