表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
47/78

第46話 居合、抜刀

「抜刀魔術、居合『構え』」


 宗近が刀を構えながら魔術を行使した瞬間、駆ける。

 そして刃を振るった。


「抜刀魔術、居合『抜刀、一文字(いちもんじ)』」

 

 斬撃が走る。

 全てを斬る、はずの斬撃は空を薙ぐ。

 驚く宗近の背後に織可の姿があり、彼は拳を容赦なく叩き込んだ。


「くっ」


 宗近は距離を取る。


「黒曜秘伝『黒影』」


 残像を残す事で相手を錯覚させ、背後から強襲する。

 魔術の発動が遅い織可にとっては、回避と攻撃を同時に行える利点の多い技だ。

 そして一撃目を凌ぎ終え、やっと発動出来る。


「盆景魔術」


 領域内の景色は勿論、福州式。

 橋が架けられた鯉泳ぐ池を中心に岩山と石畳の道が続き、目を引くのは一番高く水流れる人工山の上に建てられた冶亭と対岸にある展望台だろう。

 盆景魔術に登録する景色のルールは厳しいが登録してしまえば物理法則とその景色のルールに則っていれば自由に改変することが出来る。

 僕は冶亭から展望台に立つ宗近を観察する。

 黒茶色の髪を短く切り揃え、腰には鞘を差している。

 雰囲気は魔術師というより剣士という感じだ。

 濡羽もこいつと同じ感じだけど、まだあいつの方が魔術師らしい。


「茶淡織可」


「何ですか?」


「黒曜秘伝を習得したようだが、まだ荒削りのようだな」


 胸から血が流れる。


「うっ……」


 回避したと思っていたが、切られていた。


「私の抜刀魔術は抜刀という術技を拡張するだけの魔術、ただの凡夫が使えば塵だが剣術の天才()が扱うことで魔術としての体を成し、魔法を超えると自負している」


「そうかよ……なら見せてみろ!」


 傷口を抑えながら刃に変えた枝葉を操作し、宗近の元に向かわせる。


「居合『構え』」


 宗近は納刀し、魔術を発動する。

 抜刀魔術、居合『構え』。

 この術の効果は単純、納刀時と抜刀後の一秒まで切断力と敏捷性の大幅な向上。つまり、この切断力向上の恩恵に預かりたいなら抜刀から一秒以内に対象を切断しないといけない。

 それがどれだけ困難なことかは想像に難くなく、そんな困難なことを宗近は平然と行い、一秒以内に最大——


「居合、『抜刀、十文字』」


 十連撃行う事が出来る。

 枝葉らが一瞬で粉々に切り捨てられる。


「居合、『構え』」


 納刀し、敏捷性を向上させ池の水面の上を走り、冶亭に向かう。

 しかし、それを阻むように水面から牙の鋭い鯉が飛び出す。


「少し攻撃的にしてみたよ」


 領域系統魔術も種類によるが生物を生成できるものもあり、その生物も既存から大きく外れなければ自由に改変する事が出来る。


「居合、『抜刀、一文字』」


 胴で真っ二つにされた鯉は魔力へと消えるが、どんどん水面から鯉が飛び出す。

 枝葉と違い、一人の殺気ではなく鯉それぞれの殺気が宗近の殺気察知を鈍らせるが、宗近は冷静に対処する。


「居合、『構え』——『抜刀、八文字』」


 納刀し、抜刀し、八匹いる鯉一匹ずつを一撃で切断する八連撃、ここまでを一秒以内に行った。


「居合、『構え』」


 納刀し、水面を蹴り、織可のすぐそばまで到達する。


「負けを認めろ、茶淡織可」


「嫌だね」


 瞬間、冶亭の屋根が落ちる。

 二人とも回避するため空に逃げる。

 これは織可の策だった。

 剣術は足場が無ければ剣を振るうことが出来ない、だから空という足場のない空間に逃げるようにここまで誘導し、屋根を落とした。


「終わりだ!」


 岩山に落ちている小石を操作し、宗近に向かって飛ばす。

 確かに、剣術は足場のない所では行えない。しかし彼は剣士ではない魔術師だ。


「居合『月歩』」

 

 宗近の足元に魔力の足場が一瞬、形成され彼はそれを蹴る。


「クソ!」


 織可も慌てて回避行動を取ろうとするが間に合わない。


「居合、『抜刀、神速』」


 瞬間、光が通った。

 鉄の煌めきを見た時には、斬られていた。

 左胸から右腹に掛けて、血が飛び出る。


「ゔうっ」


 誰もが宗近の勝利を予感した瞬間、濡羽だけが織可の勝利を予感した。


「……勝った」


 両者が宙に浮く中、景色が切り替わる。


「何?」


 領域系統魔術の領域を切り替える際は発動する際と同じほどの負荷と魔力が掛かる。だから織可は準備していた、宗近に向けて枝葉や鯉を差し向け、空中に居る状況にさせるため。

 宗近がその景色を知覚するよりも速く、彼の上から膨大な水が下へと落下する。


「がぁぁあ、これは……」


 滝壺の中で何度も何度も落下する水量をくらい、理解する。

 これは滝、瀑布の景色か。

 今までの行動は私に滝をくらわすための布石、私に斬られることも覚悟しての行動。天晴れ、これは負けを認めるしかない。


「私の負けだ」


 その言葉と共に、盆景魔術が解除される。

 意図してではなく、その瞬間に限界が来たのだ。 


「第七試合、茶淡織可、対、刀剣宗近。勝者は茶淡織可!!」


 勝った織可は魔力切れで気絶していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ