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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第56話:溺魔

 状況はミア有利で進んでいる。

 狂戦士、全身を狂気で包む事で異常なほどの身体強化を施す魔術。

 その強化によってミアはルナの魔法を発動する速度を超え、一度動けば目にも捉えることが出来なくなった。

 しかし、その代償として異常な強化で筋肉は千切れ、魔力線は肥大化し、それらは人体に害しか与えない。


「ぅ……」


 ミアは吐血したが、すぐに拭った。

 後、10分それが狂戦士を通常運用した場合の発動限界でありそれを越えれば最悪死んでしまうし、狂戦士を発動した状態で本気で動けば体への負荷は相当なものになる。


「キツそうですね。すぐ楽にしてあげますよ!」


 第一回戦で見せたように潜性を広げ、試合場一帯を沼のようにした。

 これで自慢の速さも発揮出来ないはずだったが、ミアは沼の拘束を無理やり解くほどの速さで沼を蹴り、ルナに迫り、拳を振るった。


「チッ」


 拳と杖の持ち手がぶつかる。

 沼は突破されたが、ミアのスピードは格段に落ち、ルナの目にも捉えられ魔法も……


「潜性』!」


 魔力が潜らされ、狂戦士が解除される。

 だが、これでルナはミアの目の前で重要な一手を使ってしまった。


「黒雷!」


 速さ特化の黒斑が飛ぶ!

 この距離と速さではルナには防御も回避も不可能に思えた。

 先ほど、潜性を使ったために“自身を潜らせる“こともすぐには無理だ。

 ミアと観客全員、攻撃が入ることを確信した瞬間——

 ルナの足元にある沼が揺れ、ルナの体を横へと超高速で動かした。

 ミアの拳が宙を殴る。

 確かにそれなら可能だった。事前に発動していた魔法の操作なら間に合う。

 そしてこの距離で危険なのはルナだけではなくミアもだった。

 ルナの手がミアに触れそうになった瞬間——


「狂戦士!」


 再度、異常な身体強化を施すことでルナの側から離れる。

 その理由はルナの一つの噂からだった。

 それはルナが持つ唯一の攻撃魔法のことで食らった者はルナが殺さない気であっても溺れてしまうという物で、それをくらった者は二度とルナには近づかず逆らわないという。

 噂が本当なら、その攻撃魔法は対象に触れないと発動できないから距離を取るかルナの反応出来ない速度で動けば良い……!

 いつの間にか側に来ていたルナの手が当たりそうになり、本気で回避する。

 回避したミアを追うようにルナは沼を滑るように超高速で移動する。


「なかなかやるじゃない」


 なるほどね、この沼は私の動きを制限すると同時にアンタの動きを強化する為の布石。

 あの“自分を潜らせる“事での転移は長距離運用と緊急回避が目的で、戦闘ではこっちを使うわけね。


「貴方の体はもう限界でしょう」


 流石に見破るわよね。

 本気を2度使ったから活動時間は後5分で本気は後2回使えるけど、これでルナを倒せるかどうか。

 いや、倒すのよ。そして濡羽を堕とす。


「狂舞踏」


 狂舞踏、ステップに狂気を重ねることで移動と回避のしやすさの向上。

 先ほどから発動している狂戦士と重ねる事でその真価は発揮される。


「これは回避出来る、『潜弾』」


 ルナが放ったシャボン玉のような物がミアに触れ、弾ける。

 潜性で潜らせた対象が潜る次元が低いほど、その対象は低次元に相応しい姿へと圧縮されてしまう。

 だからルナは浮上させる魔術や魔法は三次元と二次元の間ほどまでしか潜らせないが、点の一次元まで空気や水、光を潜らせ極限まで圧縮した状態で急に浮上させ放った、それは——衝撃の爆弾と化す。

 弾けた瞬間、シャボン玉の大きさでは考えられないような衝撃がミアを襲う。


「くっ……」


 衝撃でミアは体勢を崩し、動きが止まった瞬間。


「『潜水』……」


 自身を潜らせ、ミアの背後に浮上し、彼女の肩に手を置く。


「!」


「『溺潜』」


 瞬間、ミアは放り出される感覚と同時に水中で浮いているような感覚が襲いながらも水も何もない空間に居た。

 三次元と二次元の間の世界、奥が不安定の世界。

 そして、そこはルナの魔術、魔法の貯蔵庫。

 ミアの周囲を数え切れないほどの魔術と魔法が囲んでいた。

 ヤバい、そう恐怖しながらミアは思い出す。

 あの噂と同時にルナに付けられた異名を、対象を溺れさせる魔法使い……溺魔。

 一斉に魔術と魔法がミアに襲いかかる。


***


 私は一人、試合場に立っていた。

 ミアをあそこに潜らせて2分経った。

 そろそろ限界だろうし、負けを認めているころでしょ。


「浮上」


 浮上してきたミアは血だらけでボロボロだった。

 もう戦えそうになくこれ以上は生死に関わるだろう。


「第二回戦第三試合、勝者……」


「まだ負けてないわよ」


 ミアが血だらけの状態で立ち上がった。

 ルナは驚愕する。

 魔法使いであっても2分もあそこに送れば立つことなど不可能な傷を負うはずなのに。


「その傷で何が出来るの?」


 私は杖を構えながら自分を落ち着かせる。

 あのミアでも戦うことなんて……


「狂宴魔術、『狂復』」


 人外の異常な回復力でミアの全身の傷が治っていく。

 爛れた肌、折れた骨、傷ついた神経、砕けた頭蓋、壊れた脳がたちまち元に戻る。


「勝負はこれからでしょ?」


「ええ、そうね」

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