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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第70話:過去、魔法とは

「さて、講義を始めるよ。二人とも元気かな?」


 ジェニーはメガネを付け、真面目な教師感を出していた。


「師匠……おばあさんが教師コスプレはきついです」


「うっ……師匠に向かって、その口の聞き方はないんじゃないか。まぁ、貴方の態度が変わらないのは想定していたけど……でも返事しないと今日の講義は無しよ」


「はい」


「は〜い」


「よろしい。それでは講義を始める」


 こうして二人揃り、賢者候補ジェニーの本気講義が始まった。


「魔法使いは才能の極致よ。一の努力をすれば10の結果を得て、その分強くなる。才能と努力によって際限なく強くなれる……だから、強くなりたいのなら努力すれば良い。ここで言う努力は戦闘訓練で己の魔法への理解を深めることと座学で魔法行使技術の向上を行うことよ」


「分かりました。これからはその努力をするということですね」


「するけど、その前に先生から二人に質問があるの? さっき私が言ったことが合っているのなら長い時を生きている魔法使いの方が強いと思うけど、実際は若い魔法使いの方が強い。それは何故だと思う?」


「シェリー、分からない〜〜」


「加齢による身体機能の低下が魔法行使の質を落とすからだと思います」


「それも答えだけど、根本的な部分は才能の差よ」


「才能の差?」


「魔法使いは才能の極致……だけど、それは魔法使いではない者からの視点。魔法使いの中でも才能の差はあり、明確に影響しているのは魔法の格ね」


「魔法に格があるんですか?」


「魔法杖と同じような格付けされていてね。貴方たちは二人とも最上位魔法の魔法使いよ」


「最上位魔法……」


「今まで魔法の格はその魔法を行使してきた今までの魔法使いの功績や武功で決まっていた。でも、それは違った。魔法は新たな行使者が生まれるたびに前任者の創意工夫を元に最適化され成長していくことが分かったの。つまり、強力な魔法使いが使用していた魔法は強力になっていくということ……長い時を掛けて育まれた全ての魔法を網羅した10代目賢者『魔位の単位』ステスは最も強力無比な10の魔法を最上位に位置付け、十大魔法と呼んだ」


「ルナの潜性魔法、シェリーの顕性魔法、私の構築魔法が十大魔法のうちの三つよ」


「まぁ、今言った才能の差や魔法の格や十大魔法について知ってるのは魔法使いの一部と後は魔術師の中でも魔法使いとの戦闘を想定している者たちだけね」


 今までの魔法使いの大半は成長すること努力することを怠ってきた。

 だからこの情報を知っているのは真に努力してきた魔法使いたちだけ。


「——『構築』」


 ジェニーの側にルービックキューブが生まれる。


「私の魔法は一を十に拡張する事が得意なの。賢者候補として持つ知識とこの魔法で貴方たち二人の固有魔法の運用方法を考えてあげる」


 瞬間、ルービックキューブが揃った。


 ジェニーの手によって二人は武器を得た。

 潜らせることしか出来ないと思っていたルナに潜性対象の拡張と浮上の方法を、

 生み出すことしか出来ないと思っていたシェリーに操作と変形、万能性を、


「『顕現』」


 シェリーの側に炎球が生まれ、それを操作する。


「そうだよ、シェリー。生み出した対象とパスが繋がっているならパスを通して操ることも出来る」


 炎球が魔法陣によって消える。


「『潜性』——『浮上』」


 消えた炎球は再出現したがシェリーとのパスを失い、ルナの物になった。


「それなら一度潜らせてパスを切断し、浮上する際に私とパスを構築すれば私の物にもなりますね」


「お姉ちゃん、ズルい」


「ズルくないわよ、これが私の魔法なんだもの」


「それなら、これ全部潜らせられる?」


 瞬間、数十の火球が生まれる。


「勿論よ」


 だが、すぐに消え失せる。


「ハハ……二人とも凄いね」


 ジェニーは二人の才能の片鱗を感じていた。

 もしかしたら、この二人のどっちかが魔王になるかもしれないわね。


***


 朱の魔法使い、長老会。

 暗く薄暗い部屋に年老いた魔法使い10名がジェニーを囲んで豪華な椅子に座っていた。


「ジェニー殿、家庭教師の方はどうかな?」


「ちゃんと仕事してますよ」


 エロジジイ共、毎週こんな報告会要らないだろうに。

 私のことを信用してないのか、私の事を見たいのかどっち何だ?

 後者ならまぁ、当たりだろうな。

 五名ほど私のことをそうゆう目で見ている奴がいるし。


「それは良かった。しかし、我々は少しばかり後悔してます」


「後悔ですか?」


「見たでしょう? あの穢れた白い髪を……我々、朱の魔法使いからあんな汚い物が生まれるとは」


 確かにルナとシェリー以外のフェメノン・ルージュ家の人間は赤い髪をしている。


「やはり由緒正しい家から娶るべきだったのだ」


「どういう事ですか?」


「アレらの父で今代の魔王サーベイは我々が用意した者ではなく薄汚れた平民魔法使いから妻とした。だからフェメノン・ルージュの赤い髪は汚れ、あのような白い髪に……」


 ルナとシェリーの母親は魔法使いでも名家の魔法使いじゃなかったんだな。


「貴方を家庭教師に出来るのなら、もっと相応しい人間をあてがえば良かったという後悔ですよ」


 それって最初は私のこと、信用してなかったってこと。

 ムカつく。


「そうですか…それは残念な事ですね」


「どうです? 貴方が良かったら私の孫と……」


「結構です」


 私は退出した。

 ジェニーは歩きながら思考する。

 ルナとシェリーの母親ってどんな人だったんだろう。

 調べてみようかしら。

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