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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第39話:魔王の暗躍

 濡羽の試合が始まる前、ルナが魔法使いの待機室に戻ってくると二人の人物が近づき、共に何かを差し出す。


「ルナ様、どうかこの水晶のイヤリングを」


 青髪の男、カールが差し出したのは美しく光を反射する水晶で出来たイヤリングで、輝きから高価な宝石に匹敵する値段だと分かる。


「いやいや、私の愛の結晶を」


 もう一人の金髪の男、キューピーはハート型のピンクダイヤモンドが埋め込まれた指輪を差し出していた。石言葉は『完全無欠の愛』。


「どっちも要らないから」


「いえいえ、私たちは貴方の婚約者候補ですから愛は受け取ってもらいませんと」


 そう発言するキューピーの眼にはルナしか映っていなかった。


「そうです。そろそろ僕と彼どちらか選んでいただかないと」


 カールもまたその眼にはルナしか映っていなかった。

 キューピー・ラバーとカール・クラフトはルージュ家が決めたルナの婚約候補者だ。

 赤を冠するルージュ家はその血を高めることで才能を磨いてきたが故に、ルージュ家に生まれた者はいずれも才能重視の思いを無視した契約結婚によって結ばれてきた。

 ルナが成人を果たしたために勝手にルージュ家の長たちが婚約候補者を決めたのだ。


「そうです。濡羽などではなく、私と交友関係を深めては?」


 カールの発言にルナの怒りが沸点に達する。


「カール・クラフト」


「はい、何でしょうか?」


「次、濡羽を貶すような発言をしたら殺すわよ」


 殺気の込もった言葉にカールは笑顔で応える。


「すいません、紅茶を持ってきますね」


「私も違う献上品でも持ってきましょうか」


 カールとキューピーがルナの視界から外れた。

 待機室外の廊下に出て、離れた位置に二人は来ると、暗躍を始めた。


「やっぱり、あの黒は邪魔ですね」


「何故、ルナ様は無能のことなど気に病むのだ? 分からない」


「モテる君なら女心の一つや二つなど簡単に分かるんじゃないか?」


「いや、分からないさ。だから、女心ってのは良いのさ。そこに神秘と秘密がある、それだけで燃える性分でね」


「君らしい。それとあの黒がどうやってルナ様を誑かしたのか何となく想像はつく」


「何だと、教えてくれ」


 カールは分かりやすく頭を抱える。


「はぁ、少しは自分で考えたらどうですか? まぁ、長くなりそうなので答え言いますけど。あの黒の親友にはあの汚れた売女の一族が者が居るんですよ」


「なるほど、分からん」


 カールは少し呆れるが、同じ婚約候補者で敵対することなく接してきているので慣れており発言を続ける。


「売女の一族は淫魔の血を引き、その血を材料に盛った者を惚れさせる惚れ薬が作れるというあの黒もそれをルナ様に使ったんだろ」


「何だと、ルナ様にそんな汚れた物を使うなんて外道め」


「それじゃ、当初の予定通りその外道こと濡羽を試合の上で殺す」


「ああ、分かっている」


 その時、奥の廊下から一人の魔法使いが現れた。


「聞いちゃった、聞いちゃった。二人で婚約者に隠れて悪巧みなんて、浮気でもするつもり?」


 それはシェリーだった。


「浮気なんてしませんよ。僕たちが愛しているのはルナ様だけです」


「そうですとも、私が惚れているのはルナ様たた一人だけです」


 カールとキューピーは内心焦りながらそう答えた。


「最初から最後まで聞いてから隠さなくても良いのに……分かってるよ、黒曜濡羽を殺すつもりでしょ」


 二人はシェリーを警戒する。


「……そんな警戒しなくても大丈夫だよ。ルナには言わないから、代わりと言ってはうちの我儘聞いてくれない? 未来の義妹だと思ってさ」


「何をしろと?」


 その瞬間、シェリーの表情は魔王の称号に相応しい暗く心臓まで凍てつかせるような冷酷なものとなった。

 カールとキューピーは震え、その心臓を一瞬止めてしまいそうだった。

 そして、その言葉を言った。


「黒曜濡羽を殺さず無力化して」


「は?」


「え?」


 二人は気の抜けた返事をする。


「うちは最強の魔法使いである魔王だからね。勝負と強者に目がないの、それで黒曜濡羽はまだ強くなる。そして全盛期となった彼とうちは戦いたいの。彼我見さんも良いけど、魔王の直感だけど黒曜濡羽を叔父を超える」


 平然と七家の魔法使いも恐れる彼我見を対戦候補に入れていることに二人は恐怖しながら聞く。


「だから、こんな所で死んでほしくないの。だから、もし黒曜濡羽を殺すのならそれに見合う勝負を私としないとね。勿論、一対一でだよ」


 二人はシェリーの言葉と思考回路を全く理解出来なかったが、一つだけ理解した。この魔王の逆鱗に触れれば絶対に死ぬ、逆らえる存在じゃない。


「分かりました。黒曜濡羽は殺しません」


「私もです」


「じゃ、話は終わり。愛しの婚約者の元に向かいな」


 二人はルナの元、待機室へと戻った。

 一人、残ったシェリーは満面の笑顔を浮かべた。


「先輩〜〜」


 懐から濡羽の写った写真を取り出し、眺め始める。

 その表情は狂気を孕んでおり、到底常人のそれではなかった。


「濡羽先輩、一緒に遊びましょうね〜〜」


 そう笑いながら魔王は、その場を去った。

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