表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
69/79

第68話:姉妹喧嘩

 第一回戦の後、俺はブランの魔奥で受けた負荷で気絶してしまった。

 だから、第二回戦の内容は人から聞いた内容と動画による物だがその戦いを見た皆んなが言う。

 あの戦いは魔法使い史上、最高の戦いだったと……


「決勝戦の相手が黒曜濡羽に決まり、ますます魔術師初優勝が見えてくる中……魔術師を阻むのは今まで一度も優勝を奪われたことのない魔法使い。そんな魔法使いの中でも最も強く最も血の濃い朱の魔法使い二人がぶつかる」


 実況の言葉が響く。


「片方は98代目魔王『現実の魔王』、シェリー・フェメノン・ルージュ!」


「もう片方はその魔王の姉にして防御の天才、ルナ・フェメノン・ルージュ!」


 二人は色感の違う長杖をそれぞれ構える。


「二人の若き朱の魔法使い。どちらかが決勝戦に進み、魔法使い優勝を成すのか!?」


 歓声と拍手が会場を包み込む。

 全員が確信していたこの二人の戦いは最高のものになると。


「互いに健闘を祈って——ファイト!!」


 同時に二人が動く。


「顕性魔法——」「潜性魔法——」


 互いが手に持つ杖の先端が相手に向けられる。


「『顕武(ウェポンズ)』」「『潜浮』」


 顕性魔法によって生み出された無数の武器群がルナに向かって放たれる。

 それを潜らせると同時に浮上させ、シェリーに返す。

 シェリーもまた帰ってきた武器群を新たに顕現させた武器群で破壊しながらルナに向かわせる。

 流れ作業の停止と同時に二人は互いに距離を詰める。


「はあぁぁ!」


「ああぁぁ!」


 同時に振るわれ交差した長杖と先端から伸びた魔力刃がぶつかる。

 魔法使いの杖=魔法杖はキングクラウンで禁止させられている武器に含まれない。それは杖自体が会得していないと扱えない一種の魔法だからだ。


 魔法杖は過去の魔法使いが作り上げた、魔法を最適に扱うための魔法使いなら誰も習得できる魔法であり、魔法杖の性能いわば格が高いほどその習得難易度は上がり、最上位の魔法杖ともなればその難易度は去ることながらその血脈=一族の者にしか扱えない魔法杖も存在する。


 その最たる例がシェリーとルナがそれぞれ持つ魔法杖だ。

 シェリーの持つ紅い魔法杖『血朱の絶滅杖』は初代魔王から習得出来た魔王全員が愛用した魔法杖だ。

 ルナの持つ白銀の魔法杖『月銀の白球杖』は上記の魔法杖を習得出来なかった魔王が愛用した魔法杖だ。

 どちらも魔法強化、魔法発動速度上昇、詠唱強化、詠唱速度上昇、魔力回復速度上昇、魔力容量強化、魔力刃など持つだけで魔法使いを一、二段階強化し、更に最上位魔法杖ともなれば独自の技を持つ。


「杖技『血天の贄滅(サクリファイス)』」「杖技『白銀の双球(スノーアース)』」


 シェリーとルナの持つ杖が変化した。

 紅い魔法杖は三日月の刃を持つ槍のような形に、白銀の魔法杖は天秤のように二つの球を支える形に。

 今発動したのは魔法杖作成者が杖に込めた固有魔法で、始まり魔女が生まれるよりも以前の時代。まだ魔法使いではなく神の名を冠していた者二人が作り上げたとされ、どちらも一度この星に対して魔法を行使している。

 星に掛けられるほどの魔法を現代魔法使い二人が行使した。


「シャマシュ・ウトゥ」


「シン・ナンナ」


 時間、加速、過負荷、燃焼あらゆるもの全ての前転が……

 時間、失速、停止、凍結あらゆるもの全ての後転が……

 概念と概念が絡み合い、撹拌し、対消滅した。

 二人はそうなる事が分かっていた。

 だからこそ、次に行動に移る。

 シェリーは理解していた。

 姉の魔法の前には自分の魔法が意味を成さないことを。

 ルナは自覚していた。

 妹の魔法を防ぐのを一度でも失敗すれば負けるのは自分だと。


「『顕環(オーブ)』」


 シェリーの周囲に六つの環が顕現する。

 ルナはすぐにそれを潜らせようとするが、それよりも早くルナの顕性を発動する。

 千を超えるであろう炎、水、雷、風などがルナの周囲で舞う。


「姉さんの魔法は確かに厄介だけど限界もあるでしょ……我慢比べしよっか」


 瞬間、一斉にそれらはルナに向かう。


「潜性!」


 シェリーの魔法を潜らせるほどにシェリーは更に多くを顕現させる。

 言葉通り、我慢比べだ。

 互いの魔法と技術、どちらが先に折れるか。

 でもそんな勝負をシェリーは絶対にしない。姉ゆえにそう確信したルナは駆ける。

 その確信は正解で、我慢比べを始める前にシェリーが顕現させた『顕環』には確実にエネルギーが貯められていた。顕環は顕性で生み出された属性攻撃の余波を溜め込むことで、大きな一撃を放つことが出来る。

 シェリーが万を超える属性攻撃を顕現したタイミングで、顕環は満タンになる。


「姉さん、これは防げる?」


 六つの環から光線がルナに向かって走る。と同時に万を超える属性攻撃が迫る。


「シェリー! あまりお姉ちゃんを舐めないことね」


 先の試合で私は貯蔵庫にあった全てを使い切った。 

 だから潜性魔法による浮上攻撃は相手が放った攻撃を返す際にしか出来ない。

 でもこの場にある物を潜らせれば……

 今、この現実の三次元空間を意識し感じ取り潜らせる。

 そして深く深くし、一次元、線の世界に。

 立体から線にした空間を—— 


「潜性魔法『潜針』」


 線という名の針が浮上し、空間の針は光線も万を超える属性攻撃も崩し、破綻、破壊する。


「何をそれ!『顕閃(レイ)』」


 六つの閃光がルナに向かって奔る。

 しかし針が巻取り、遠くに縫い付ける。

 ルナは駆ける。

 杖を離し、拳を振るった。


「くっ……」


 拳は軽いが確実にシェリーの頬を殴った。


「シェリー。私にとってこの戦いはただの姉妹喧嘩よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ