第48話:占い
午後にも魔女の競技会の競技はあるが、俺の周りの人はほとんどキングクラウンに出場しているので暇になり、その時間をミアに予約されていたため、俺は今ミアと共に大競技場の外に広がる屋台や露店などを見で回っていた。
流石と言うべきなのか、ミアはここに来るまでに四人の男性から声を掛けられている。
いや、ナンパとかする人って隣に男が居ても来るものなんだと学びを得た。
「色んな露店があるな。ミア、何か必要なものないか?」
露店には様々な魔薬を作る上で必要な素材が売っており、中には珍しいものも多くあった。
ミアは魔薬科も受講しているので、授業や私用で必要な素材もあるだろう。
「う〜ん、それなら……蜜桃の葉、石榴の実皮、恋紅珊瑚……」
「待て待て、その素材ってロマンチック型の惚れ薬の材料だろ」
「だって、誰かさんが一生気づいてくれなから」
いやいや、惚れ薬は合法だけど普通に恋しろよ。
てか、ミアにも好きな人いたんだな。
「はぁ、危険な忘却の方が良いかな……」
ミア、何言ってるんだ。
危険な忘却って対象の記憶を消すことで惚れさせる禁薬だろ。
「そこのカップルさん、占いでもしてかへん? ええ体験できるで?」
大きなテントの側に立つ三角帽にローブを着た典型的な魔女の格好をした紫髪の女性が誘ってきた。
「カップルじゃない、親友だ」
俺とミアのどこがカップルに見えるんだ。
「え、カップルじゃあらへんの」
「占いって相性占いもできますか」
「ん〜、言うとくけど、うちはタロット占いしかでけへんよ? まぁ……ちょっと特別やけどなぁ」
タロットカードか。
タロットカードの原型は始まりの魔女が生み出しとされ、その影響か魔法的にも魔術的にも重要で優秀な功績を残した魔法使いに与えられる称号も秘級魔術師も大アルカナの名を冠する。
明日の試合の願掛けも兼ねて占うか。
「一回、何円だ」
「そんなん気にせんでええ。おもろい未来が見えたらタダでええわ」
面白い占い師だな。
でもタダになるかもしれないならやって損はないな。
「じゃ、やるか。ミアも占うか」
「うん、面白そうだし」
「ほんなら、こっちに来てな」
俺は占い師に連れられ、テントの中に入る。
テントの中は暗く、机の上にはタロットカードの束が置かれていた。
「普通のタロット占いっちゅうんは短い期間の未来を見るもんやけど、うちのはちょっとちゃうんよ。うちのタロット占いは——はるか先の未来、運命の果てまで見えるんやわ。せやから、質問はそのつもりで考えてな」
はるか先の未来か。
「それってどのくらい先の未来なんですか?」
「どのくらいって? さぁなぁ、そこまではうちにもわからん。一年後かもしれんし、10年後かもしれん。まぁ、年単位で起こることやってだけは言えるな」
年単位先の未来を占うのか。
それは慎重に質問内容を考えるべきだな。いや、あまり考えるより単純な質問の方が良いな。
「俺はこの先、後悔するかどうか占ってくれ」
占い師は俺の質問に驚いたようだったが、すぐに落ち着きを取り戻し俺にタロットカードの束を手渡す。
「ほな、その質問を頭に思い浮かべながらシャッフルして、カットをして……はい、うちに渡してな」
言われた通りシャッフルとカットし、占い師は渡す。
占い師は受け取ったカードに魔力を通し、占い師は3枚のカードを裏返した状態で机に広げる。
「この3枚のカード、左から順に“現在“、“近い未来“、そして“遠い未来“を表してます。めくっていきましょうか?」
「ああ、頼む」
占い師は一枚ずつ捲っていく。
正義の正位置、太陽の正位置、塔の正位置。
「ふむ……ほぉ〜、これはまたおもろい未来やなぁ……」
「後悔するのか?」
「せやねぇ、アンタ……後悔しますわ。しかも、自分を責めすぎて——
死んでまいそうなくらいに」
「内容は」
後悔するなら、後悔しないために行動しないとな。
「おっと、そんな顔せんとき。未来をそのまま聞くのはおもろないやろ? 未来っちゅうのはな、無数の糸が絡まり合った“糸束“みたいなもんや。行動次第では、もっとえげつない結果になることもある」
その時、占い師は不適な表情を浮かべた。
「せやけど、ヒントだけはあげときましょ……“強くなりぃ“。色んな意味で、や。そしたら後悔することもなくなる」
強くなれか、昔と変わらないな。
「ほな、次はお嬢さんの番やね。どんなこと占うん?」
「私は幸せになれますか?」
「ふふ、貴方もなかなかおもろい質問するやないの」
その後、俺がしたようにカードをシャッフルとカットし、占い師に渡す。
占い師は3枚のカードを広げた。
「さてさて……カードめくっていきますえ」
星の正位置、恋人の正位置、死神の正位置。
最後のカードから不幸な未来が見えた。
「ふむ……なるほど、なるほどやな」
「アンタ、自分が今ほんまに“幸せ“やと思う?」
「え?」
「……そうか、忘れてしもたんやねぇ」
「ほな、うちの仕事はここまで。終わりや、帰りぃ、二人とも——もうじき夜がふかうなるで」
そう占い師は回答を避け、俺とミアをテントから追い出した。
テントから出ると、さっきまであったテントは消えていた。
「何だったんだ?」
「そうよ、結果も言わずにエセ占い師だったんじゃない」
「そうか。そうだよな」
「はぁ、デートの続きしよう」
「そうだな」
え、これデートなの。
俺とミアは露店と屋台の間を進む。




