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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
生徒行方不明事件 〜魔法に恋し、親友を愛す〜
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第5話:勅令

「まず、最近このアヴァロンで起こっている事件は知ってる?」


 ミアの言葉にタクオ以外が首を横に振る。


「噂を聞くほど僕たちは暇じゃないんで」


「同感だな」


 俺は織可の言葉に賛同する。

 噂を聞いてるより勉強の方が有意義だ。


「そうね。アンタらならそう言うと思っていたけど、本当にニュースとか興味ないわね。タクオは知ってるなら二人に教えて上げて」


「ミアたん、了解でござる。良いですか、濡羽氏、織可氏。最近、学院中で起こっている事件とはキルケロスでござるよ」


「何だ、それは?」


 キルケロス?

 ケロベロスみたいな物か?


「まさか、魔薬科の天使キルケ・ケーオンを知らないと」


「知らないな」


「良いですか、濡羽氏。ミアたんと並んで美少女と称されている1学年のキルケ・ケーオンがオデュッセウスという2学年のイケメンに取られた事で校内中のキルケファンがロスに苦しんでいるのでござるよ。拙者はミアたんのファンだから軽傷で済んだでござるが、キルケファンの中にはストレスで鬱になった者が多数いたらしく講義への出席者が減って講義にならないそうでござる」


 ミアはタクオの説明に終始呆れていた。


「あぁ、この三人に尋ねた。私がバカだったわ」


「本題に戻るわ。最近、アヴァロンの生徒が行方不明になってるの」


「勉強に追いつけない生徒の脱獄だろ。よくある」


 アヴァロンは来る者は拒まないが去る者には厳しい。

 卒業単位一万単位を達成しかつ難関な卒業試験を合格しなければ、この島から出ることは出来ない。

 一応、島から出られなかった者は学院街で住むことも出来るが、この島から無断で去る者もいる。


「その脱獄人数が今月中で50人はおかしいんじゃない」


 50人と言えば、一クラスほどの人数だ。

 確かにおかしい。


「おかしいことは分かったが、その事件がどうしたんだ?」


「学院も卒業が控えているこの時期にそんな事件が起こっている事を重く見たみたいで最高学年の私たち、特に卒業単位を満たしていない人に勅令(オーダー)を出したの」


 勅令、学院側から指定生徒または全生徒に出される突発的な課題で、課題を達成した者には通常の試験では得られるないほどの単位が与えられる反面、その課題の難易度は高く魔法使いでも達成する事は難しい。

 三年前に出されたのを最後に出ていなかったがこの時期に出すのか。

 まぁ、単位の足りない俺とミアにはありがた話だ。


「勅令か。内容と達成報酬は?」


「生徒行方不明の原因を解明せよ。解明した者には先着一名に一万の単位と報酬を出す」


 俺は驚きで立ち上がった。

 一万単位だと、三年前の勅令の報酬でも2500単位だったのに。

 俺の単位数は5000、ミアは7500。

 二人で分けても余裕で卒業出来る。


「その情報はどこ情報だ? てか、それ絶対にまだ発表されていない情報だろ」


 そんな旨味もある話を俺が見逃しているハズがない。


「ちょっと生徒会の人間を誘惑して……」


 え、体を使ったの?

 俺の表情から心配されている事を感じとったのかミアは慌てて言い訳し出した。


「ちょっと顔を近づけて声を掛けただけで体にも触れてないし触れさせてないから」


「ミア、流石に卒業が心配だからって不純異性交遊はいけない」


 織可も真面目に苦言を呈す。


「だから、してないって!」


 抗議するミアを尻目に俺は考え出す。

 三年前の勅令を達成した時とは全く違う課題だ。

 聞き込みだけじゃ、無理だ。

 もっと本質的な情報を入手出来る手を考えないと。


「一つ良いでござるか」


 無言で聞いていたタクオが急に言い出した。


「流石に事件となると学院側が魔件局を動かすのではござらんか?」


「それはない。勅令を出すのは学院長ではなく理事を務める九人の魔女だ。学院の人間が魔女の決定に逆らうとは思えない」


「そうでござるか……」


 魔件局が動いたら、もう勅令どころの騒ぎじゃなくなるしな。


***


 学院長室。

 学院長ジェントは机を間に挟んで二人の人物と見合っていた。


「ジェント学院長。通報の内容は本当ですか?」


 渋ヒゲの男性がジェントに尋ねる。


「はい、本当です。理事らは勅令で生徒に解決させようとしていますが、生徒に危険が及ぶかもしれないと私は危惧し、通報しました」


「なるほど。確かに正当性はありますが、何故秘密裏に解決しろと」


「それは重ねて言いますが生徒を思ってです。生徒たちには行方不明になっている者たちの事を様々な理由を付けて騙しているんです。もし、ここで真実を知ったら生徒たちが悲しんでしまうでしょ」


 それは明らかな嘘で、生徒家族からの非難を恐れたものだろうというのは容易に想像できた。

 青緑髪の女性が軽蔑の表情を浮かべる。


「では、要望通りにお願いしますよ」


 そして二人の捜査官の名前を口にする。


「シュッツ・ラウル・ディネ捜査官とクリス・カルチャス捜査官」

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