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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
41/69

第40話:通常と異常

 そして試合が始まった。

 濡羽が戦う大競技場から少し離れた二つの闘技場で同時に試合が始まろうとしていた。

 観客は少なく選手関係者しか居なかった。

 それもそのはず、キングクラウンという名物競技であっても魔法使いと戦って勝つ魔術師など黒曜彼我見などの異常な実力者のみだ。

 勝敗の決まった試合ほど見るに値しないものなどないという事だ。

 それぞれの闘技場で選手は見合う。

 青髪の魔法使いと灰髪の魔術師が、白髪の魔術師と金髪の魔法使いが。


「 一回戦第二試合、カール・クラフト 対 灰骨焼火」


「一回戦第三試合、ブラン・ホワイト 対 キューピーラバー」


「「ファイト!」」


 第二試合会場、カール・クラフトは相手を見て事前に調べておいた情報を思い出す。

 準七家の灰骨家(はいぼねけ)当主の次男、灰骨焼火(はいぼね しょうか)

 灰骨家は七家の黒曜家とホワイト家に仕える事で伸ばしてきた魔術師一族で、その影響で灰骨家の人間は両家どちらかの特性を色濃く受けた者に分けられる。

 黒曜家の特性を受けた者なら戦闘特化の魔術師に、ホワイト家の特性を受けた者なら研究特化の魔術師となる。

 キングクラウンに出場している時点で、焼火は前者と考えて良いだろう。

 それに前者なら黒曜の分家から黒曜秘伝を習っていてもおかしくない。

 黒曜の影響を受けた魔術師を普通の魔術師と同じ物差しで測ってはいけない。

 カールは構える。

 こいつに勝つのは大前提、その上で体を温め濡羽と戦う前の糧とする。


「初めまして、カール・クラフトだ。良い戦いにしよう」


「火葬魔術、『劫火(ごうか)』」


 焼火は言葉一つ発さず、魔術を行使した。

 彼の周囲に無数の火の玉が出現し、カールに向かって飛ぶ。


「戦闘中の会話は嫌いか? 水晶魔法、『水晶盾』」


 宙に出現した水晶の盾が火の玉を防ぐ。

 カールは内心、呆きれ萎えていた。

 キングクラウンに出場するから面白い固有魔術を期待したんだが、一般的なただ火を生成して操る魔術か。

 これなら一瞬で片がつくな。

 その考えは、水晶に着弾しながらも今だに燃え続ける火を見て砕かれる。

 はっ、何でまだ燃えているんだ? 燃やしているとしても魔力を無駄に消費するだけで意味ないだろ。

 瞬間、水晶が消え失せ火の玉がカールの元に向かう。

 カールは即座に回避し、射線から外れ、火の玉は地面に着弾しやっと消えた。


「なるほど、魔力を燃やす炎か」


 あの炎は酸素ではなく魔力を消費して燃えている。だから、水晶で防いでも消えることはなく魔力の宿らない物にぶつからなくては消えない。

 僕の水晶を生成し、操作する水晶魔法の特攻だな。


「カールと言ったか、その余裕そうな表情はすぐに変えた方がいいぞ」


「この程度で魔法使いである俺が焦るとでも……『水晶槍』!」


 無数の水晶の槍が宙に形成され、焼火に向かって飛ぶ。


「『劫火』」


 魔力を焼く炎が水晶の槍を飲み込み、消失させる……はずだった。

 水晶の槍は炎を突破し、焼火の体を貫く。 


「何故、魔力は焼いたはずなのに……」


「確かに魔力は燃えているが、燃えて消えないだけの魔力を水晶に込めるだけで良い。まぁ、魔術師には無理で想像もつかない方法だな」


 焼火は倒れ、第二試合はカールの勝利で幕を下ろした。


***


 第一試合、第二試合と同じ時間で始まった第三試合には第二試合以上に観客が多かった。

 キューピーのファンが来ていることも勿論だが、それだけではなくキューピーの相手は七家の魔術師であることも起因するだろう。

 黒曜家とよく比べられることで有名なホワイト家。

 初代から魔術を魔法へと押し上げることを目標にし、多くある魔術師一族の中でも最も魔術研究に力を入れ、賢者の家系であるフェメノン・アージュ家が管理する魔法魔術研究機関『魔塔』に多くの研究者を輩出している。

 黒曜家が戦闘という分野で右に出るものがいないように研究という分野においてホワイト家に匹敵する魔術師一族は存在しない。

 ブラン・ホワイトはそんなホワイト家の中でも神童と呼ばれるほどの天才だったが、その座を彼を超える天才である弟に奪われた哀れな兄ということで黒曜濡羽と並んで同世代の中では有名な魔術師の一人で、観客の多くは哀れな魔術師の哀れな敗北を見ようと会場に来ていた。

 しかし、彼らは数十分後、衝撃を見ることになった。

 〜〜〜

 静寂が第三試合会場を包む。

 観客が見つめる先には一つの光景があった。

 地面に咲くように広がるくしゃくしゃになった金色の髪、麗しかったはずの顔は歪み原型を留めておらず、髪色が目立たなかったら地面に倒れているのがキューピー・ラバーだと誰も気付かなっただろう。

 そしてキューピーに背を向けるように、その魔術師は立っていた。

 白い雪のような純白の髪、白く冷徹な瞳を魔術師は向けながら一言吐き捨てた。


「これにて私の立てた貴方を倒す理論の説明は終了です。ご質問はありますか? 無いのでしたら、私はこれで」


 白い髪を風に靡かせながら去っていた。


「一回戦、第三試合の勝者はブラン・ホワイト!」


 実況の声のみが会場に響いた。

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