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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第42話:存在意義

 全ての魔術師を管理する中央魔術境会の見解曰く……

 一級魔術師は魔術師がその才能を努力によって伸ばしに伸ばして到達できる地点で、限界地点だ。

 そこまで至った魔術師は大きな力を持ち、境会を含めて魔術界を支えていると言えるだろう。

 ならば、その上の限界地点を超えた秘級という位を授かる魔術師は魔術界の為に何をしているのだろうか。


「タリヤちゃん、何で俺を追ってきたんだ?」


 局長は言動や態度はこんなんだが、仕事に対しては真面目だし、オジサンみたいなヒラと違って局長には魔女の競技会で活躍した学院生徒から捜査官をスカウトするという大事な仕事がある。


「問題解決室の連中がうるさいのよ。あんな奴らと仕事するの嫌だから、部下に仕事を押し付けて貴方の件で逃げて来たのよ」


 真面目だっていうのは訂正しよう、真面目なら嫌だからって理由で仕事を部下に押し付けたりしない。


「シュッツくん、戻るの辞めて通常観客席の方に出て試合でも見てよっか」


「それなら仕事しながら見れば良いでしょう。魔件局の本部は問題解決室と同じですけど試合の見やすい大型VIP観客室にあるんですから」


「嫌だよ、試合に集中出来ない。通常観客席の方でないと減給するよ」


「へいへい」


 理不尽だ。

 仕方なくオジサンは局長の乗る車椅子を押して、通常観客席の方に出る。

 試合の方は第四試合が始まったばかりのようで観客は試合展開に注目していた。

 選手は準七家の風を吹かせし東雲家の魔術師と最近生まれ勢力を伸ばしつつある雷雲家の魔術師だった。

 局長は試合会場を眺めているようだったが、意識は試合に一瞬しか向けられなかった。


「試合見ないんですか?」


「ああ、見ているつもりだけど。私レベルになると何となく力量から結果は分かるからね、側から見れば試合を見ていないように思えるだろうね」


 強くなるというのもその過程も結果も苦労が絶えないな。


「シュッツくん、魔術師の存在意義って何だと思う?」


「魔術師の存在意義ですか?」


 考えたことなかったな。

 魔術師がこの世界に存在する理由、魔法使いに劣る存在であり考えれば考えるほどに無いように感じる。

 魔法使い親愛派の学者の言葉を思い出した。


「無いんじゃないんですか? 学者の言葉によれば、魔術師とは、星に存続する意味を失い少しずつ絶滅に近づいており絶滅危惧種ではなく絶滅進行種らしいですよ」


「そうかそうか、君はそんな奴だったんだね」


 どこか、覚えのある言葉だな。


「シュッツくん、質問して悪いけど魔術師の存在意義なんて無いよ」


「え、騙したんですか?」


「今は無いって話だよ。始まりの魔女を源流に多くの魔力を操る種が生まれた。魔法使いも魔術師もその中の一種であり、今に至るまで多くの種が絶えていった。長い歴史の中で魔術師は歴史に多く貢献してきたけど、進化や淘汰という物がある以上、いつか滅びないといけない。魔導師もその他多くもそれで滅び、その順番が魔術師に来ただけだ」


 局長は冷たい考え方をする人だな。


「でもね、それが逆らえない滅びという運命の流れであっても従ってはいけない。始まりの魔女曰く「魔力とは運命に逆らう反発力そのもの」だ、それに今まで魔術師の歴史を築いてくれた先人に申し訳ないからね。私はその滅びの日が必ず来るものであっても時間を延ばし続けるよ、それが星に示せる魔術師最後の功績だろう」


 局長、それは存在意義って言えるんじゃないんですか。

 そんな事を思っていると、急に近づいてきた人物が声を掛けてくる。


「ここに居ましたか? 探しましたよ、タリヤ局長。私に無駄な迷惑をかけないでもらいたい」


 その人物は高そうなローブに身を包んだ青年だった。口調と溢れ出す傲慢さから魔法使いだと分かる。


「彼は……」


 俺は小さな声で局長に尋ねる。


「問題解決室のヴィレ・ガードス室長よ」


 問題解決室、魔件局が魔術師が関わる犯罪の捜査機関なら問題解決室は魔法使いが関わる犯罪の捜査機関だがどんな犯罪でも注意だけで職員の多くは戦闘することに慣れていない。名前と力だけの組織と言える。


「君は……ただの捜査官か。私の視界から急いで外れろ、不快だ」


 なるほど、これは確かに局長が嫌がるのも納得だ。


「ガードス室長、私の部下に指示できるのは私だけよ」


「魔術師風情が魔法使いの命令が聞けないと?」


「その発言は私に喧嘩売ってるっていう認識で合ってる?」


「ああ、そうだとも。魔件局の長だからと言って貴様は図々しいんだよ。良いか、私は元老院の代理だ、元老院の命令が聞けないと?」


「ガードス……殺すわよ」


「何を……」


 瞬間、片目だけのタリヤの眼光からガードスにのみ濃密な殺気が叩きつけられる。

 ガードスはその殺気に震え、膝が砕けたのか床に倒れる。

 局長は床に崩れたガードスの羽織るローブの襟を掴む。


「私は秘級よ……分かったなら立ち去りなさい」


「チッ、魔術師風情が」


 ガードスは立ち上がり、伸びた襟を戻しながら立ち去る。

 その光景にシュッツは秘級の噂を思い出す。

 秘級魔術師とは魔法使いに対する魔術師の対抗手段という噂を。


「さて、試合も終わったみたいだし。本部に戻りますか」


 いつの間にか、試合は終わっていた。

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