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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第69話:過去、最悪の出会い

 賢者、次期光明、次期精霊の三人は特別観覧席から眺めていた。

 魔王と魔王の姉を戦いを。


「あんな雑に杖技を使うとは……」


「竹に油ね」


「君ら、二人の戦いを見て気付かないのかい? あの二人は純粋に高めてきた魔法で戦いたいのよ」


 賢者が呈す。


「それを示すために互いに杖技を消費した、と?」


「ああ。あの二人の絆なら可能だよ」


「木に竹を接ぐよ」


「ああ、次期精霊の言う通りだ。あの姉妹がそんなに意思を通わせているとは思えない」


「周りから見ればそうでしょうね」


 賢者は思い出す。

 あの二人の師匠であった頃を。


***


 8年前。

 当時の私はまだ賢者ではなく賢者候補の一人だった。

 しかし魔塔の副主人としての実力と手腕が周囲に認められ、フェメノン・ルージュ家の長老らに賢者として推薦して貰う代価として97代魔王『監視の魔王』サーベイの二人の愛娘の家庭教師を引き受けることになった。

 賢者候補者であり、数々の法則などを発見してきて私であっても、人を教え導く経験など無かったので適当に魔法への理解など教えるだけにするつもりだった。


 魔法使いの家庭教師は大変な仕事で専用の資格が必要だったが、去年から始まった10代の魔法使い全員に行われる精神系統魔法使いによる精神安定の方法の習得と精神鑑定による問題解決が、始まった影響で魔法に苦しんで魔法によって増長する魔法使いが減るため資格そのものが廃止され、誰もが家庭教師になれるようになった。

 私も学生時代、魔法によって苦しむ魔法使いを多く見てきたから少しだけ嬉しかった。

 まぁ、要するに簡単な仕事になるだろう。そう思っていた。


「初めまして、私はジェニー・フェメノン・アージュ。貴方たち二人の家庭教師よ」


 通された部屋には同じ銀色の髪をした少女が二人居るって聞いたけど、そこには幼い少女が一人だけ居た。


「先生。私はシェリーです、よろしくね」


 何、この子……

 私より魔力多くない?


「よろしく、シェリー。お姉さんのルナはどこに……」


「お姉ちゃんはどこか行っちゃった」


「どこかって……」


 訂正しよう。

 家庭教師という仕事は私が想定していた以上に大変な仕事かもしれない。

 ひとまずシェリーに講義し、終えるとルナを探しに向かった。

 ルナは最初に探しにいったフェメノン・ルージュ家の大図書館ですぐに見つかった。


「貴方がルナかしら、私は……」


「ジェニー・フェメノン・アージュ。三人いる賢者候補者の一人で私と妹の家庭教師でしょ」


 その少女は妹と同じく美人で、私の方を向かずに本と睨み合っていた。


「知っているなら話は早いわ。初回から講義を欠席するのはいけないことでしょ」


「おばあさん……私、座学嫌いなの」


「おばあさんって……」


 落ち着くのよ、ジェニー。

 ここで粗暴な態度をしたらあの長老会(エロジジイ共)との契約が無くなるわ。


「合ってるでしょ。若作りの50代賢者候補者さん」


 この子、なんて観察眼。

 私が20代頃から体を改造して保っている事に気づくなんて、年齢だって誰にも言った事ないのに。

 でも少し違うところがある。


「まだ49だから40代よ」


「40も50も変わらないでしょ」


「変わるわよ」


 精神系統の魔法使いは本当に何をしているのよ!

 こんな少女、精神に問題大アリでしょ!!

 頭を抱えながら会話を続けようと彼女が読んでいる本のタイトルを見る。

 何々……探索者になるための秘訣。

 へぇー態度は気に食わないけど読んでいる本は年相応ね。


「探索者になりたいの?」


 やっとルナは私に顔を向けた。


「何か問題でも?」


「いえ、問題ないわ。ただ相応する実力があるのかなって?」


 ルナの顔がキリッとする。


「だってそうでしょ? あの探索者よ、自分の命だけでなく仲間の命も賭けられるほどの実力がないと探索者にはなれないのよ」


「おばあさん、はっきり言ってくださるわね?」


「座学が嫌い? 座学が出来ない魔法使いは弱いって言ってるのよ」


「ジェニーさんって言ったかしら?」


「そうだけど」


「その言葉を訂正する気があるなら今すぐ……」


「ないわ。弱い者を弱いって言って何が悪いの?」


「殺す」


 やっと年相応の顔になったわね。

 ここは頼れる大人、家庭教師として教えてあげないとね。大人と子供の格の差を、ね。

 私はルナと戦い、簡単にぶち倒した。


「はぁはぁ……強すぎでしょ」


「私は強いけど、それ以上に貴方が弱いのよ」


 ルナは俯き、涙を流す。


「私は早く強くならないといけないの! お母さんのために!」


 お母さんのためか。

 確か二人の母親は元は有名な探索者だったらしいし、探索者になりたいのもその影響かな。


「強くなりたい?」


 私は手を差し伸べる。

 最初の態度は気に食わなかったけど今は年相応で面白そうだし気に入った。


「強くしてくれるの?」


「ええ、私が強くしてあげる。そのためには講義に出て私を師匠と仰がないとね」


 楽な仕事はやめよう。

 本気で強くする。


「お姉ちゃんと先生何してるの? シェリーも混ぜて」


 シェリーが笑顔で寄ってくる。


「妹も増えたけど、どうするの?」


「最初から二人とも鍛えるつもりよ」


 ルナは涙を拭う。


「師匠、私を強くしてください」


「シェリーも強くして」


 こうして後の賢者を師に仰いだ二人だった。

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